番外編〜グラシアとの出会い〜
最近緻密に、何週間もかけて練りに練った7000文字のプロットを完成させた。しかしいざ物語として約5000文字の1話を書き終えた時、作品は考えたプロットから大きく外れていた。
そして現在、プロットの存在はたまに設定で引っ張ってくる程度にまで離れてしまったそうだ。
結論、お前はその場その場の即興で書け、と言われた気がした。
しかしそれはぐだぐだになりそうなので、1話につき100文字程度、何を書くかをまとめるようにした。
結果、めちゃくちゃ書きやすかった。
「かはっ……つ、疲れ、た……」
「は、はは……まだまだ、だな、トキヤは……がふっ……」
俺とアランは騎士団の修練場でトレーニングを終え、そのまま地面に寝っ転がっていた。
あまりにもきつい訓練に逃げ出したくもなるが、同じパーティメンバーのみんなが強いのに、俺だけが弱いなんて嫌だった。
だから俺はこうして騎士団の稽古に参加することで、己を鍛えていたのだった。
「はっはっはっ、2人とも情けないなー。これくらいで根をあげるとは」
ガルーダさんがそう言って倒れた俺たちのもとにやってくる。ガルーダさん指導の元、俺とアランだけが特別メニューを受けていた。
「ちょ、ガルーダさん……少し手加減を……」
「そうです体長……こんなの、俺たちが潰れてしまう……」
俺たち2人が訓練のメニューについて口出しをする。しかし言わねば俺たちは死ぬ。確実に死ぬ!
「泣くのはいい、泣き言を言うな。強くなりたいと言ったのはお前たちだろう。泣いた分だけ強くなれ」
「「……はい……」」
そして魔法で体力を無理やり回復させられた。鬼だな。
***
「すまんトキヤ、合コンに出てくれないか?」
「え?」
次の日、突然アランに合コンに誘われた。理由を聞くと、ガルーダさん(数合わせ)、ヘプトさん(数合わせ)、アラン(数合わせ)、イケメンの団員(発案者)の男性騎士団員四人と、女性棋士団員四人で合コンをするつもりだったらしい。
だが発案者のイケメン団員が熱を出して寝込んでしまい、当日予定が空いているのが俺だけだったらしい。アランは友達がいないので、声をかけたのも俺だけらしいがそこには突っ込まないでやろう。
「さすがに合コンはないよ。俺まだ15歳だし。て言うか俺まず騎士団員でもないよ?」
「ガルーダさんがお前なら良いって」
「俺良くないよ!? ……それにチワたちがうるさそうだ」
「たのむ、数合わせで良いからさ!」
と、数合わせのアランに言われる。……よく考えたらこの合コン、男側数合わせしかいないじゃないか!
男側やる気誰もないから、悲惨な合コンになりそうだな。その上人数も足りない……。
「……分かったよ。数合わせだからな」
「助かるトキヤ!」
「……はぁ……」
とりあえず宿に着替えに行って来いと言われたので、宿で着替えを済ませる。当然汗をかいたので、体も洗っておいた。
「ご主人様、いったいどちらに?」
「騎士団の人たちにちょっとな」
「……娼館ですか?」
「ちがうわ!? 俺はそんなところには行かない」
だって性病とかありそうだしな。まぁ、20歳を超えるまではそう言うところに行かないって決めてるんだけど。
今回は数合わせで参加する合コンだから、別に何も起こらないだろう。……フラグじゃないぞ。
***
「お、こっちだトキヤ」
アランが俺に手を振る。
「悪い、ハズクたちに理由を説明してたらいろいろ着せられた」
「なるほど、似合ってるぞ」
俺の服装は至ってシンプルだ。ただ、チワとハズクが結構悩みながら俺を着せ替え人形にしていたので、おかしくは無いだろう。
「それで、相手は?」
「同じ騎士団の女性メンバーだ」
……それ、合コンする必要あったか? 同じ団体なんだろ?
「そんな顔をするな。俺だって同じことを思うさ。それに俺たちは全員が顔合わせ。何をどうすればいいのか全くわからん」
「右に同じ」
「私もですね」
「俺もだ」
いつの間にか後ろから現れたヘプトさんとガルーダさんも同じ心境のようだ。
そして数分後、同じ魔法騎士団の女性メンバーたちが来始めた。
そして続々自己紹介をし始める。「男を捕まえにきましたー笑笑」などと発言をする少し年増の女性が印象的だった。それともう一人。
「魔法騎士団副隊長、グラシア・ファイツです〜」
ヘプトさんと同じ立場のグラシアさんという方が最後に会場に到着して自己紹介をした。
その度に男性陣は自己紹介をしなければいけなかったのが苦痛だな。
そして合コンは進んでいく。圧倒的に盛り上がりもないままに。
「あの、トキヤさん?」
「なんですか?」
グラシアさんが突然話しかけてきた。
「失礼ですが、あなたって騎士団にいましたか?」
「……数合わせの冒険者です」
「あ、す、すみません!」
「いえ、別に気にしてませんよ」
***
そして合コンは最悪の空気で進んでいった。
「今日のところはもう解散ということで」
1人の女性がそう切り出し、全員が満場一致で解散となった。そして帰り道、グラシアさんが男の人に声をかけられているところを見つける。
「あの〜、困ります〜」
彼女はお酒を飲んでいたので、足元もおぼつかない。声をかけているのは会話的にナンパ目的だろう。
「あの、うちの彼女をナンパするのやめてもらえませんか?」
「あ? ……んだよ、彼氏持ちかよ」
ナンパ目的の男に適当に嘘をつくと、それを信じたのかそのまま去っていった。
「大丈夫ですか? グラシアさん」
「あ……はいなのです」
焦点もあまり合ってないな。
「それじゃあ家まで送りますよ」
「……おんぶしてください」
「はい? ……まぁ、良いですけど」
俺はそう言ってグラシアさんをおんぶしながら、彼女の案内で家まで送っていく。そして着いたのは……ラブホテルだった。
いや、どう考えてもおかしいだろ!?
「ここが私の家です」
俺はそう言って入っていくグラシアさんを追っかけた。案の定、利用料金を取られていたので絶対に彼女の家ではない。
そして俺も初めて来るところだったので、いつの間にかグラシアさんと同じ部屋に案内されてしまっていた。うそーん。
まぁ、当然何もすることなく夜が明ける。グラシアさんは昨日の出来事を思い出し、時也に頭を何度も下げていた。
「別に気にしてませんよ」
立場的に後のことを考えるだけでそんな気持ちは微塵も起こらなかったからな。
そしていつも泊まっている宿に戻ると、ハズクに「朝帰り! 朝帰り!」と言われ、チワに半泣きされた。
合コンでこんな出会い方をした俺とグラシアさんが、国の名運をかけて共闘するとは、この時は夢にも思わなかった。
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