魔法の試運転
そんなこんなで現在は森にいる俺たち。メンバーはチワとルナだ。
「まずはチワさ、チワから始めるわ。風の魔法書4ページ目の魔法の《風付与》を使ってみて」
ルナがチワに言う。《風付与》とはその名の通りで何かに風を付与、つまり風を何かに付けることができるのだそうだ。。付けれる風や付ける量などは色々あるがそんなのは適正(魔力)に左右されるがチワは使えるが才能はあまり無いので効果は普通の魔法使いの8割ぐらいだそうだ。
「はい」
チワが返事をし、手には弓矢を持ち、あらかじめ的を書いておいた木に向けて構えて詠唱を始めた。距離は10メートルほどだ。
『風よ。我が矢に纏いて、的を射て!《風付与》』
チワがそう唱えた。すると風がチワの構えた矢の周りに集まる。チワは引いていた矢を離した。するといつもの2倍ぐらいの速さで飛んで行き、木に刺さった。
「で、できました。できましたよトキヤ様!」
チワが俺に近づいてそう言ってくる。尻尾もブンブン振っているのでとても嬉しいということがわかる。
「あぁ、すげーよチワ!これで硬い敵にも矢が効きやすくなる」
硬い敵、前に戦った毎日猪にも矢が刺さらずチワは短剣での近接武器にしてしまった。これでそういうことは少なくなるだろうからとても嬉しい。
そう考えながら頭を撫でる。
「えへへへ」
最近は撫でるのに慣れたのか顔を赤くすることはルナなどの前でも無くなった。それでもニコニコしているので可愛い。だからいつまでも撫で続けていたい。
「ちょっ、ちょっとトキヤ!次はあんたの番でしょ。早くしてよ!」
ルナに怒鳴られた。ちょっと起こりすぎでだろ。なんか機嫌が悪くなったぞ?チワが成功したんだから喜ぶのが当たり前なのになんで不機嫌に……?てか今あんた呼ばわりに戻ったぞ。……まぁ、そんな風に呼び合えるほどには親しくなったと考えよう。
「ごめんごめん。じゃあまずは水属性の方からだよね?」
「そうよ。もしもトキヤが火属性の魔法で失敗した場合は自分で止めて見せなさい。それも練習のうちに入るし、私がいなくなった時止めるのはトキヤしかいないもの」
そらそうだ。ルナがいつでもいるわけじゃ無いしな。俺は魔法が失敗した事など見た事もした事もないがどんな感じなんだろう?てかそんな事より早くしないとルナがより不機嫌になる。効果範囲が分からないので1メートルほどまで俺は木に近づく。
「さて……ふぅ」
改めてやろうとすると少し緊張する。俺は大きく息を吐き心を落ち着かせる。俺は左手を前に突き出して魔法の呪文を唱える。
『水よ。縄となりて、木を拘束せよ!《水拘束》』
そう唱えた瞬間だ。水が左手に集まり木に向かって飛んでいく。そしてそのまま木に絡みつく。そしてしばらくしてから消えた。
「……あれって成功だよね?」
俺は成功だと思うが同じ水属性のルナの意見も聞きたい。
「ええ、成功よ。二人とも成功なんてよかったわね」
ルナも笑顔で俺たちを褒めてくれた。チワも「さすがはトキヤ様です」と言っていた。
でもルナが「調子に乗らないこと!その慢心で死ぬ時もあるんだからね」と言われた。
「分かったよ。心配してくれてありがとね」
お礼を言い、頭を撫でる。
「わ、分かればいいのよ……ってまた子供扱いしないで!」
「はいはいルナは子供じゃないよな」
「それが子供扱いじゃないの!」
無視する。撫でるのをやめそれよりもずっと気になっていた事があったのでルナに聞いてみよう。
「そうだ。この水ってどこから出てんの?」
俺はルナに聞いて見た。さっきの事を根に持っているのか睨んでくるが、きちんと答えてくれる。
「どこからって……呪文を唱えたら出るんだからどこから出てくるなんて普通は考えもしないわよ」
ルナは首を傾げながら俺を見てくる。なるほど、つまり知らないと。まぁ、どこから出てくるなんて普通は分からんよな。
現に俺の手から出る火もどこから出てくるかなんて分からないし。初めは体内の水からか?と考えて1秒でその考えを打ち切った。理由は1つ。1つ魔法を発動したら脱水症状になるわ。次が空気中の水蒸気や水素、酸素を掛け合わせてだすという考えもしたがなら、火がどうやって出るのかが思いつかないため確証がない。
そうそう、さっきのは拘束系の魔法だ。次は回復系の魔法を試す。だが、まさか俺たちが傷を負うなんて事はしない。どっかそこらの動物などでだ。
「回復系の魔法は生き物にも効くんだったよな?」一応ルナに確かめておく。正確には生物だと正された。何が違うんだよ?
「えぇ生物にも効くという事は私たちにも効く事が証明されるわ。だからさっさとなんか捕まえないといけないんだけど……あそこに大毒蜘蛛がいるわ」
「……え?何それ?」
今までの一ヶ月おそらく見た事が無いと思う動物の名前が出てきた。
「……それどんな動物?」
俺はルナに聞いてみる。するとルナがこちらを見て驚いた顔をする。
「え?なに?」
本当に知らないぞ俺は。チワを見るが知らないと顔で言われた。ルナはため息をつき「呆れた」と、俺たちに言った。失礼な!
「あれは動物じゃなくて魔物よ。今まで見たことないの?ならある意味よかったわね。あいつは弱いけど毒を使うから」
あぁ、そういえばそんなことを大分前、武器屋のおっちゃんに言われた気がする。結構始めに、出くわさないからすっかり忘れてた。……魔物?
「ルナ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
ルナに人為的に動物を魔物化する技術があるのかを確かめる。村長には話していないが確かめるだけなら大丈夫だろう。
「今度はなにトキヤ?私が答えられる範囲ならいくらでも話すわよ」
「蜘蛛の魔物がいるなら猪とかの魔物はいるのか?」
これなら猪が人為的に魔物化させらせたという事を勘付かれずに済むだろう。
「猪の魔物?偶にならあるけどこの国でも数えられるほどしか報告は無いわよ。名前は魔猪。でも普通に考えて動物が魔物化なんてあり得ないもの。今の所は長年生きた動物が大気中の魔素を取り込んでいき、限界以上に溜まって魔物化しちゃうと言う説が有力視されているわよ」
あれって魔猪と言うのか。『数えるほどしか』か。俺が戦った魔猪も本当に人為的にさせられたのだろう。……ん?魔素って何?また知らない単語が。
「魔素って何?」
「魔素は大気中のある普通は見えない魔力の素みたいなものよ。詳しくは分からないけど寝ている間に大気中の魔素を吸収して自身の使った魔力を回復していると言われているわ。
それでさっきの矛盾なんだけど、猪は魔法を使わないのにどうして魔物化するんだという意見があってそれを完全否定できないからまだその意見は有力説止まりなの」
なるほどなるほど。どんどん分からなくなってきたから、帰ったらまとめてみよう。
「話が逸れたが大毒蜘蛛はどこにいるんだ?」
本来の目的を思い出した。
「え?あそこに……もうどっか行っちゃったじゃない!トキヤの馬鹿!」
「馬鹿は失礼だろ!仮にも年上の命の恩人じゃなかったっけ⁉︎チワも言ってやれ」
俺は反論した。そしてチワにそう言った。
「そうですよルナさん。トキヤ様には鈍感か朴念仁が適切です」
「チワもか!つか俺は鈍くなんてないぞ!」
チワが援護と思いきや追い討ちをかけてきた。それに対し、またもや俺は反論をするのだが二人同時に
「「それはない(です)!!!」」
はもりで二人に一蹴されたのだった。




