トキヤと時也〜後半〜
サプラーーーイズ!!!
本来は再来週に投稿する予定でしたが、キリが悪すぎると思うので投稿しました。
短いですがご勘弁ください。来週はお休みです。
総合評価200突破!!!
次は……ブクマ100件突破……ですかね?これからも頑張ります!
トキヤの言った言葉が理解できなかった。
まず、右耳から頭に入って、左耳から出て行って欲しかったかもしれない。
しばらくの間、ぐるぐると頭の中を先程のトキヤの声が駆け巡る。
『ハクちゃんと白殺虎の正体は、雪と父さんだ』って聞こえた。
意味がわからない。理解できない。
…………いや、違った。
意味を分かりたくない。理解したくない。そちらの方が正しい。
俺の本能がそう告げる。頭の中の緊急ベルをジリジリと鳴らしたような感じがした。
頭を鈍器で殴られたような衝撃もあった気もした。
「……理解できない。理解したくない。そんな顔だな。分かるか?さっきの衝撃と今の衝撃。二つが一斉に俺に訪れたんだぞ?……こんな事、知りたく無かった!忘れたかった!なんでこんな事を?そう思うよりも先に、俺は前者の選択をしてしまった。……いや、こっちで正解のはずだ。だってそんな事を知らなかったら、俺はこんな事になっていない!」
トキヤが大声でそう叫ぶが、俺の耳を入っては通り過ぎるばかりで、正直何を言われたのかは余り覚えていない。
だが、『ほらな。俺とお前は同じなんだ』みたいな事を言われた気がした。
ハクちゃん……確か、俺と最初に出会ったチワ以前に共にいたって聞いた。
白殺虎……チワの両親を殺し、ニーナちゃんの両親を殺し、二人の村を壊した獣魔皇の一角。
現在は俺たちに着いてきていて、キュウと一緒に行動をしている。
あぁ、だから一緒にいたのか?いや、ならトキヤも気付いているはずだからそれはない。
気づかずに一緒にいたのだろう。
ハクちゃんや白殺虎が魔物となった自分の肉親だと信じられるか?
いや、信じられるはずがないし、信じられる証拠があったとしても、俺はその証拠も信じない。
だってそれを信じたら、俺の中で何かが壊れるかもしれないからだ。
いや、現に目の前のトキヤは壊れている。
俺が壊れていないのは、あまりに現実味が帯びず、そう信じられる根拠が全くと言ってほどないからだ。
だが、トキヤは俺よりも半年間もここで過ごした。
なら、何が信じられる根拠があったのだろう。
認めたくない。だが、事実として認めなければいけない。
その過度なストレスからトキヤは逃げ出したかった。
『狂化』の効果とトキヤのとっさの強い意思。
この二つが合わさってできたのが、この異世界に来る以前の俺……って事か。
「ほら、どうだ?自分たちの妹をモノのように扱って、あまつさえ実の親を殺そうとしたんだぞ?そんな事実、受け入れられるはずがない!」
トキヤはそう叫ぶ。言いたかったこと、誰かに聞いて欲しかった言葉が溢れ出ている。
「…………そう、か。……確かに俺も堕ちたかもな。だがそれも……半年間もずっと一緒にいたら、だけどな」
俺はそうトキヤに告げる。
「は?……」
トキヤは意味がわからないと言った顔でこちらを見る。
「正直よかったよ。今回は同じ俺でも、半年間の記憶がない、トキヤの劣化版の時也だから言える。……お前は逃げているだけだ。事実から目を逸らすな」
「っ!……時也、お前は何が言いたい?」
俺は同じ自分に対してそうきつく言い放つ。
同じ俺だから、こんなデリケートな問題も遠慮なく言える。
「もう一度言おう。お前は逃げているだけだ。事実から目を逸らすな」
だがらもう一度言う。
「逃げるな。ハクちゃんと白殺虎がもし本当に雪と父さんだとして、その事実から目を逸らす暇があるなら、二人を助けようと動けよ!悪いのはお前か?違う、組織だ!ハヤトだ!なんでこんな事をした?そんな疑問を持ち続けながら、お前は知らない振りをするような奴じゃないだろ!ハクちゃんを……雪をモノの扱い?……そんなわけがない!俺が出会ったばかりのハクちゃんはめちゃくちゃ懐いてくれていたぞ?思えば最初から仲が良かったのも、それのおかげなんじゃないか?」
「っ……」
「心当たりあり、か。それに、お前には約束があるんだろ?それも破るのか?ニーナちゃんが12歳になった時に、冒険者になる許可をあげる約束は?ニーナちゃんの育ての親、ガストさんとの約束は?チワが一人でも生きていけるように育ての親になる約束は?ハズクが一人でも生きていけるように教育する約束は?……確か、ルナとも半年ぐらい前に約束をしたって聞いた。『勝負はまた今度。約束よ』だったか?」
俺は目でトキヤを見る。僅かに動揺しながらも軽く首を縦に振る。
「……お前はみんなとの約束を破るのか?お前は知らないが、記憶を失った俺にあんなにも優しくしてくれたみんなを裏切るのか?……だとしたら、そんな行為は俺が許さない。トキヤが許しても時也が許さない!答えろ!お前は家族があんな目にあっても見て見ぬ振りをし、自分の都合で約束を破るようなクズ野郎だったのか?違うだろ?スキル『偽善者』は持っていても、お前はそこまで本当のクズ野郎じゃないはずだ!」
再びトキヤは首を縦に振る。先ほどよりも少し首の張りが大きかった。
「……お前じゃなきゃダメなんだ。あいつらとの約束はみんな、時也じゃなくてトキヤが結んだ約束なんだ。帰ってこい。戻ってこい。お前が頑張ったのも、努力したのも全部分かるよ。同じ俺なんだ。でも、一度引き受けたなら最後までやり続けろ。それが引き受けた責任だ。……どっちなんだトキヤ。お前は記憶を戻してみんなの元に帰るのか、帰らないのか。決めるのはお前だぞ……トキヤ!」
俺の最後の掛け声で、トキヤは下を向いていた顔を上げる。
その目からは涙が出ていた。
「……帰るよ。帰ってやるよ!……ありがとう時也。俺の背中を押してくれて。俺の記憶がない間、みんなに助けてもらいながら、みんなを助けたんだろ?みんなの事も、ハヤトのことも。……後は全部、俺に任せろ!」
「あぁ、任せた」
……トキヤ、めちゃくちゃ心に響くかっこいい言葉の最中で悪いけど、俺がみんなを助けたことは一回もないんだよ。
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あと、私のもう1つの連載作品の
『普通を求めて転生したら、剣の勇者の息子で杖の勇者になっちゃった〜剣技と魔法で最強〜』
も、是非読んで見てください。