魔物襲来の理由?失われた魔法
初の短編を書きました。タイトルは
『昏睡した幼馴染と過ごす、最初で最後のデート』
です。是非お読みになってください。
活動報告を更新しましたので、そちらもどうぞ。
「酷いな……」
ガルーダさんがそう呟いた。魔猪のクエスト受けた時の俺と同じ感想だ。だが、実際は前以上に酷い。
民家の大半は原形をとどめておらず、無傷の民家は一軒もない。
「とりあえず、調査をしましょう」
ヘプトさんがそう言い、ハクニーから降りる。ガルーダさんとアランもそれに続いて降りたので、俺が先に降り、その後にニーナちゃんを降ろす。
「それで……調査って何をするんですか?」
俺がそう尋ねる。ニーナちゃんを優先したいが、現場を知らず知らずに荒らしてしまう可能性があるため、先に調査内容を聞いておいたほうが、動きやすいと思ったためだ。
「基本的には……トキヤさんはニーナさんを優先してあげてください。あぁ、調査についてはご安心を。多少の現場を動かしたりする権利はニーナさんにあると思いますので」
ヘプトさんは俺の考えを見抜いたのかそう言ってくれた。
「ありがとうございます。行こう、ニーナちゃん」
「……うん」
俺がそう言うと、ニーナちゃんは俺の手を取り、しっかりと握りしめてそう言った。
プルプル!
ニーナちゃんの手が震えている。その震えが俺の手に、ニーナちゃんの手から伝わってくる。俺はニーナちゃんの小さい手を、しっかりと握り返した。
そして、ニーナちゃんとガストさんが、住んでいた民家跡に着く。民家は半壊している。俺が止まっていた部屋はもちろん、ガストさんとニーナちゃんの部屋もだ。
ニーナちゃんはただ、無言でその光景を見ていた。そして、家の周りを一周し、玄関前に立ち
「……ありがとうね……」
と言った。そして、俺の方を向き
「トキヤお兄ちゃん、おじいちゃんはどこ?」
と、聞いてきた。
「……向こうの土の中だよ。一緒に行こう」
そう返して、村の中心に行く。そこには俺が置いたでかい石と、少しだけ枯れた一本のグラシアの花が置いてある。俺は前、この場所の下に全ての遺体を埋めた。
「はい、ニーナちゃん」
「……ありがとう、トキヤお兄ちゃん」
俺はバックからグラシアの花を出して、ニーナちゃんに手渡す。あらかじめ買って置いたやつだ。ニーナちゃんはそうお礼を言い、グラシアの花を受け取る。
そして、グラシアの花を添えて、変わりに前に置いてある花を取る。そして、ニーナちゃんは手を合わせて祈る。俺も続けてそうする。
ニーナちゃんはこんな時でも泣かない。わずか8歳の女の子がだ。両親が亡くなった時にも、いっぱい泣いたことと、宿でも隠れて泣いているのを見た。既に泣き疲れているのかもしれない。
ふと隣を見るとニーナちゃんは泣きそうな顔になっていた。頭では分かっていても実際に見ると、そんな事は全然関係が無くなる。
「おじいちゃん。私、冒険者になる。お父さんやお母さん、トキヤお兄ちゃんやチワお姉ちゃん、ハズクお姉ちゃん、ルナお姉ちゃんみたいな冒険者に……だがら、見ででねおじいぢゃんっ」
最後あたりからニーナちゃんは泣いてしまった。それでも服の袖で涙を拭きながら、泣くのを我慢している。俺はニーナちゃんの目の周りの涙をハンカチで拭く。
「ニーナちゃん、泣きたかったら泣いたほうが良いよ」
俺がそう言うと、ニーナちゃんは目に涙を浮かべ、俺の胸に顔を埋める。
「お、じいちゃん……おじいぢゃん!おじいぢゃん!……うわぁぁぁーーーん!」
俺はそんな風に泣くニーナちゃんの頭を撫で続けた。
***
「ぐずっ、トキヤお兄ちゃんごめんなさい。涙と鼻水いっぱい服につけちゃって」
ニーナちゃんはそう言い謝る。俺の服にはカピカピに乾いた体液が付いていた。後で洗おう。
「大丈夫だよ、後で洗えば良いし。それよりもニーナちゃんが笑ってくれてる方が、俺もガストさんも喜ぶよ。だから、笑ってニーナちゃん」
「……うん」
俺がそう言うと、ニーナちゃんはそう言って笑った。ガストさんも悲しむニーナちゃんよりも、こんな風に笑うニーナちゃんよりを見た方が浮かばれるだろう。
「後ニーナちゃん、冒険者には12歳になるまではダメだよ」
ニーナちゃんは雷にうたれたような顔をする。
「え?……ダメなの?」
位置的に必然だが、上目遣いでこちらを見てくるニーナちゃん。今なら何でも了承しそうになるが、ここは我慢する。
「ダメだ。ルナが12歳だから、少なくとも同じ年齢の12歳になるまでは認められない」
真剣な顔で、ニーナちゃんの目をしっかりと見てそう言う。ニーナちゃんは不服そうだったが、我慢して
「……分かった……でも、12歳になったら私、冒険者なるからね。約束」
そう言ってニーナちゃんは小指を出してくる。この世界でもあるんだな。俺はそう思いながら、小指を出して、ニーナちゃんの小さい指と絡める。
「「ゆーびきーりげんまん、うそついたら、はーりせんぼん、のーます!ゆびきった!」」
久しぶりにしたな。
「トキヤお兄ちゃん、約束だよ」
「うん、ニーナちゃんが12歳になったら冒険者になる許可をあげるよ」
「うん!約束だよっ!」
俺がそう言うと、ニーナちゃんは先ほどよりも可愛い本当の本心から出た笑顔で笑った。
俺は墓石ではないが、墓石代わりののでかい石に向かって頭を下げる。
(ガストさん。ニーナちゃんのことは任せてください。必ず幸せにします。……あ、結婚するってわけじゃないですよ!)
一応断っておいた。そして頭を上げて、ニーナちゃんの方へと振り返り
「それじゃあニーナちゃん、この後はどうする?何かしたいことがあるなら、俺にできることなら何でもするけど?」
と尋ねた。
「う〜ん……とりあえずその服洗ってほしい」
「……うん」
ニーナちゃんにそう言われて、俺はそうとしか言えなかった。
俺はとりあえず服を脱ぎ、水を温水にしてそれで洗いおとす。そのあとは持ってきていた着替えに着替えて、洗って濡れている服を火で乾かす。
ぐ〜〜!
ニーナちゃんのお腹が鳴った。ニーナちゃんは顔を真っ赤にしてあたふたしている。俺が見ていることに気がつくと
「ち、ちがうよトキヤお兄ちゃん!これは、えっと、その……ハクちゃんのだよ!私お腹空いてないよ!」
……その言い訳は苦しいぞ。少しだけ意地悪してやろう。
「そっかー、ハクちゃんに食べ物あげなきゃねー。ニーナちゃんはお腹空いていないみたいだし、ニーナちゃん以外のみんなでご飯食べようかな〜?」
ニーナちゃんの方をチラ見すると、先ほどよりもすごい雷にうたれたみたいな顔でこちらを見ていた。
「冗談だよニーナちゃん。ちゃんとみんなの分、ニーナちゃんのも当然作るって」
俺がそう言うと、ニーナちゃんは顔を赤くして、無言で俺をポカポカと殴り始めた。可愛い。
「それじゃあ、ヘプトさん達にも言わないといけないから、一旦戻ろうか」
「うん!」
そう言って3人のところへと戻る。正確な場所は知らないが、探していれば見つかるだろ。
そうこうしていると、ヘプトさんを見つけた。いつも笑っている顔からは、想像が出来ないくらいに怖く青い。
「ヘプトさん、一体どうしたんですか?」
一瞬声を掛けるべきか迷ったが声を掛けた。
「……トキヤさん、カンラン村には2度来たことがあるんですよね?その時に魔物、白殺虎に遭遇した。1度目の時には何か魔物と遭遇しましたか?」
ヘプトさんがそう聞いてくる。
「はい、1度目の時のクエストで、魔猪と」
「魔猪と!……それは、すごいですね」
ヘプトさんがそう言っていたが、俺の耳には入っていない。
……あれ?俺が2度来た時に、魔物が来た?あれ?そんなことが偶然があるのか?
カンラン村に魔物を引き寄せる何かでもあるのか?それとも異世界人である俺か?いや、それなら魔物の大毒蜘蛛は?
魔猪は動物が魔物化した魔物。大毒蜘蛛は存在自体が魔物。これに違いがあるのか?
「トキヤさん、どうかしましたか?」
「え?……い、いえ!特に何も!それよりも何でそんなことを?」
ヘプトさんが目を細めて聞いてくるが、誤魔化して話を戻す。
「ニーナさん、少しの間席を外してくれませんか?もちろん遠くには行かないように。村から出てはいけませんよ」
ヘプトさんがニーナちゃんにそう言う。
「んー、後でご飯美味しいの作ってくれるなら、良いよー」
「良いですよ。頑張ってくださいトキヤさん」
「勝手に約束しないでくださいよ!それに美味しいご飯ぐらい、言われなくても作りますよ」
ニーナちゃんはそれを聞くと、どこかに行ってしまった。
「トキヤさん、実はですね。今日と2日か3日前、さらに5日前にとある魔法が使われています。詳しいことは言えませんが……魔物を呼び寄せる、失われた魔法の一種かと」
失われた魔法?何だそれ?て言うか、俺が呼び寄せているなんて無かったな。自意識過剰、恥ずかしい。
俺がそんな顔をしたので、ヘプトさんは説明をしてくれた。
失われた魔法とは、現在誰も使えなくなり、詠唱の継承も途切れたために、失われた魔法と呼ばれている。
そんな魔法が……俺がカンラン村に来た時じゃないか!一体どうなってるんだ?
「それで……その、失われた魔法が使われた痕跡があるんですね?」
「はい、トキヤさんは偶然、魔法が使われた日と同じ日に来ているので話しましたが、絶対に他の人には言わないようにしてください。もし話した場合は……察してください」
「絶対に話しません!……あと、どうやって魔法の痕跡を?」
俺が尋ねると、ヘプトさんは自分の右目を指差す。
「私は無属性魔法の《魔素解析》を使えるんですよ。《魔素解析》はその場に残る魔素の性質を、私の右目を通して見ることができるんです。この魔法を使って見た結果ですが、魔物を呼び寄せる残留魔素がありました」
あっ!だからオッドアイなのか!あと……つまり、魔物がこの村を訪れたのは偶然では無く故意に……組織が関わっている可能性がある!
「トキヤさん、顔が真っ青ですよ?」
「いえ、そんな恐ろしい魔法をこの村に使われたことが、自分にも向いたらと思い」
「……そうですか。とりあえず、この事を隊長と、アランに伝えるので、合流しなければ!」
「はい。ニーナちゃんはどうしたら良いですか?」
ヘプトさんがそう言うので、俺がニーナちゃんについて聞く。
「とりあえず、2人に話さなければ。ニーナさんにこの事実は重たすぎるので」
それは俺も同感だ。
「そうですか。では2人はどこに?」
そう言えば2人の姿を見ていないが、どこに行ったのだろうか?
「あぁ、2人はーー」
「きゃああーーーーっ!」
「ニーナちゃん!」
ヘプトさんが言おうとした瞬間に、ニーナちゃんの悲鳴が聞こえた!急いで悲鳴の聞こえた方に向かう。
そこには倒れたニーナちゃんの前に、狼?が立っていた。
面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




