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目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜  作者: どこでもいる小市民
第四章〜バルトロールダンジョン編〜
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試練の報酬?謎の卵

バルトロールダンジョンの入り口に俺たちは立っていた。辺りはすっかり暗くなっている。最後にピクシスが『ユウ君によろしく』って言っていたけど、ユウ君て誰だ?


「ねぇ、トキヤ。それで騎士団の2人にはどう説明するの?」


ルナは俺に聞いてくる。ピクシスは宝箱から発見したと言えば良いと言っていたが、信用していないらしい。


「まず第一に武器とか装備については隠すべきかな?いや、それだと使う機会が無くなるし。やっぱりピクシスの言う事を聞いて、宝箱からって言うのが、今の最善なんじゃないかな?」


「ではトキヤ様、遅くなった理由はどうします?」


今度はチワが尋ねてくる。今が何時なのかは分からないが、2人は心配しているはず、だよね?


「素材の量としてはむしろ早くても良さそうだからな。言い訳にしても……みんなならどうする?」


「ご主人様の料理が美味し過ぎて、ついお腹いっぱいになって動けなかった」


「却下!」


ハズクはそんな冗談を言う。第一そんなことしてみろ。魔物がやってくるだろうが。今回はピクシスが意図的に来させなかったが、他の人は違う。絶対に怪しまれる。


「じゃあトキヤの魔法の練習をしていたとかは?」


「その成果を見せられそうだ」


「じゃあ少しは自分で考えてよ!」


「……はい」


ルナに怒られた。確かに批判ばかりの口だけになっていた。これは俺が悪い。考えていると、バルトロールダンジョンから誰か二人組が出て来た。


「一体どこに行ったのでしょう?」


「絶対に生きているはずだ。あいつが死ぬ訳がない」


そう言いながら出て来たのはヘプトさんとアランだ。


「「あ……あぁぁぁ!!!」」


2人はこちらを見つけるなり、大声をあげて驚き、こちらに近づいてくる。


「トキヤ!どこに行っていた!遅いから探してみれば、お前がなんで入り口にいるんだ!」


「アラン、落ち着きなさい。トキヤさん、私たちはあなたの帰りが遅いので探しに来たのですが、一体どこにいたのでしょうか?」


アランが俺の胸倉を掴み、ぶんぶん揺らすのをヘプトさんが止め、改めて聞いてくる。まずい!入り口は1つ、探しに来たなら普通は鉢合わせるはず!こんな事想定外だ!どうする!マジでどうする!


「申し訳ございませんが、ハズクたちのパーティにも守秘義務がございますので」


俺が悩んでいるうちに、ハズクがそう言った。それはハズクの気遣いだ。もし、2人と1番の顔見知りである俺が言えば、関係の悪化は激しいが、元々印象の良くなかった亜人の、昼間ダラダラしているように見えるハズクから言う事で、向こうのムカつき度をハズク1人に意図的に仕向けたのだ。


「……そうですか。それもそうですね」

「……そうか」


2人は口だけ納得をした。俺から見ても、イラっときている。それもそうだ。大丈夫かと心配して来たのに、結果的に無駄足となり、その理由すら話してもらえない。だが、パーティの守秘義務と言われれば、無理やりの追求も出来ない。向こうからしたら踏んだり蹴ったりだ。


「所で、後ろの袋はなんですか?」


ヘプトさんは俺たちのピクシスに作ってもらった装備品らの事を聞いてくる。正確には袋ではなく、風呂敷だ。ピクシスはなぜか知っていたが、勇者のパートナーの配下だからだろう。


「あぁ、これらは……ここで出すわけにはいかないです。帰ってから宿で話したいので、取り敢えず帰りましょう」


2人は何か訳ありだと察してくれた。もしかしたら、ハズクのいった守秘義務の部分を話してくれると思っているのかもしれない。そして宿に戻り泊まる。いつも通り、俺たち6人分のお湯を作って体を拭く。ルナだけは少し嫌がっていた。普段は風呂だしな。これからは我慢してもらおう。


部屋割りは俺とチワ。ルナとハズク。ヘプトさんとアランだ。俺はハズクと一緒にいると、貞操の危険を感じたので2人用の部屋を2つ借りた。


ご飯については俺たち4人はピクシスの所で食べていたが、ヘプトさんとアランは俺たちを探していて食べていないらしいので、俺が作った。探してくれたお礼を兼ねている。


そして、荷物は俺の部屋に置いた。料理を作っている間、3人が必ず交互に見張っていたので安全だ。2人が料理を食べ終わると、総勢6人が俺の借りた部屋に集まる。装備品などもあるので、若干狭いな。


「トキヤさん、早速ですがあの袋の中身について話してはくれませんか?」


「構いませんが、この事は他言無用として下さい。この6人だけの秘密です。もしバレた場合、俺は2人のどちらかを真っ先に疑いますので」


俺がそう言うと、2人は頷く。チワとルナとハズクはなんだか嬉しそうだ。まぁ、あんな装備を今から見るんだからな。ピクシスの時は作られたのを包んだだけで、何も試していない。


「まず、あの袋の中身ですが……宝箱から出て来た装備ですね」


「そんな馬鹿な!バルトロールダンジョンは難易度の簡単さから有名なダンジョンですよ!当然最下層の隅々まで、我々国専属の魔法騎士団が総掛かりで調べ上げられています。しかも!このダンジョンが出現したのは何百年も前!その間、トキヤさんたちが行ける範囲の宝箱が見逃されていたと!トキヤさんはそう言うのですか!」


うおっ!ヘプトさんの勢いがすごい。ある意味自分たちの仕事ができていなかったと言われたようなもんだしな。おいピクシス!全然ダメじゃねーか!どうすんだこれ?


「そこは省略してーー」

「しないで下さい!」


俺が誤魔化そうとするが、ヘプトさんは止まらない。


「ヘプトさん、ご主人様のご迷惑です。それにハズクには守秘義務があります。まさか、国の騎士が無理やり情報を聞き出すなんてことは、ありませんよね?」


ハズクのセリフにヘプトさんも収まる。ハズクはまた自分だけに限定をした。これも、自分が一度裏切ったことに対する反省なのだろうか?だとしたら今はありがたいが、俺の方が罪悪感でいっぱいになってしまう。ハズクは既にルナを命がけで守っているのだから。


「トキヤさん、少し拝見させていただきます」


ヘプトさんはそう言って、右眼を隠す。なんだか厨二病っぽいな。


『周囲に漂いし魔力の源、魔素(マナ)よ。我が右眼の力を解放し、その根源を示せ!《魔素解析(マナエナライズ)》』


おぉ!カンラン村でもこんなことやっていたのか!ちょっと見られたら恥ずかしいやつだが……他の魔法の詠唱とかも、元の世界の人から見たら一緒か。


ヘプトさんは《魔素解析》を使って装備品らの袋を見る。何が分かるんだ?


「……馬鹿な……これは、国宝級の装備品だ。歴代の魔法騎士団団長ですら着ることが許されない。恐らく(いにしえ)の勇者様、賢者様の装備と同等……トキヤさん、あなたは一体……知らなかったみたいですね」


ヘプトさんは、俺たちの驚きの顔を見て納得する。いや、勇者クラスの装備品ておかしいでしょ!さすが獣魔皇の素材で作った武器。でも、確かに協力かもしれないけど、俺には到底扱えないな。村人に魔剣を渡すようなもんだ。もしかして、『狂化』を使うことが前提か?


「トキヤさん、話してもらいますよ。この装備の入手方法を。この事は国家レベルです。絶対に他の人に言ってはいけません。もしかしたら、この世の常識を覆す可能性もあるのです。何が何でも話して頂かねばーー」


「無理です。守秘義務です」


「……そうですか。それなら仕方がありませんね」


あれ?なんだか急にあっさり引き下がった。……ハズクのやつ、《精神誘導》を使いやがったな。無詠唱でも、元組織のメンバーだからな。ヘプトさん、《魔素解析》が発動しても分からなかった?つまり、無詠唱には効果が発揮されない?それとも、気づけなかっただけか?


「とりあえず、この装備のせいで遅くなりました。心配をかけて申し訳ありません。ですが、ハズクも悪気があったわけではないので、許してやってください」


「まぁ、こんなもの見せられちゃ……隠すのも分かりますが」


「まぁ、別に話してくれたから良いんじゃないか?」


ヘプトさんとアランはそう納得してくれた。


「では、私たちはこれで。絶対に他の人にバラしてはいけませんよ」


「はい」


こうして2人は帰っていった。正直すげー助かったよ。


「ハズク、お前《精神誘導》を使ったな?」


「はい。これが一番手っ取り早いかと」


確かにそうだが……。


「え!そうなの!でも、詠唱は⁉︎」


ルナが魔法に絶対に必要な要素の部分を指摘してくる。そこが俺も気になっていたんだ。


「やり方は分かりません。ですが、なぜか出来ます。何か……されたのでしょうか?」


ハズクは自分が改造人間?みたいな物なのかと聞いてくる。


「分からない。でも、もしもの時以外で絶対に《精神誘導》は使わないでくれ。本来あるプロセスを無視するなんて、何かしらのデメリットがあるはずだ」


過程を飛ばすには、何か犠牲を払わなければいけない。寿命?記憶?肉体の疲労?脳の退化?魔法の技術?そんな事が考えられる。


「分かりました。ですが、もしもの時には使います」


「……分かった。……どうしたルナ?」


ルナが落ち込んでいる。


「だって〜、トキヤが前に聞いてきた事があったわ。魔法の無詠唱の事。あの時はありえないって言ったけど、まさか本当にあるなんて。でも、せっかくいるのに、その方法がわからないんじゃ……」


ルナとしてはそういう事が知りたいのか。


「なら、組織と会って情報を集めれば良い。運のいいことに、向こうから接近してくるんだ。返り討ちにしてやれば良い」


そう言うと、ルナは元気になった。


「……そうね。そうよね。トキヤも偶には良いこと言うじゃない!」


偶にって……。いつもは良いこと言ってないのか?


「トキヤ様、今の間に装備を確認するのはどうでしょう」


「そうだな。何があるのか把握しておくだけでも良いし」


チワの言葉を聞き、俺は風呂敷の結び目をほどく。中からは、俺でも分かるぐらいの一級品の装備品がザックザクだ。


「うわっ、これが魔黒龍の鱗で作った鎧……すごく軽い。この鱗が空を飛ぶ、攻撃から守る2つの役割を果たしているのね」


「こちらの剣は……切れ味抜群ですね。大きさとしては両手剣ですが、私でも片手で持てます。2つの良いところを併せ持つ素晴らしい剣です」


「トキヤ様、この防具なら、盾と魔法を両立できるのではないですか?」


チワがそう言って持ってきたのは、手の肘あたりまである手甲(ガントレット)?だった。確かにこれなら盾の防御と手から出す魔法を出来る。


「そうだな。でも、この装備を今の俺が付けても、宝の持ち腐れだし……武器屋のおっちゃんのところで同じようなものを買って、慣らしてからの方が良いと思う」


「そう、ですか……」


チワは耳と尻尾が下がり、しょんぼりと落ち込む。


「チワが見つけてくれなきゃ、そんな事思いつかなかったし、嬉しいよ。ありがとう。それはまた今度、いつか必ず付けるから」


「はいっ!」


さて、見た所だが、俺たちに合った装備は無いな。やはり俺たちの方が、装備に対して身の丈に合っていない。


ん?なんだ?風呂敷の中からまた小さい風呂敷がある。マトリョーシカみたいだな。紐をほどくと、木箱だった。もう一度言おう。マトリョーシカか?見た所、中には大切で壊れやすいものなのだろう。そう思い木箱を開ける。


「ん?これは……」


そこに入っていたのは、1つの卵だった。

面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。

あと、私のもう1つの連載作品の

『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』

も、是非読んで見てください。

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