2人の思惑〜焼きパラパの実パン、グラコ豆と干し肉のスープ〜
56部分を少し改稿しました。ヘプトに対する説明を少し付け足しました。是非ご確認になって下さい。
後、初級魔法《水回復》から《水癒》に変更します。
他にも色々していますが、基本的に自分で見つけた誤字報告なので、物語に支障はないので気にしないで下さい。もしするなら、今回みたいにちゃんと書きます。
どこか忘れていたら、誤字報告してくれると助かります。
「一体なんの相談でしょうか?」
ヘプトさんがそう尋ねてくる。いきなり相談って言われたら、そうなるわな。
「はい、ニーナちゃんのことなんですが……村に着いた時に、ニーナちゃんが悲しむと思うんですよ。今も、昨日の宿でも、あまりそんなところは見せなかったんですけど。もし、そんな時には、どんな風に声をかけたらいいんでしょうか?」
もしでは無い。確実にそうなるだろう。寝言でも『お爺ちゃん』って呟いていたからな。
「……分からんな」
「え?」
「分からんな」
そう言ったのはガルーダさんだ。
「私もです。あんな小さい女の子が、家族を失い、1人になった子を慰める方法は、残念ながら」
ヘプトさんも続けて言う。
「男の場合は、酒を飲み、女を抱けば大抵が大丈夫なんだが……」
ガルーダさんはそう言った。騎士団の中の誰かの実体験だろうか?
「ですが、少なくとも亡くなったことは事実と認識しているのでしょうが……実際に立ち会った場合、どうなるかまでは……。一番可能性が高いのはトキヤさん、あなた次第としか言いようがありません」
「そう……ですか……」
2人とも、そう言った経験は無いのだろう。国を守ることはあっても、騎士団の騎士の人たちを慰めるようなことはあっても、小さい子を慰める方法など。
まず、方法なんて言い方がおかしいのかもしれない。慰める方法、……作業みたいな言い方だな。慰める?ニーナちゃんの行動を俺が勝手に、先に決めてどうする?ニーナちゃんのすることはニーナちゃん自身が決めることだ。
俺がすることはその時にニーナちゃんにとって、最適な行動をすれば良い。だから、カンラン村に行くまでは、何もしないほうが得策なのか……?
いや、色々考えているけど、どうなるか怖いからと言い訳して、問題を先延ばしにしているだけじゃ無いのか?でも、どうすれば良いのか分からないんだ。
「ヤさん、キヤさん、トキヤさん!……もう寝たほうがいいですよ。第1、一番辛いのはニーナさんです。それなのに、曲がりなりにも保護者であるあなたがそんな風ではいけません」
ヘプトさんにそう言われた。……確かにそうだな。俺がこんなんじゃダメだよな。ニーナちゃんのことを色々考えても、どうなるかなんて分からない。それよりも、もしものために休んだ方が良いな。
「そう、します。それじゃあお二人とも、お休みなさい」
そう言って、寝袋に入って寝た。すぐに寝れた。久しぶりに、昼に体を動かしたしな。
***
ガルーダはトキヤが寝たのを確認する。
「それでヘプト。昼の話の続きだが……トキヤについでどう思う?」
昼間2人で話していた内容は、トキヤについてだった。トキヤに危険性があるかどうかを確かめる。模擬戦を挑んだ理由は、トキヤにはもしもの時に実力を知っておいた方が、良いと言っておいた。
だが、本当はトキヤ自身の実力を知ることで、危険性とその危険度を測るためだった。もしトキヤが敵に回った場合、どの程度の実力なのかを測った。
ヘプトが魔法を使わなかったのは、手加減をもあるが、本当の実力をより測りやすくするためだ。
もしトキヤが弱すぎて、一瞬で決着がついてしまっては、実力が測れない。そう考えて、ヘプトは魔法を使わなかったのだ。最後の時、剣を引いたのも、『寸止めルール』を提案したのも、情報源を傷つけないためだ。
「そうですね……普通に考えて、危険性はあまり無いですね。模擬戦の真剣さから見て、あれが本気でしょう。あれなら、アランでも8割勝てるでしょう」
それがヘプトがトキヤに対して思った実力だ。
「残りの2割は?」
ガルーダが質問をする。
「……トキヤさんは頭が良いです。今回、ルールを逆手に取った、自身の身を投げ打てる覚悟もそうですが……不意打ちなら、魔法を使っても負けるかもしれません。逆に、ニーナさんに対してのあの過保護ぶり。トキヤさんは仲間、友達、家族などと、大切と認めた人に対しては必要以上に甘い。あの性格では他国の間者の可能性もありませんでしょう。あれが演技なら、別ですが……それも無いでしょうし」
今回、ガルーダとヘプトが調査について言った理由は、そのためだったのだ。トキヤには当然話してはいないが。あと、アランも。
「……そうだな」
ヘプトの話を聞いて、ガルーダは間を開けそう相槌を打った。だが、ヘプトには御見通しだ。
「隊長、分かってないでしょう?」
「……ちゃんと分かっているぞ」
ヘプトの問いに対して、ガルーダはまた、間を開けてそう言う。
「はぁ〜、とりあえずトキヤさんには気を抜かないでください。限りなく低いですが、まだ疑いが晴れたわけではありません」
「そうだな。良かった良かった」
ガルーダはそう言った。ガルーダが模擬戦が終わった時に、トキヤに対して言った言葉『うちの隊に来い』と『剣を教えてやろうか』は本気だった。
ガルーダはトキヤのことを気に入っていた。ただ、間者の可能性があったため、少し残念に思っていたが、ヘプトの言った事を聞いて安心していた。
「それでは私たちも眠りましょうか」
「そうだな」
そう言って2人も寝袋に入り、寝た。野盗に対する見張りは、最近は出現率がかなり低い(白殺虎のせい)。そのため、見張りはしていない。実際に5人は、襲われる事なく朝を迎える。
***
「おはようございますトキヤさん。良い朝ですね」
「うぁ?……あぁ、ヘプトさん。おはようございます。……ご飯作りましょうか?」
「ええ、そうしてくださるとありがたいですね。隊長も起こします。ニーナさんはーー」
「もう少し寝かせておいてください。……あぁ、もう、よだれが出ている」
ニーナちゃんの口元を見ると、よだれが出ていた。俺はまたハンカチで、ニーナちゃんの口元を拭く。ヘプトさんはそんな事をする俺をニコニコしながら見ていた。
「そう言えばアランは?」
「アランなら、向こうで剣の素振りをしていますよ」
俺が尋ねると、ヘプトさんはそう言って向こうを指差す。そこには上半身裸の、汗びっしょりのアランが居た。
「おはようアラン。朝早くからすごいな」
俺はアランに近づいて、挨拶をする。アランはこっちに気づいて剣を振るのをやめる。
「……おはよう、トキヤ。……その……ご、ご飯は今日も作ってくれるのか?」
アランがそう言ってきた。昨日食べたのがそんなに美味しかったのかな?
「おう、任せろ」
「……そうか」
俺がそう言うと、アランは反対の方を向き、そう小さく言い、素振りに戻った。
俺は川に行き、身だしなみを整え川の水を飲む。それにしても、美味しいな。昔の川の水もこんなに美味しかったのだろうか?そら、環境破壊とか言う人が出てくるわけだ。
「おはようハクちゃん」
ブルルル!
そんな事を考えながら、ハクちゃんに挨拶をし、ご飯を作っていく。ガルーダさんは起きて、テンションが上がりながら、アランと同様に素振りをしていた。
さて、作ると言っても、朝だし、食料も量に限りがあるから、大したものなんて出来ないな。
とりあえずパラパの実のなる木に行き、パラパの実をいくつかもぎ取る。そう言えば、この木ってなんて名前の木なんだろう?パラパの木かな?そしてパラパの実を水で洗う。
その後は持ち込んだ食材のうちの1つ。グラコ豆と干し肉のスープを使ったスープを作る。
干し肉はそのまま食べるのも良いが、塩分が多いため、スープに入れて煮込むだけで、ちょっと薄いが、意外に美味しい出汁が出る。朝だしいきなりこってりしたものを食べる気にはならないから、これぐらいでいいだろう。
グラコ豆は安価で安いため、いつも持ち歩いている。
大豆みたいな形と色で、普段はせんべいみたいに硬い。そのままでも、ポリポリ食べれるが、煮込めば柔らかくなる優れものだ。
昨日洗った鍋でスープを作る。川の水を入れ火を付けて、干し肉を入れ沸騰するまで待つ。その後、グラコ豆を入れて、柔らかくなるまで煮込む。
このぐらいになると、干し肉も柔らかくなる。昨日のスープは干し肉の歯ごたえを残していたが、それとはまた別の食感が楽しめる。
後は鍋を退かしてパラパの実の皮を剥き、1cmぐらいにスライスする。それを鍋を退かした火で焼き、焼きリンゴならぬ焼きパラパの実にする。それを黒パンの真ん中に、焼きそばパンみたいな切れ込みを入れて挟む。焼きパラパの実パンだ。……言いにくいな。アップルパイ……パラパパイ……言いにくい!
完成した事を、素振り中の2人とヘプトさんに伝える。ついでにニーナちゃんを起こしに行った。ニーナちゃんは顔を洗ったりした。
「「頂きます」」
俺とニーナちゃんがそう言い食べ始める。ガルーダさんとアランの2人は普通に食べ始める。だが、1人だけ食べていない人が居た。ヘプトさんだ。
「そう言えば昨日も言っていましたが、なんなんですか?『頂きます』って」
ヘプトさんが聞いてきた。今まで出会った人がほとんど例外なく聞くことから、この世界にはこの風習がないのかもしれないな。こういうところが、亜人差別につながっているのかもしれないし。
「『頂きます』は食べ物に対する感謝の気持ち……ですかね。この世の生物は、他の生物を殺して食べることで生きています。それは植物も同じようにです。それらの恵みに対してのお礼……みたいなもんです」
多分こんな感じであっていると思うけど……。
「はぁなるほど。……植物もですか?」
ヘプトさんは微妙な顔をして、そう聞いてきた。
「ええ、植物も生きていますから。人と同じように成長をし、子供を作りますから」
「そうですか……頂きます」
そう言ってヘプトさんはご飯を食べ始めた。
「昨日もそうだがトキヤの飯は旨い(美味い)な」
「あぁ、上手い。剣に関係がないとは言え、ここまで来ると尊敬に値するレベルだ」
ガルーダさんが俺を褒めて、アランもそれに続いてくれる。昨日は驚きがあり、一言だけ言ったアランだが、今日は普通に会話をしている。ご飯が美味しいと会話も進むのだろうか?
10分くらいで皆が食べ終わり、後片付けを俺とニーナちゃんがする。ニーナちゃんは自分から積極的にやってくれたのでうれしかった。あ、ハクちゃんは昨日からそこら辺の草食べてた。
そして、俺とニーナちゃんはハクちゃんに乗り、他の3人もハクニーにそれぞれ乗りカンラン村(跡地)を目指して走り出した。そして昼前にカンラン村(跡地)に着いた。
面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




