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目覚めて始まる異世界生活〜チートが無くても頑張って生きてみる件〜  作者: どこでもいる小市民
第六章〜主人公記憶喪失編〜
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トキヤのささやかな願い

活動報告更新します。先に謝っておきます。すみません!

誤字報告もありがとうございます。

『いらっしゃいま……トキヤお兄ちゃん!お帰り〜!』と言いながら急に俺の腹に飛び込んできたルナよりも若干幼い金髪の少女を抱きかかえて、俺は改めて『ただいま、ニーナちゃん』と、そう言った。


エドガーさんに大事な話があると伝え、店をとても早くに閉店をしてもらった。あとでまた開店するつもりらしいが。


俺はエドガーさんとニーナちゃんと同じように席に着き、自分が記憶喪失だということを話した。


***


2人は俺の話を口を挟むことなく、しっかりと最後まで聞いてくれた。いや、口を挟む余裕が無かっただけかも知れないが、どっちにしろ最後まで聞いてくれた事には変わらない。最初に口を開いたのはニーナちゃんだ。


「トキヤお兄ちゃんは……トキヤお兄ちゃんなんだよね?」


ニーナちゃんは不安げな表情で可愛らしい瞳をこちらに向けて尋ねてくる。


「うん。でも、ニーナちゃんが知っているトキヤお兄ちゃんとはちょっと違うかな?俺はトキヤお兄ちゃんの劣化版みたいな物だよ。でも、あんまり本質は変わらないと思うけどね。名前は一緒だし呼び方は今まで通りで大丈夫だよ」


「……でも、トキヤお兄ちゃんなんでしょ?……あの約束は……覚えてない……よね?」


約束?……まずいぞ、それってめちゃくちゃ大事なことなんじゃ?このくらいの女の子が言いそうな約束?……雪が昔言っていた『私、お兄ちゃんのお嫁さんになる!』……いや、流石に無いな。


「ごめんニーナちゃん。俺はニーナちゃんのこと、覚えていないんだ……」


俺の言葉を聞き、ニーナちゃんの目に涙が浮かんだ。それもそうだ。こんなに幼い子との約束が忘れられたなんて……。


俺はそっとニーナちゃんに近づき、その目尻の涙をそっと拭き取った。


***


「トキヤ様……実を言うと言いたくは無かったのですが……ニーナには親が居ない。それは話しましたが、親が居ない理由……正確には、育ての親が居ない理由は……白殺虎が殺したからです」


俺は泣き疲れたニーナちゃんをベッドに運び、エドガーさんに水を一杯もらった。エドガーさんは何も言わなかった。そして、現在チワが俺に向けて衝撃の事実を話した。あの白殺虎が……ニーナちゃんの育ての親を殺した。


「チワ……それは本当……なのか?だって、白殺虎はあんなにも大人しかったじゃないか。なんでそんな事を……?」


「私にも分かりません。ですが、トキヤ様は白殺虎を殺したいほど恨んでいました。ただーー」


「ごめん。もう聞きたくない」


嘘、だろ?じゃあ俺は、あんな幼い女の子から育ての親を奪った白殺虎を引き連れて、仲間みたいな関係になっていたのか?


「ただ、トキヤ様。トキヤ様と白殺虎が戦おうとした時、トキヤ様は白殺虎に敵意を抱く事なく近づいたんです。何か理由が、トキヤ様と白殺虎には何か理由があったんじゃありませんか?……今のトキヤ様に聞いても無駄かも知れないのは分かっています。一応、それを伝えたかっただけですので」


チワはそれだけ話してどこかへと言ってしまった。俺は床に座り込み、ただ考えていた。


俺は白殺虎を殺したいほど恨んでいた。その理由は当然分かる。だが、そんな白殺虎と出会った時に、俺は敵意を抱かずに近づいただと?少なくとも、今の俺には信じられない。何か抜けているのか?情報が必要だ。


「チワ、聞きたいことがある」


俺はチワを追いかけた。


***


ガチャっ!


「ルナ、聞きたいことがあるんだけ……ど……わ、悪い」


チワから少し話を聞き、俺は俺が白殺虎の出現場所を見つけたと言うことを聞いた。その時一緒にいたメンバーのルナにも尋ねたいことがあったので、ルナの部屋を訪れた。


そして、ノックするのを忘れて部屋の扉を開けて一刻も早く聞きたいことを聞こうとしたら、ルナはお着替え中だった。


「と、と……トキヤのバカァァァッ!信じられない!ていうか早く閉めてよっ!」


バタン!


俺は急いで扉を閉めた。……ルナって確か13歳になったんだったよな?それにしては胸がほぼ絶壁で全然……まだ成長中だし、あんまり気にすら事無いか。言ったら殺されそうだし。


***


「それで?何か用があったんでしょ?もしかして私の着替えを覗きたかった……なら殺すわよ?」


親指で首を切って下に向けて落とす。


「いや違うよ。聞きたいことがあったんだ」


「そう……なら良いわ。話してみなさいよ」


「あぁ。ーー」









「なるほど……。トキヤ……あなたは意味の無いことは絶対に……とは言い切れないけど基本しないわ。白殺虎はニーナの親を殺した。この事実は確かよ。トキヤはニーナちゃんの事を可愛がっていたし、その仇を目の前にして殺さなかったのは不自然よ」


「うん、そうだね」


「……なら、何か理由があったのよ。仇を取る以上の、重要な何かが。それが何かは私にも分からないわ。でもトキヤ。あなたは身内には甘いけど、敵にはあまり情けをかけなかったわ。つまりトキヤは、白殺虎に何かを感じた。それが何かは分からないけどね。私が言えるのはこれだけよ」


何かを感じた……。白殺虎に味方となりうる何かを。確かに敵対行動なんかも一緒に行動している間は全く起こしていなかった。むしろハクちゃんや俺を率先として守っていたような……。


そうだ。綾羽とハズクにも聞いてみよう。あの2人は元組織のメンバーらしいし、何か情報が聞けるかもしれない。綾羽は白殺虎を操っていたらしいしな。


***


「ふむ……ご主人様が白殺虎と戦いにならなかった理由ですか……?ルナの言う通り、ご主人様自身に何か考えがあったとしか言いようが……」


「あ、もしかしてだけど……あなたは白殺虎が組織の連中、つまり私に操られてるって気づいていたとかはどう?操られているなら白殺虎も被害者……みたいにあなたも感じるんじゃ無いの?」


俺はハズクと綾羽の考えを聞いた。綾羽の意見は確かに納得のいくものだった。もしかしたらそれかもしれないな。全て悪いのは組織。俺はそういった認識をしたのかもしれない。


でも、ニーナちゃんの事を考えると俺がそんな事を考えるとは……有り得なくは無いな。心の何処かで仕方がないって整理をして、減刑みたいな事をしたのかもしれない。だから近づいて尋ねた。


「……そう、なのかもしれないな。分かったよ。2人ともありがとう」


「別に?一応協力関係を結んでいるわけだし?……ところでお腹空いたんだけど。何か無いの?」


綾羽のお腹がグ〜っと鳴らしながらそう言った。


「分かったよ。何か作るから台所借りていいかルナに聞いてくる。無理なら屋台かなんかで一緒に買いに行くよ」


ついでにチワに案内もしてもらうかな?ルナに聞いたらむしろ作ってくれ、だそうだ。それじゃあ遠慮なく何か作らせてもらうかな?


綾羽のお腹の空き具合も考えて、あまり時間が掛かるのはやめておいたほうが良いな。お茶漬けとかカップ麺とかあったら楽なんだけどな。ある訳ないか。この発言がフラグと……ならなかった。


冗談はさておき、何を作ろうかな?……あれでいいか。材料も多分足りている。俺は調理を開始した。


***


料理が一通りできたので、みんなを呼んでひとまずご飯を食べることとなった。綾羽以外の面々は俺が料理をすることが当然みたいな雰囲気を出している……綾羽以外は。


「あなたって料理できたのね?」


綾羽は俺の料理の見た目と匂いを見てヨダレを垂らしながらそう言った。


「人並みにはね」


「はい、トキヤ様の少ない欠点の一つが発動しましたよ」


「料理の腕はプロ級なのに、ご主人様本人に自覚はなく、嫌味に聞こえてしまう事ですね」


「全くその通りよ。実力があるならそれを誇りに思わなきゃ」


俺の意見が3人に一蹴された。こんなの今までで初めてかもしれない。


今回俺が作った料理は柔らかい白パンにチーズ、またマーガリンやバターなどをトッピングしたもの。硬い黒パンは細くスティック状にして、少量の塩、砂糖などをまぶした。食べるとサクサクと音がするので、たまに雪にお菓子みたいな形で提供もした。


あとは豚肉?と思うお肉があったので、豚の生姜焼きみたいな感じのを作った。結構すぐに出来るので重宝している。玉ねぎ?みたいなのも一緒に入れてある。


あとはキャベツ?の千切りとプチトマトを二個添えて、温かい野菜のスープを干し肉から出汁を取った奴ぐらいだ。


綾羽が良い匂いに釣られて恐る恐るフォークを伸ばし、プチトマトを刺して口に持っていく。……別にそれは水洗いしただけで料理してないから変わんないと思うんだけどな。


「……美味しい。……美味しいわ」


綾羽は二言だけそう呟き、あとはひたすら無言で俺の料理を食べ続けた。それを皮切りに、他のみんなも食べだした。


俺も一口……あれ?いつもよりも少し美味しく感じる。……あ、スキル『料理長』のお陰かな?そう思いながら食べていると、綾羽以外の手が止まっている事に気付いた。


「どうしたの?もしかして美味しくなかった?」


「あ、いえ、その……少しだけ料理の味が……」


チワが言いにくそうにそう言った。……もしかして……。後から聞いたがやはり俺の思った通りで、未来の俺の方が料理の腕が良かったらしい。今の俺の料理でも美味しいが、やはり俺が記憶喪失だと頭によぎったのだろう。


俺たちはそんな事がありながらも、普通にご飯を楽しみながらおしゃべりをした。色々な事を聞いた。俺の知らない俺の今までの行動。


あぁ、不覚にも楽しいと思ってしまった。いきなり家族と離れ離れになって異世界転移。しかも記憶喪失をした途中からリロード。


でも、それでも結構充実している。……綾羽の親友の京佳には悪いけど、俺は異世界転移を楽しんでいるよ。この日々がずっと続けば良い。そう願った。


……でも、これが失言……フラグだったのだろうかな?それとも異世界転移をした者の勤めなのか、俺のその願いが叶えられることは無かった。

面白かったら感想、誤字脱字報告、ブクマ、ptお願いします。

あと、私のもう1つの連載作品の

『普通を求めて転生したら、剣の勇者の息子で杖の勇者になっちゃった〜剣技と魔法で最強〜』

も、是非読んで見てください。

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