3つのクエスト、いざグラーデル平原へ
今日から毎日更新します。詳しくは活動報告をご覧ください。
「へ〜〜、ここがギルドかー。初めて入ったけど以外と普通ね」
ルナがそう呟く。どんな想像をしていたんだ?それよりも気になったことがある。前に来た時よりも明らかに人が増えているのだ。何かあったのか?
「とりあえずルナの登録は済ませるか」
「分かったわ」
そう言って俺たちはギルドの受付嬢のところへ行く。
「あら?お久しぶりですね。来るのを今か今かと待っていましたよ。あら?そちらのお嬢さんは……もしかして新しいパーティメンバーですか?」
あの時の腹が立つ受付嬢だった。チワを見た途端に嫌な顔をして、俺がハクちゃんを持っていると知った途端に、態度を変える、俺の嫌いなタイプの女だ。
「はい、この子を新しく冒険者登録、そしてパーティ登録をお願いします」
「……分かりました。銀貨一枚です」
登録料の銀貨一枚を手渡す。
「あともう1人、今は来ていないのですが、冒険者登録とパーティ登録をしたいのですが、ここは夜でも開いていますか?」
「はい、ギルドは24時間年中無休です。いつ何時、危険が迫るか分かりませんからね。最近は白殺虎の出現が大きかったのか、冒険者たちも集まりつつありますので、宿屋が満室や、物価の上昇などが見られます。特にポーションなどは冒険者などにとっても必需品ですので、買い貯めしておくことをお勧めします」
聞いていない良い情報まで教えてくれた。最近物価のインフレが激しかったのはそう言う理由か。こう言うところだけはありがたい。たとえ打算的な考えから来る行動であったとしてもだ。
「ありがとうございます。それでお勧めのクエストか何かありますか?俺たちの目標で二ヶ月以内にDランクに上がりたいんですけど……」
「えっ!そうなんですか?すごいですね!でしたら初心者用クエストからいくつかですが、早く終わる、もしくは場所が近い物を探しますね。それにしても昔の勇者様みたいなことを言う人ですね?」
「勇者?」
「はい、昔召喚された勇者様は一年でなると言っていたんですが、三ヶ月でSランクになったそうですよ。同じようなことをたまに言う人がいるので……」
「そうなんですか、ありがとうございます」
そう言ってギルドの受付嬢は裏に回っていった。
それにしても勇者か……。しかも召喚されたって言っていたよな?もしや俺も召喚されたのでは?いやいや、だとしたら召喚、事故ってんじゃねーか。第1俺には『勇者』の称号なんてないしな。そんな自分に都合のいい夢は見ない方が良いな。
「ねぇトキヤ、あの女何?」
そんなことを考えていた俺にルナが聞いてきた。
「ん?俺を貴族か大型の商人の息子か何かと思っているんだ。チワを見た時の嫌な態度と、ハクちゃんの話題を出した途端の態度の変化で恐らくその認識は間違っていないと思うけど……」
「ふぅ〜ん、やな感じね。ねーチワさん」
「そうですね。誰もがルナさんやトキヤ様みたいな方々なら奴隷と言う制度も無いのでしょうけど……」
『そんなことは無いぞ』と言いかけて口を慌てて塞ぐ。仮に亜人がいなくなったら、今度はスラムあたりから奴隷に堕ちる人たちが出て来るだろう。
「確かに一般的に奴隷はダメなんだろうが……俺は大きく否定はしないな」
「どうしてですか?」チワが聞いて来る。
「奴隷制度が無ければチワと出会えなかったぞ。俺はそれだけで奴隷制度があって良かったと生涯思える」
あの時に出会っていなければどうなっていたか……。チワと出会えて本当に良かった。心からそう思える。
「……っ……」
チワは顔を真っ赤にして声にならない声を出している。よく見ると、後ろの尻尾が左右にフリフリと揺れている。
「トキヤ〜〜!一体何人の女の子に唾をつけたら気がすむのよ!昨日だけで私とハズクさん2人よ!」
「なっ!唾なんてつけてねーよ!確かにチワと出会った日を1日目として……今で5日目だけど、そんなつもりじゃねーって事ぐらいルナもわかってるだろ!俺は大事な仲間が全員男でも大丈夫だ」
「え!トキヤ、男が好きなの?」ルナが見当違いことを言い出した。
「なんでそうなる!チワと出会えて良かったって言ってるだけだろ?」
「あの〜〜、クエストが見つかったんですけど……」
ナイスタイミング!受付嬢が戻って来た。
「あっ、すいません。それでどんなクエストがありましたか?」
「はい、こちらなんですけど……」
そう言って三枚の依頼書を見せて来る。まず、1枚目の内容が
『グラーデル平原に咲いているグラシアの花を採って来てください。お爺ちゃんの誕生日なんだけど、遠いので親に行っちゃダメって言われているから、代わりにお願いします。死んじゃったお婆ちゃんが大好きだった花なので、お爺ちゃんも喜ぶと思います。
カンラン村
ニーナ・ベルン
お礼は私の貯金全部です 』
2枚目が
『腰を悪くしたので代わりに、ポーション(小)になるヒポポ草を100草ほどお願いします。
近くの薬屋のおっちゃん
銀貨5枚 』
3枚目が
『低級の魔法剣用の魔石の在庫が心もとないので、バルトロールの町の近くにある、バルトロールダンジョンに生息している『灰色狼』の魔石を5個ほど採って来てくれ
近くの武器屋の親父
銀貨30枚 』
だった。と言うか全員知ってる人じゃねーか。魔法剣というのは魔石を使った剣のことだ。鉄よりも耐久力がある。魔石は魔物から採れる。魔猪や大毒蜘蛛も採ってある。あっ!買い取ってもらうの忘れてた!後で換金しよう。
他にも前に俺が聞いた時に間違えたのが魔剣だ。違いが説明を聞くまで分からなかった。魔剣は簡単に言えば、魔法が使えない人でも炎を纏った剣が使うことが出来るようになる剣のことだ。当然高額で俺には一生縁の無い物の事だ。
剣の値段は基本的に石、青銅、鉄、低級の魔石、中級の魔石、上級の魔石の順番でどんどん値段が上がり、最後に魔剣の順番だ。魔剣にも色々種類がある。ただし、ある理由で数が少ないのでこの世界に千本も無いと、言われている。俺は現在、鉄の剣を使っている。
「まず、こちらが一番早く終わりそうなクエストですね。カンラン村からは遠いんですけどここからだと近いのですぐです。報酬額が少なそうなので誰も受けそうにありません。
次にこちらも早く終わりそうなクエストです。そこに行くついでにヒポポ草を追加で採ってくれば、さらに
プラスで買取屋で買い取ってくれるのでこれもオススメです。
最後は少し時間がかかりますが、Eランククエストにしては高額な報酬なんです。ですが、少し難易度が高く、場所が少し遠いため、他の方は誰も受けないのですが、ハクニーを飼っているならオススメですね」
「へー、ありがとうございます。少しだけ仲間と考えるので待っていてください」
「はい。分かりました」
そう言って少しだけ受付カウンター並びに受付嬢から距離をとり、丁度3人用の椅子が用意されたテーブルに腰掛ける。
「それで……トキヤはどれを受けるの?」
「目的の優先度によって変わるな。早くDランクになりたいなら1枚目の依頼書だろうし、お金がより多く欲しいなら最後のだろうし」
「そうですね……私は早くトキヤ様やハズクさんに金銭的にも楽をさせたいので3枚目の依頼書……ですね」
「そう?私は先にDランクに昇格する方が先だと思うけど……」
「確かにそうだね。でも、Dランクになった途端に、次は『Cランクに三ヶ月以内』なんて事になる可能性もあるからね。……早くて簡単に終わるクエストを最初に受けて二ヶ月以内のノルマを達成しやすくして、最後あたりの3個ぐらいのクエストを3枚目のクエストみたいなのを受ければ良いんじゃないかな?ただ、あの3枚の依頼書は全員知っている人だったから全部受けたいんだよな……」
「なら順番に受ければ良いじゃない?まず、1枚目のやつは全員で取りに行って、誰か1人がハクちゃんと届ける。その間に残りの2人でヒポポ草を採りに行くクエストを受けるってのはどう?」
「良いんじゃないか?受付カウンターで、出来るか聞いて来る」
そう言って俺は受付嬢のところへ行き、その事を説明する。
「はい、恐らくですが宜しいかと」とのことだ。
「ならまずはニーナ・ベルンさんのクエストを受けます」
「分かりました。こちらの依頼を受理させていただきます。ありがとうございました」
こうして俺は2回目のクエストを受けた。
次に思いっきり忘れていた、溜まっていた素材を買い取ってもらった。宿に戻ってな。特に高く売れたのが魔猪や大毒蜘蛛などだ。魔猪はすごく驚かれた。その額なんと銀貨30枚。余裕でルナのお爺さんにお金返せるわ。
なので、一旦そこに寄って頭を下げながらお礼を言いつつ、借りた金額を返した。お爺さんには『素材を売るのを忘れてたって……』と、呆れられてしまった。
もちろんルナにも。チワは何か考えがあるかと思っていたらしい。なんもねぇーよ!
「チワ、あまり俺を全面的に信じるな。おかしいと思ったことがあったらすぐに言ってくれ。俺だって間違えることはあるしな」
「はい、分かりましたトキヤ様」
なんて会話をした。
そして俺たちはグラーデル平原に咲くグラシアの花を
採りに出かけた。
面白かったら誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。
あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら勇者の息子だった件』
も、是非読んで見てください。




