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目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜  作者: どこでもいる小市民
第三章〜白殺虎との遭遇編〜
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魔物襲来の理由?失われた魔法

初の短編を書きました。タイトルは

『昏睡した幼馴染と過ごす、最初で最後のデート』

です。是非お読みになってください。


活動報告を更新しましたので、そちらもどうぞ。

「酷いな……」


ガルーダさんがそう呟いた。魔猪のクエスト受けた時の俺と同じ感想だ。だが、実際は前以上に酷い。


民家の大半は原形をとどめておらず、無傷の民家は一軒もない。


「とりあえず、調査をしましょう」


ヘプトさんがそう言い、ハクニーから降りる。ガルーダさんとアランもそれに続いて降りたので、俺が先に降り、その後にニーナちゃんを降ろす。


「それで……調査って何をするんですか?」


俺がそう尋ねる。ニーナちゃんを優先したいが、現場を知らず知らずに荒らしてしまう可能性があるため、先に調査内容を聞いておいたほうが、動きやすいと思ったためだ。


「基本的には……トキヤさんはニーナさんを優先してあげてください。あぁ、調査についてはご安心を。多少の現場を動かしたりする権利はニーナさんにあると思いますので」


ヘプトさんは俺の考えを見抜いたのかそう言ってくれた。


「ありがとうございます。行こう、ニーナちゃん」


「……うん」


俺がそう言うと、ニーナちゃんは俺の手を取り、しっかりと握りしめてそう言った。


プルプル!


ニーナちゃんの手が震えている。その震えが俺の手に、ニーナちゃんの手から伝わってくる。俺はニーナちゃんの小さい手を、しっかりと握り返した。


そして、ニーナちゃんとガストさんが、住んでいた民家跡に着く。民家は半壊している。俺が止まっていた部屋はもちろん、ガストさんとニーナちゃんの部屋もだ。


ニーナちゃんはただ、無言でその光景を見ていた。そして、家の周りを一周し、玄関前に立ち


「……ありがとうね……」


と言った。そして、俺の方を向き


「トキヤお兄ちゃん、おじいちゃんはどこ?」


と、聞いてきた。


「……向こうの土の中だよ。一緒に行こう」


そう返して、村の中心に行く。そこには俺が置いたでかい石と、少しだけ枯れた一本のグラシアの花が置いてある。俺は前、この場所の下に全ての遺体を埋めた。


「はい、ニーナちゃん」


「……ありがとう、トキヤお兄ちゃん」


俺はバックからグラシアの花を出して、ニーナちゃんに手渡す。あらかじめ買って置いたやつだ。ニーナちゃんはそうお礼を言い、グラシアの花を受け取る。


そして、グラシアの花を添えて、変わりに前に置いてある花を取る。そして、ニーナちゃんは手を合わせて祈る。俺も続けてそうする。


ニーナちゃんはこんな時でも泣かない。わずか8歳の女の子がだ。両親が亡くなった時にも、いっぱい泣いたことと、宿でも隠れて泣いているのを見た。既に泣き疲れているのかもしれない。


ふと隣を見るとニーナちゃんは泣きそうな顔になっていた。頭では分かっていても実際に見ると、そんな事は全然関係が無くなる。


「おじいちゃん。私、冒険者になる。お父さんやお母さん、トキヤお兄ちゃんやチワお姉ちゃん、ハズクお姉ちゃん、ルナお姉ちゃんみたいな冒険者に……だがら、見ででねおじいぢゃんっ」


最後あたりからニーナちゃんは泣いてしまった。それでも服の袖で涙を拭きながら、泣くのを我慢している。俺はニーナちゃんの目の周りの涙をハンカチで拭く。


「ニーナちゃん、泣きたかったら泣いたほうが良いよ」


俺がそう言うと、ニーナちゃんは目に涙を浮かべ、俺の胸に顔を埋める。


「お、じいちゃん……おじいぢゃん!おじいぢゃん!……うわぁぁぁーーーん!」


俺はそんな風に泣くニーナちゃんの頭を撫で続けた。


***


「ぐずっ、トキヤお兄ちゃんごめんなさい。涙と鼻水いっぱい服につけちゃって」


ニーナちゃんはそう言い謝る。俺の服にはカピカピに乾いた体液が付いていた。後で洗おう。


「大丈夫だよ、後で洗えば良いし。それよりもニーナちゃんが笑ってくれてる方が、俺もガストさんも喜ぶよ。だから、笑ってニーナちゃん」


「……うん」


俺がそう言うと、ニーナちゃんはそう言って笑った。ガストさんも悲しむニーナちゃんよりも、こんな風に笑うニーナちゃんよりを見た方が浮かばれるだろう。


「後ニーナちゃん、冒険者には12歳になるまではダメだよ」


ニーナちゃんは雷にうたれたような顔をする。


「え?……ダメなの?」


位置的に必然だが、上目遣いでこちらを見てくるニーナちゃん。今なら何でも了承しそうになるが、ここは我慢する。


「ダメだ。ルナが12歳だから、少なくとも同じ年齢の12歳になるまでは認められない」


真剣な顔で、ニーナちゃんの目をしっかりと見てそう言う。ニーナちゃんは不服そうだったが、我慢して


「……分かった……でも、12歳になったら私、冒険者なるからね。約束」


そう言ってニーナちゃんは小指を出してくる。この世界でもあるんだな。俺はそう思いながら、小指を出して、ニーナちゃんの小さい指と絡める。


「「ゆーびきーりげんまん、うそついたら、はーりせんぼん、のーます!ゆびきった!」」


久しぶりにしたな。


「トキヤお兄ちゃん、約束だよ」


「うん、ニーナちゃんが12歳になったら冒険者になる許可をあげるよ」


「うん!約束だよっ!」


俺がそう言うと、ニーナちゃんは先ほどよりも可愛い本当の本心から出た笑顔で笑った。


俺は墓石ではないが、墓石代わりののでかい石に向かって頭を下げる。


(ガストさん。ニーナちゃんのことは任せてください。必ず幸せにします。……あ、結婚するってわけじゃないですよ!)


一応断っておいた。そして頭を上げて、ニーナちゃんの方へと振り返り


「それじゃあニーナちゃん、この後はどうする?何かしたいことがあるなら、俺にできることなら何でもするけど?」


と尋ねた。


「う〜ん……とりあえずその服洗ってほしい」


「……うん」


ニーナちゃんにそう言われて、俺はそうとしか言えなかった。


俺はとりあえず服を脱ぎ、水を温水にしてそれで洗いおとす。そのあとは持ってきていた着替えに着替えて、洗って濡れている服を火で乾かす。


ぐ〜〜!


ニーナちゃんのお腹が鳴った。ニーナちゃんは顔を真っ赤にしてあたふたしている。俺が見ていることに気がつくと


「ち、ちがうよトキヤお兄ちゃん!これは、えっと、その……ハクちゃんのだよ!私お腹空いてないよ!」


……その言い訳は苦しいぞ。少しだけ意地悪してやろう。


「そっかー、ハクちゃんに食べ物あげなきゃねー。ニーナちゃんはお腹空いていないみたいだし、ニーナちゃん以外のみんなでご飯食べようかな〜?」


ニーナちゃんの方をチラ見すると、先ほどよりもすごい雷にうたれたみたいな顔でこちらを見ていた。


「冗談だよニーナちゃん。ちゃんとみんなの分、ニーナちゃんのも当然作るって」


俺がそう言うと、ニーナちゃんは顔を赤くして、無言で俺をポカポカと殴り始めた。可愛い。


「それじゃあ、ヘプトさん達にも言わないといけないから、一旦戻ろうか」


「うん!」


そう言って3人のところへと戻る。正確な場所は知らないが、探していれば見つかるだろ。


そうこうしていると、ヘプトさんを見つけた。いつも笑っている顔からは、想像が出来ないくらいに怖く青い。


「ヘプトさん、一体どうしたんですか?」


一瞬声を掛けるべきか迷ったが声を掛けた。


「……トキヤさん、カンラン村には2度来たことがあるんですよね?その時に魔物、白殺虎に遭遇した。1度目の時には何か魔物と遭遇しましたか?」


ヘプトさんがそう聞いてくる。


「はい、1度目の時のクエストで、魔猪と」


「魔猪と!……それは、すごいですね」


ヘプトさんがそう言っていたが、俺の耳には入っていない。


……あれ?俺が2度来た時に、魔物が来た?あれ?そんなことが偶然があるのか?


カンラン村に魔物を引き寄せる何かでもあるのか?それとも異世界人である俺か?いや、それなら魔物の大毒蜘蛛は?


魔猪は動物が魔物化した魔物。大毒蜘蛛は存在自体が魔物。これに違いがあるのか?


「トキヤさん、どうかしましたか?」


「え?……い、いえ!特に何も!それよりも何でそんなことを?」


ヘプトさんが目を細めて聞いてくるが、誤魔化して話を戻す。


「ニーナさん、少しの間席を外してくれませんか?もちろん遠くには行かないように。村から出てはいけませんよ」


ヘプトさんがニーナちゃんにそう言う。


「んー、後でご飯美味しいの作ってくれるなら、良いよー」


「良いですよ。頑張ってくださいトキヤさん」


「勝手に約束しないでくださいよ!それに美味しいご飯ぐらい、言われなくても作りますよ」


ニーナちゃんはそれを聞くと、どこかに行ってしまった。


「トキヤさん、実はですね。今日と2日か3日前、さらに5日前にとある魔法が使われています。詳しいことは言えませんが……魔物を呼び寄せる、失われた魔法の一種かと」


失われた魔法?何だそれ?て言うか、俺が呼び寄せているなんて無かったな。自意識過剰、恥ずかしい。

俺がそんな顔をしたので、ヘプトさんは説明をしてくれた。


失われた魔法とは、現在誰も使えなくなり、詠唱の継承も途切れたために、失われた魔法と呼ばれている。


そんな魔法が……俺がカンラン村に来た時じゃないか!一体どうなってるんだ?


「それで……その、失われた魔法が使われた痕跡があるんですね?」


「はい、トキヤさんは偶然、魔法が使われた日と同じ日に来ているので話しましたが、絶対に他の人には言わないようにしてください。もし話した場合は……察してください」


「絶対に話しません!……あと、どうやって魔法の痕跡を?」


俺が尋ねると、ヘプトさんは自分の右目を指差す。


「私は無属性魔法の《魔素解析(マナエナライズ》を使えるんですよ。《魔素解析》はその場に残る魔素の性質を、私の右目を通して見ることができるんです。この魔法を使って見た結果ですが、魔物を呼び寄せる残留魔素がありました」


あっ!だからオッドアイなのか!あと……つまり、魔物がこの村を訪れたのは偶然では無く故意に……組織が関わっている可能性がある!


「トキヤさん、顔が真っ青ですよ?」


「いえ、そんな恐ろしい魔法をこの村に使われたことが、自分にも向いたらと思い」


「……そうですか。とりあえず、この事を隊長と、アランに伝えるので、合流しなければ!」


「はい。ニーナちゃんはどうしたら良いですか?」


ヘプトさんがそう言うので、俺がニーナちゃんについて聞く。


「とりあえず、2人に話さなければ。ニーナさんにこの事実は重たすぎるので」


それは俺も同感だ。


「そうですか。では2人はどこに?」


そう言えば2人の姿を見ていないが、どこに行ったのだろうか?


「あぁ、2人はーー」

「きゃああーーーーっ!」


「ニーナちゃん!」


ヘプトさんが言おうとした瞬間に、ニーナちゃんの悲鳴が聞こえた!急いで悲鳴の聞こえた方に向かう。


そこには倒れたニーナちゃんの前に、狼?が立っていた。

面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。

あと、私のもう1つの連載作品の

『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』

も、是非読んで見てください。

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