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#1 タソガレ (4)


「真咲くん、改めて紹介するよ。こっちがウチの長男、逸。で、その双子の・妹、長女の律だ。二人とも真咲くんの二つ年上だよ。それから次女の由。真咲くんの四つ下になるかな。」


 親父が小林少年にオレたちを紹介すると、少年は礼儀正しく深々と頭を下げる。


「小林真咲、中三です。お世話になります。」


「はぁ、こちらこそ…っっって! 親父! まだ事情がさっっっっぱりわかんねーんだけどっ!」


 つられて挨拶はしてみたものの、一番最初の大疑問が解決してなかったんだった。思わず親父に詰め寄ってしまう。


「…まぁまぁいっちゃん。わたし今から急いでご飯の仕度の続きするから、食事しながらゆっくり話聞こうよ。ね、おとーさん。おとーさんも今日はもう仕事終わりでしょ? そのうちおかーさんも帰ってくるんでしょ?」


 にっこり、由が笑ってそう言う。…そーいえば腹減ってるな…。腹が減っては何トカって昔から言うらしいし。…あれ、関係ないか。とにかくメシだ、メシ。メシ食いながらのほうが素直に親父の話聞けそーな気がする。食事は人を精神的にも肉体的にも丸くさせるのだ。おぉ、名言!


 というオレの考えはすぐさま親父に打ち消された。


「いや、すぐ事務所戻らないといけないから食事はいいよ。母さんはもうしばらくしたら帰ってくると思うけど。」


「…だったらもっと順序だてて説明してくれよ。」


 短く溜息をついて律が言う。うん、オレも今それ言おーとした。なんでこの少年ウチで預かるのか、もっと端的に説明できそーなものなのに。親父それでも弁護士か!


「うん、そうだな。」


 親父は頷いてやっと状況を説明し始める。


「父さんの同期で、宮武(みやたけ)っていう弁護士がいるんだが、彼が今依頼を受けているのが、この真咲くんの家なんだ。何でもかなり高額の遺産相続らしくて、一筋縄ではいかないそうだ。下手すると真咲くんの身も危険になりかねないとかで、しばらく小林家から離れることになったんだ。それで、ウチで預かることにした。」


 …親父の話はだいたい理解できた。でも、なんでウチなんだ? 他にも身を寄せる安全なトコ、いくらでもありそーじゃん。


「じゃなんでウチで預かるわけ? 身の安全確保するんだったら、ウチよりもっといいトコあんじゃねぇの?」


 オレの疑問を律がそっくりそのまま親父に尋ねる。


「あぁ、それは…」


 親父が答えようとすると、初めて少年が自分から口を開いた。


「あのっ、…皆さんは、稜星学園に通ってらっしゃるんですよね? 僕、以前から稜星に…憧れてるっていうか通ってみたいと思ってて…それを宮武先生にお話ししたら新藤先生を紹介してくれたんです。学校も近いし皆さん稜星の方だっていうことだったんで…。」


 稜星学園。


 …オレたち双子と由の通っている私立の学校。小等部、中等部、高等部がある、まぁいわゆるエスカレーターな学校だ。けっこう名門な部類に入ると言われているらしいけど…小等部からずっと中にいると、通ってみたいアコガレの学校なんだろーかとちょっと疑問に思ってしまう。まぁ、確かに校風はかなり自由だし、それに惹かれて入ってくる奴は多いみたいだけど。特に中等、高等からの途中編入の奴らはほとんどそうらしい。だから途中編入はかなりな倍率だとかいうウワサ。ホントかどうかは、よくわからない。


「そういうわけだから、逸、律、由、真咲くんを頼むな。じゃ、父さん事務所に戻るから。」


 親父はそう言い残してとっととウチから出て行ってしまった。…残されたオレたちは、しばらくそのままぼーぜんとつっ立ってしまった…。


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