呼び方
「そうだチワ お腹すいてないか?」
俺とチワは装備屋に行こうとして、昼飯を食べていないことに気がついた。
「え、えっと……少し」
ぐうーー……
「……チワお前最後に飯食ったのいつだ?」
「き、昨日の昼です」
「ほぼ丸一日じゃねーか!良し、今すぐ飯屋に行くぞ。俺が狩って作ってる時間ないし。装備はひとまず後回しだ。」
「はっ、はい!」
飯屋に入った。
二日目に食べに来たところだ。
そういえばここにくるのも久しぶりだな。
相変わらず愛想が悪い店主だ。
料理の腕はピカイチなんだがな。
俺たちはカウンター席に座った。
「チワは何が食べたい?」
「わ、私が こ、こんなところで食事をしてもい、いいんですか?」
「?……当たり前だろ?チワは今まで何を食べてきたんだ?」
「く、草……とか腐りかけの……肉や卵……カビの生えたパンとか……です」
「なんだそりゃ!!!!!」
思わず大声で叫んでしまった。
チワもビクッ!と驚いている。
服もボロボロだったから、ひどい状態だとは思ってはいたがそれ以上だ。
普通の人が食べるものじゃない!
この国の人間至上主義がそこまでひどいとは!
……だがルーラシア帝国もその逆がありふれているのだろう。
この世界じゃこれが普通なのだろうか?
「そうなんだ。じゃあ好きなの頼め。限度は守ってくれよ」
「じゃ、じゃあこれで……」
チワが指をさしたのは、俺が前頼んだ一番安いメニューだった。
「チワそれ一番安いのじゃないか。遠慮なんてせずに好きなの頼め」
「い、いえ。私はこれで十分です。」
「本当にそれでいいんだな?」
「は、はい」
チワが深く頷く。
「すいませーん」
俺も同じものを注文をした。銅貨十枚
…… 2人の間に沈黙が続く。
「あ、あの!」
意外なことにチワから話しかけてきた。
「どうした?」
なんだろう?
「こ、これからなんてお呼びしたらいいですか?」
「……そういえば俺の名前を教えてなかったな。チワの名前だけ一方的に知ってる状態か。俺の名前は内山時也。好きに呼んで構わないよ」
「……トキヤ様……」
小さくチワが呟いた。
「えっ?……と、時也様⁉︎様はやめて、様は!」
なんで様付け?
……犬耳族だから主人には忠実になる遺伝子でもあるのだろうか?
それに俺は中学三年生だし10歳ぐらいの女の子に様付けで呼ばれるのはな。
……だったらなんて呼ばせるんだ?
「いえ。私にとってはトキヤ様以外ありえません!」
「はぁ、じゃあそれでいいよ」
様づけはちょっと気になるがそう呼びたいなら呼ばせよう。
「俺はチワでいいよな?」
「はい!もちろんです!」
「トキヤ様は優しいです。奴隷の私にもこんなに丁寧に接してくださって、私をここまで運んだ人や一度私を買った人には……ムチを打たれましたし……」
チワの目からはポロポロと涙が出ていた。
おそらくその時の怖い思い出を思い出したのだろう。
ギュッ!
「安心しろ。俺はそんなこと絶対しないから」
俺はチワを無意識のうちにチワの頭を俺の胸に入れ、抱きしめて頭を撫でてそう呟いていた。
チワは安心したのか泣き止み
「あ、ありがとう……ございます……」
最後あたりは聞こえなかったがありがとうと言われたのはわかる。
チワは泣くのが恥ずかしかったのか少し頬が赤くなっていた。
「チワは大事な仲間だからな。これからも一緒にいるわけだし、……改めてよろしくな。チワ」
「はっ、はい!こちらこそこれからよろしくお願いします。トキヤ様」
お互いの手を握り握手をした。
そのあと出てきた料理を食べて俺たちは今度こそ装備
屋に向かった。
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銀貨十八枚銅貨三枚から
飯代で銅貨十枚引いて
銀貨十七枚銅貨九十三枚