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#1 タソガレ (2)

 栄子ちゃんと別れてオレは家路につく。もう急いで家に帰る必要はなくなってしまったけど、とりあえず帰って律に文句言ってやらなきゃ気が済まない。


 学校からオレんちは歩いて約十五分。商店街を抜けて、閑静な住宅地にさしかかる。蝉の声をBGMに、なるべく陰を探して歩いていると、気のせいかな、誰かにつけられているような感覚。


 振り返る。…誰も、いない。


 さっき栄子ちゃんからストーカーの話聞いたからかな。足音が、聞こえたような気がしたんだけど。


 とりあえずまた歩き始める。…だけどやっぱり、人の気配。


 気にしつつ歩き続ける。まぁ、栄子ちゃんにも言われたようにオレってけっこーモテるから、ストーカーされるのも無理ないけど。でもやっぱそーいう暗い行動はいただけないなぁ。


 そうこう思っているうちに家の前だ。オレはストーカーの不意をついてやろうと、門を開けるふりをして素早く振り返る。


「あ。」


 足音の主がびっくりして目を丸くした状態で硬直している。…見たことのない顔。中学生くらいかな、目がくりくりで、さらさらのショートヘア。黒いTシャツにワンウオッシュのスリムジーンズ。スタイルいいし、かなりかわいい。ふっ、オレも罪作りな男だぜ。こーんなかわいい子をストーカーにさせちまうなんて。


 とりあえずカッコつけて、口元に笑みなんか浮かべて問いかける。


「オレに、何か用?」


 するとその子はおどおどオレに聞き返した。


「あ、あの…新藤(しんどう)さんのお宅は…この辺りですか?」


 なぁんだ。声聞いて、ちょっとがっかり。この子、かわいい顔してるけど男じゃん。男にしちゃ声は高いほうだと思うけど。残念だなぁ…男にしとくのもったいないけど、オレ男にはキョーミないし。カッコつけて損したな。


「この辺り…って、ここだけど。あ、そっか。」


 少年の質問に答えてて気がついた。そうか、そーいうことか。


「ひょっとして、(ゆう)か。由のストーカーか。だったらストーカーなんてそんな陰湿なコトやってないで、堂々と会って言えばいいじゃん。」


 オレは少年の右腕を掴んで引っぱる。そして門を開け、家の敷地に入る。由、というのはオレのかわいい妹だ。まだ五年生だけど、オレに似てモテるので、さっきの話じゃないけどストーカーされてても無理はない。


「あ、あのっ…!」


 何か言いたげな少年を無視して、玄関を開ける。


「おぉーい、由! お客さんだぞー!」


 玄関に入るや否や大声で呼んだオレに、すぐさま由が駆けつける。背中まである長い髪をポニーテールにして、オレンジ色のTシャツにデニムのスカート、その上にクリーム色のエプロンといった格好だ。夕飯の用意してたか。ウチの両親は共働きだから、夕飯の仕度はこうして由がすることも少なくない。


「おかえりなさい、いっちゃん。…お客様って?」


 由はそう言ってオレの後ろにいる少年に目を向ける。…あれ、由、こいつと初対面?


「あ、のぉ…」 


 何か言いたげな少年を無視してオレは由に話を続ける。


「由、さすがはオレの妹だなぁ。こいつ、お前のストーカーらしい。」


「ストー…カぁ?」


「ほら、少年、由に言いたいことあんだろ? 正面きって言っちゃえよ。すっきりするぞ。」


「…あ、の…」


 えぇいはっきりしねぇ奴だな! だんだんイライラしてきた。由は不可解な顔で首かしげてるし。せっかくオレがこんないい設定してやってんのに!


 だぁぁぁっっっ…と叫ぼうかと思ったとき。


「あれぇ、逸、今ごろ帰ってきたとか言う?」


 廊下の向こうから、馬鹿にしたような声がした。オレははっと思い出して急いで靴を脱いで、声のした居間へとダッシュ。


「律! こんのやろぉぉぉぉっ!」


 バタンっ。我ながらすごい勢いで居間のドアを開ける。テレビの前で、オレと瓜二つの顔(まぁオレのほうが背も高いし顔も良いんだけどさ。)がゲームのコントローラー持って、水色と白のボーダーのTシャツにジーンズって姿であぐらかいて座っている。オレを見るなり、奴はにやりと笑った。


「おかえり。」


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