ユウくん
昨日、俺は部屋に帰って各自の部屋で寝た。俺とチワ、アランとヘプトさん、ハズクとルナでだ。チワとハズクには心配されたが、後は2人の問題だと言うと、大人しくなった。
後日、ルナとアクシオスさんの2人は仲直りをしていた。特にアクシオスさんの方が重症だった。今まで冷たく当たっていた反動で、めちゃくちゃ甘々になってしまっていた。流石のルナも、鬱陶しそうにしていたが、止める気にはなれなかった。
ルナも少しにこにこしていたからだ。俺が指摘をしても、絶対に認めず、アクシオスさんの前では絶対に見せないけどな。あんなに怯えていたのに、一体どんな心境変化が起きたのだろう?まぁ、あぁして2人とも笑っているんだし良いか。
そうそう、それを見て、ヘプトさんとアランはショックみたいなことを受けていた。特にアランだ。『自分の目標があんなんだったのか』と声に出して落ち込んでいた。
アクシオスさんは朝ご飯を食べると、すぐに宿から出て行った。仮にも一組織のトップだって事を忘れていた。仕事が押しているにも関わらず、ルナを探しに来たらしい。
「では君……いや、トキヤ君。ルナの事よろしく頼むよ!」
と、めちゃくちゃ念押しをされた。ルナが恥ずかしさで止めるまでずっと言われ続けていた。そら、恥ずかしいわ。そして、アクシオスさんは去っていった。ハクニーに乗って。
***
「ところでトキヤさん。チワさんが毛布に包んでいるものはなんですか?」
ヘプトさんがチワの持っている、あの卵について尋ねてきた。
「まぁ、戦利品ですね」
「はぁ……」
ヘプトさんはそう言いながらも、納得はしていなかった。そうそう、ハズクが《精神誘導》を使わない理由らしいが、同じ相手にそう短時間に何度もは掛かりにくいらしい。むしろ、掛けられたことが発覚してまずい状況になるそうだ。
「ではトキヤさん。そろそろ出るので荷造りは出来ていますか?」
「いえ、すいませんがまだですね。昨日は直ぐに、ぐっすり寝てしまっていて。すぐにするので馬車で待っていて下さい」
ヘプトさんが帰りたい思いからか、そう聞いてきた。俺は準備不足でアランとヘプトさんを待たせることに申し訳ない気持ちになりながら、急いで4人で荷造りをした。
一番大きな荷物となる装備品だが、軽いのでルナでもすっと運べていた。防御力はあるのか疑うが、なんでもルナが言うには、おそらくだが魔道具だそうだ。魔防具の方が正しいか?
そして、6人で王都へと帰った。王都に着いたのは朝早くだった。馬車は王都に入ってすぐの所で降ろしてもらった。正確には騎士団の近くだな。
「ではトキヤさん。また縁があれば」
「トキヤ、お前とはまたどこかで会うだろう、さらばだ。……そっちの亜じ……ハズクさんも」
そう言って、ヘプトさんとアランと別れた。本当に2人には災難だっただろうな。本当、ありがとう。そう心から思った。
アランは俺との約束?を守るように、ハズクにそう言った。なぜ、チワではなくハズクだったのだろう……。
「じゃあトキヤ、まずは宿にこれらの装備品を置く?それとも私の家に置く?もしそうなら、ニーナちゃんと会えるけど?ついでに卵も調べてみようと思うんだけど」
ルナがそう聞いてくる。安全性から見ても、ルナの家に置く方が良いだろうな。ニーナちゃんにも会えるし。後は、ハクちゃんにも会いたいな。でも
「悪いけど、まずはギルドにクエスト報告だな。武器屋のおっちゃんには世話になったし。ついでにハヤト……ギルマスと話したいこともあるんだ。その後で良いか?」
「ではトキヤ様。その後、ルナさんの家に行くで宜しいですか?後、ハクちゃんにも会いたいのですが……」
俺の話を聞き、チワがそう尋ねてきた。
「じゃあ、一番近いハクちゃんから行くか?でも先に荷物を置いてからでも良いんじゃないか?バルトロールダンジョンから帰ってきたばっかりで、疲れているだろうし」
「いえ、ハクちゃんは私たちの仲間ですが、今回の旅には一緒ではありませんでしたし……会いたいんです。ダメですか?」
俺はみんなのことを考えてそう言ったのだが、チワはこの場に居ないハクちゃんのことを考えてそう判断した。
「分かった。じゃあハクちゃんからだな」
「了解です、ご主人様。……そう言えば、ハズクはハクちゃん?とは会ったことがないのですが」
そう言えばそうだったな。……ハズクと会ってまだ……7日、1週間か。でも、ルナも同じだけど会ってるよな?……ハズクのタイミングが悪かったな。
「まぁ……ハクニーなんだけど、めちゃくちゃ賢いんだよ。会ってみればわかる。後、怖いんだよ。なんか良くわかんないんだけど」
「はぁ?……そうですか」
俺の言うことに、ハズクは理解をしていなかった。まぁ、出来る方がおかしいと思うしな。見たらわかるだろうけど。
そして、ハクちゃんのいる馬小屋に行く。滞納していた料金を支払い、次の日以降の分も前払いしておいた。
そうしていたうちに、3人は先にハクちゃんに会っていたらしい。特にハズクはめちゃくちゃ懐かれたらしい。順番で言えばハズク、チワ、ルナの順番だ。ルナが悔しがっていた。
俺も荷物を3人に任せて会いに行った。相変わらず綺麗な半透明の白色の毛並みで、遠くからでもすぐ分かった。
まぁ、その後、色々あったが俺は無事だった。俺が来たことは、3人に先に会っていたことから分かっていたのだろう。当たりは強くなかったので、良かった。
その後、ハクちゃんの元を離れ、ルナの家である、魔道具屋に向かった。魔道具屋にはしばらく歩いて着いた。
「なんだか2日ぶりなのに、すご〜く久し振りな気がするわ」
ルナがそう呟いた。ずっと魔道具屋に居たのだから、そんな気持ちになるのも理解できる。
「いい、いらっしゃいま……トキヤお兄ちゃん!おかえり〜!」
「がはっ!」
魔道具屋の扉を開けた瞬間、ニーナちゃんが俺の腹に飛び込んで来た。俺はその衝撃で尻餅をついてしまった。最近の中で一番きつい攻撃だったかもしれない。だって魔法で治すほどではないし、ニーナちゃんの前でそんなこと出来るわけないから、すこしズキズキ痛む。
「ひ、久し振りかな?ニーナちゃん。ただいま」
「うんっ!おかえり、トキヤお兄ちゃん!」
ニーナちゃんは、俺の上に少し馬乗りになりながら、再度俺にそう言った。とりあえず、奥の部屋に上がり、装備などの荷物を置く。
エドガーさんは、快く荷物の置き場所について了解してくれた。そうそう、ニーナちゃんは店番をしていた。ほとんど新人だったため、『いい、いらっしゃいませ』と少しテンパっていた。初めてのおつかいも行ったらしい。エドガーさんは陰でこっそり見守っていたらしいが、なんとか出来たみたいだ。良かった良かった。
「お姉ちゃん達もただいま。ダンジョンってどうだったの?強い魔物とかいっぱい居たの?」
ニーナちゃんはチワやルナやハズクに色々質問を繰り返している。やはり興味があるのだろう。3人は、ニーナちゃんにダンジョンの事を話していた。だが、穴に落ちた以降の事は話していなかった。
「それじゃあ次はギルドだな。悪いけどニーナちゃん、お兄ちゃん達はまだ最後の仕事が残っているから、もう少し待っててほしいんだ」
「やっ!トキヤお兄ちゃんについてく!」
「……まぁいいか。ニーナちゃん、向こうには怖い人がいっぱいいるから、絶対に知らない人にはついて行かないように。お姉ちゃん達の言うことをちゃんと聞くようにね」
「うんっ!」
そう言って、俺たちはギルドへと向かった。着いた瞬間ギルマス、ハヤトの秘書にギルマスの部屋へと連れていかれた。まるで来るのが分かっていたみたいだ。
俺以外の4人は案の定、秘書に連れて行かれた。部屋に入ると、ハヤトが机に両肘をつき、手を口元の前で組んで待っていた。なんか貫禄がでていた。
「えっと、久し振りだなハヤト。いきなりで悪いんだけど、ハヤトはバルトロールダンジョンに行った事、ある?」
俺はハヤトにそう尋ねた。もし行ったことがあるなら知っているはずだ。あの文字の事も、ピクシスの事も。黙っていたならそれは、裏切り行為と認定しよう。
「ごめん。僕は行った事ないんだ。所でなんでそんなこと聞くの?もしかして僕が教えた情報以上に危険なことでもあった?」
ハヤトはそう言って、俺に尋ねてきた。……知らなかったのか?分からないぞ。とりあえずあったことは話すべきか?
「あぁ、バルトロールダンジョンの中層で、日本語を見つけたんだ。そこに落ちたらダンジョンの妖精とかと出会った。名前はピクシスって言っていた。勇者のパートナーの配下?眷属だっけ?なんかそんな感じのやつだったよ」
「っ!……それは本当かい?」
ハヤトはめちゃくちゃ驚いていた。俺にはあれが演技には見えなかった。やはりハヤトは知らなかったのだろうか。
「あぁ、所で勇者ってのも日本人なんだよな?」
俺は今まで話でしか聞いたことのなかった、勇者について尋ねた。
「……えぇ、恐らくですが。勇者は昔、魔王が出現した際に召喚されたらしいのです。それ専用の魔法があったのですが、今は失われています。そして勇者は世界に1人しか存在はしません。好き勝手にポンポン増やせる訳ではないんです。そうそう、トキヤさんもお気づきでしょうが、この世界にある電気なども、勇者の知識と努力の結晶なのです」
……そうだったのか。……あ、そう言えば電気とか似合わないものがあると思ったら、そんな理由があったのか。て言うか向こうの世界じゃ当たり前すぎて気づかなかったぞ。
「やっぱりそれも魔道具って事だよな?」
「えぇ、勇者、賢者、導師によって作られました。とてつもない努力でしたよ」
……なんか違和感があるな。あ、ハヤトは勇者様ではなく、勇者と呼んでいるからか。俺もだけど。同じ日本人って事が理由かな。
「とりあえずハヤトも行った方が……ハヤトなら大丈夫かな?」
俺はハズクが一歩間違えれば亡くなっていたことに気づく。ハヤトもチート能力だが、万が一ということも。
「あいにく最近忙しくてね。とてもそんな余裕がないんだ」
ハヤトは白殺虎の出現、それによるものなのかは不明だが、魔物の出現率が少しずつ上がっていること、それによる、死傷者が増加している事を話してくれた。
「それなら行くときは俺に声をかけてくれ。実体験の情報を全て教える」
「そうなんだ。それなら僕もありがたいかな。それよりも、クエスト報告を先に済ませるべきだったね。拘束して悪かったよ」
「気にすんな。俺も話したかったからな。じゃあな」
俺は席を立ち、手を振る。ハヤトも同じようにする。俺はギルマスの部屋を後にした。そしてクエスト完了の報告をした。結構驚かれたな。
その後、4人を迎えにいった。案内された部屋には4人とハヤトの秘書がいた。他の3人は固まっていたが、ニーナちゃんだけは秘書とおしゃべりや遊びをしていた。子供だからかな?
「あっ!トキヤお兄ちゃん!」
ニーナちゃんは俺を見つけると、走ってこっちにきた。だが慌てていたのか足を引っ掛けて転びそうになった。
俺を含めた4人は助けようとしたが、間に合わない。その時、ハヤトの秘書がめちゃくちゃ早い速度でニーナちゃんを助けた。綺麗な金髪の髪がなびいた。
「お、お姉ちゃん?ありがとう」
「いえ」
秘書はそう言ってすぐにその場を離れる。それにしても、さっきの速度はチワ、ハズク、それに魔物の魔狼を上回っていたような……さすがはギルマスの秘書って所か?ハヤトもあれ以上に強いのかもな。良いな。
その後、ギルドを後にした。
***
ここはギルマスの部屋だ。そこにはハヤトが1人座って頭を抱え込んで、1人で喋っていた。だが、会話になっている。
側から見たらやばいやつだ。そして、内容も人によってはやばい。例えばトキヤとかトキヤとかトキヤとか。
『ーーだよ』
「そうか。なら良い。お互い後少しなんだ。失敗はしないさ」
『気をつけてよ。それじゃあそろそろ切るよ、ユウくん。じゃなくて……ハヤトくん』
「はぁ、ピクシス。そっちこそ、失敗はするなよ」
『ツーツー』
「あいつ……後少しなんだ。絶対に失敗はしないさ」
ハヤトはそう呟いた。
面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら剣の勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




