幕章〜新たなる出会い〜
先に言いますが本編はまだです。すみません。今回は半年後に出る新キャラ達の、トキヤ達と出会う前の話を一部取り上げました。
これでいきなり出てくるようなことがあっても、大丈夫かと思います(むしろ混乱するかもしれませんが、その時は勘弁してください)。
活動報告更新しました。
ユニーク人数が5000人突破!ありがとうございます。
これから出る人達は、半年間の間にトキヤと出会い、例として、仲間などの深い関係になる人たちだ。だが、必ずしも友好的な関係になるとは限らないとだけは言っておこう。
***
ここはダンジョンの一つ、バルトロールダンジョン。その最下層に位置する場所だ。
大剣を両手に構える大柄の男、杖とローブを羽織った魔法使いの、胸が結構控えめの髪型がボブのゆるふわ女の子、そしてめちゃくちゃイケメンのオレンジ髪の好青年で、短剣を構えた3人がいた。
そして、その反対には、数十匹の魔物がいる。半年前のトキヤ達のパーティなら、苦戦はするが倒せるレベルだ。そして、このパーティからしたら、少し物足りないレベルになる。
「マージュ!遠くの敵、魔法で倒してくれ!」
大剣の男は近くの敵に対してタゲを取っている。
「了解!『我が炎よ。圧縮されし球となりて、目の前の敵を燃やし尽くせ!《炎球》!』」
マージュと呼ばれた魔法使いの女の子の中級魔法により、遠距離の魔物の大半が消滅した。
「アレク、前の敵お願い。一応だけど、無属性魔法の《速度上昇》を掛けとくわ」
マージュは大剣を構え、タゲを取っていたアレクと呼ばれた青年に向かってそう言い、《速度上昇》の魔法を掛ける為の詠唱を始めた。
その間にもアレクは近くの魔物に向かって、大剣を右肩にかけ、振りかぶりながら近づき魔物を半分に真っ二つにする。
とても大きい大剣を振りかぶっているのにも関わらず、大剣に体が振り回されることもない体幹と力を持っていることからも、結構な腕前を持つことが分かる。
しかし一撃は凄くとも、多対戦にはあまり慣れていないのか、魔物には後ろに回り込まれ、攻撃を受ける直前だ。
「アレク!後ろよ!」
《速度上昇》を掛け終わったマージュが、アレクに危険を伝える。それを聞き、アレクは大剣を地面に突き立て、足を掛けてジャンプする。
その次の瞬間、突き立てられた大剣に向かって魔物がぶつかる。刃の付いていない刀身部分だったので、傷を負わせることは無かったが、それでも魔物は頭をぶつけて怯む。
その間に、オレンジ髪の好青年が短い投げナイフを投げる。その投げナイフは魔物の脳天を貫く。
「気をつけろバカが」
「クラディス。助けてもらって悪いけど、言い方は考えてほしいんだけどなぁ」
クラディスと呼ばれたオレンジ髪のイケメンの顔をした好青年だが、性格は冷たい。だが、仲間を助けるあたりがツンデレの素質はある。
「うるさいぞ。俺の可愛い可愛い妹のエリーが帰りを待ってるんだ。本当ならすぐにでも帰るところなんだがぞ?」
クラディスは、ロケットに入ったエリーの肖像画を抱きしめて言う。分かると思うが、クラディスはシスコンだ。
「エリーちゃん、『一年間ぐらい帰ってこなくて良い』って言われてなかったっけ?」
アレクがそう呟く。そして、エリーは兄であるクラディスの事を少し嫌っている。報われない愛情だ。
「あぁエリー!もうちょっとで会えるから、待っててねー!」
クラディスにアレクの呟きは耳に入らなかったみたいだ。そして5分後に、この戦闘はアレク達の勝利で終わる。
シュッ!ザシュッ!
「……ふん」
最後の魔物はクラディスの投げナイフにより死んだ。
「ナイス!クラディス」
「はっ、当然だ」
パン!
アレクのハイタッチに、クラディスも合わせて手を負わせる。
「ふわぁ、疲れた。アレクおぶって〜」
マージュがアレクにそう頼む。
「俺も疲れたし、第一お前重いからむーー」
「よーし、そんなに黒焦げになりたいか。なら今すぐ黒焦げにしてやろう」
アレクの無神経な発言に、マージュは《炎球》を使おうとして、アレクに止められる。
「それよりも、これで俺たちもCランクだな」
アレクが拳を握りしめて、そう言いながら喜ぶ。
「以外と早かったね。私たち、一応ギルドからじゃ期待の新人パーティって呼ばれているみたいだし。本当にクラディスが加わってくれて助かったよ」
マージュが笑顔で笑いながらそう言う。このパーティは、トキヤが異世界召喚され、王都に着く一周間前に冒険者登録をしたばかりだ。
最初はアレクとマージュの2人で、トキヤ同様に騎士や衛兵が管理をしている通称『初心者用の森』で経験を積んでいたのだが、このままではダメだと、アレクがクラディスを連れてきたのだ。
戦闘ではアレクが攻撃役兼タンク役。マージュが後衛の魔法使いで攻撃兼支援役。クラディスが中衛を担当している。
だが、基本はクラディスが先頭を歩いている。クラディスは武器から分かるように、直接的な戦略にはあまりならない。だがその代わりに、罠やトラップなどの発見などの斥候、盗賊、暗殺者などがやるような仕事を主にやっている。
そして、そのクラディスは一応だがとある貴族の長男だ。正式な名前はクラディス・ガルドボルグ。最初はアレクも知らなかったらしいが、クラディスが自分から打ち明け、2人は別に気にする事なくこの関係は最初から変わる事なく続いている。
「当たり前だ。……最近は、とある亜人を連れたEランクのパーティが少し注目を集めているらしいが」
クラディスが話題に出したのはトキヤ達のことだ。
「それ本当かよ?この国で亜人を仲間にするって、結構な勇気とかがいるだろ?」
「私も聞いたわ。なんでも男1、女3のハーレムパーティだから、『爆発しろ』って念じておいたから覚えてるの」
マージュがそんな事を言った。その発言に、アレクとクラディスは少し引いている。
「でも、Eランクって事は実力はまだまだだろ?」
「いや、水属性の上級魔法を使える魔法使いに、身体能力がすごいタイプの違う亜人2人。あとはまとめ役兼パーティリーダーの男のパーティだ。最後以外は結構やれると思う」
アレクの疑問に、クラディスはトキヤだけ過小評価をして言う。いや周りから見たらそれが正当な評価だ。
「そ、そうか……まぁ、とりあえずはこのクエストクリアの報告が先だ。さぁ、最後の戦闘だ。気合い入れていくぞ!」
「あぁ」
「了解!」
そして、アレク達は多少の戦闘をしながらも、バルトロールダンジョンを出た。今はこんな風に会話で出てくる程度の仲だが、半年後には友達兼仲間兼ライバルみたいになるとは、トキヤ達もアレク達も思いもしないだろう。
***
ここはとある貴族の屋敷の一部屋だ。そこにはオレンジ色の髪をした9歳ぐらいの女の子、エリーが一人で居た。
「はぁ、お兄ちゃんはすぐ帰ってきそうだし……はぁ……また会いたいな。あの亜人を連れたお兄さんに」
そう呟き、再び目の前の宿題みたいなのに手をつけ始めた。だが、すぐに集中力は切れている。
エリーの頭の中には宿題が嫌で逃げ出したが、迷子になった時に、優しく助けてくれた亜人を連れたお兄さんのことしか頭にはなかった。
あの時は少し変なプライドが働き、少し反論してしまった事を、今では毎晩後悔している。
だが、エリーの会いたいという願いは半年中には訪れるとだけは言っておこう。
***
「ふえぇ〜〜〜!また仕事が増えたです〜!」
そんな幼さを残したような声が室外にまで響き渡る。そこは魔法騎士団第三部隊隊長の部屋だ。
そこにいたのはピンク色の肩ぐらいまで伸びた髪をした、童顔の美少女だ。体のラインは普通の女性の平均ぐらいで、身長が少しだけ小さい。
彼女の名前はグラシア・ファイツ。唯一女性でありながら、魔法騎士団第三部隊の隊長クラスを任されている存在だ。
「最近は忙しすぎです〜。どこかこんな私でも優しくして、守ってくれるような、そんな男性は居ないんですかね〜?」
グラシアはそんな事を呟いた。グラシアの実年齢は20歳を少しだけ超えている。本人は永遠の18歳だと言い張ってはいるが。
彼女は職業柄のせいか、合コンや婚活パーティなどにも参加はするのだが、職業を知られた途端にみんなが距離を置くのだ。
しかも、見た目はいいのだから尚更だ。『あんな顔をしていてなんて恐ろしい』みたいな感じでみんなが去っていく。
『あんな顔して一体どんな事をしてくれるんだ?』みたいな少しマニアックな人がたまに寄ってくるが、それは全てなどと近づかないように黙らせる。その行動が余計にみんなを引かせているのだが、彼女は気づいてはいない。
そして、彼女の呟いた願いも半年以内に叶う。だが、行ってもそこまでということも言っておこう。
***
グルァァァァァァ!!!
とても大きな魔物の鳴き声が聞こえる。とても大きく白い魔物だ。その白い毛に、所々赤い液体が付いている。それは血だった。バロン王国のとある村を襲っているのだ。そこの人々、家畜などが蹂躙されていく。
それから2分後、そこに立っていたのは白い魔物だけだ。『白い悪魔』の異名をもつ、白殺虎だ。そして、それを遠くから見届けている2人の人影がある。
「ふむ、順調じゃの。我らの力もうまく働いておるわい」
小さい方の女の子がそう言う。人影では、お尻あたりにモコっとした形のしっぽが生えている。
「我らじゃなくて、ボスの力でしょ?」
もう1人の大きい方の女の子が訂正する。こちらは長い鼻がある。
「確かに先生のお陰じゃの」
「だからボスだって」
今度は『先生』と呼んだ小さい方の女の子を、大きい方の女の子が再度訂正を促す。
「し、仕方ないじゃろう。先生は先生じゃ!」
小さい方の女の子はそう反論する。
「確かにそうだけど、今はもう立場が違うでしょ?いい加減口調だけじゃなくて、頭も体も大人になればいいのに」
「体は……じゃなくて、体も頭もこれで大人じゃ!」
小さい方の女の子は自分の体を指差して、声を若干張って言う。だが、何も知らない人が見たら、間違いなく子供に見えるだろう。
「そんなことよりもーー」
「そんなこと⁉︎」
「……そんなことよりも、ちゃんとボスの力は効いてるんだから、これでもういいでしょう?」
大きい方の女の子は小さい方の女の子の意見を無視してそう言う。
「……そうじゃの。帰るとするか」
小さい方の女の子は、若干不満そうだがそう言う。その次の瞬間、2人の影は一瞬のうちに消えた。
面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら剣の勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




