#5 クワダテ (1)
次の日の昼休み。いつものように生徒会室。
「そんなの簡単じゃない。あたしにいい案があるわ。」
ストーカーを捕まえてスッキリしたのか、オレたち三人が昨日行き詰まってしまった捕獲作戦のことを話すと、栄子ちゃんはあっけらかぁんとそう答えた。
「要するに危険な状況でも対応できる女の子がいればいいんでしょ? そーいう女の子、心当たりがある。」
にこにこ、微笑みながらお弁当の卵焼きを口に運ぶ。う〜ん、さすが栄子ちゃん、天使の微笑みってこんな感じ? 惚れ惚れする、よなぁ。
…それはともかく。
「で、いつその作戦実行するの?」
栄子ちゃんが問う。ので、オレと律と智史は顔を見合わせる。昨日はおとり役の件でつまずいてしまったので、それ以上のことは何も話してないんだ。
「…早いほうがいいよな。」
律が呟く。智史も頷く。まぁね、できることなら夏休みに入る前に女の子たちの誤解を解きたい。暇を持て余す夏休みなんて、まっぴらゴメンだ。
「じゃぁ明日は? “おとり”の準備があるから、今日すぐってわけにはいかないけど、明日ならいいよ。」
栄子ちゃんがにこにこ笑顔のままで言う。
「…その彼女、快く協力してくれるかなぁ…?」
急な話だし、ましてや危険な目に遭うのわかってて手伝ってくれる女の子なんて…いるのか? やけに栄子ちゃんは自信満々だけど…。栄子ちゃん、まさかその子の弱み握ってたりする…?
「大丈夫大丈夫。快く、はちょっと難しいかもだけど、なんとかするから。話、進めて?」
栄子ちゃんがそう言うので、オレたちは作戦を練ることにする。
こういう頭を使うことは智史に任せるのが一番。オレと律は智史が口を開くのを待っている。オレたち双子に期待のまなざしで見つめられた智史は、むぅ、と眉間にしわを寄せてちょっと考えて、ポカリスェットを一口飲んでから、話し出す。
「こーいうのはどう? あらかじめ志信ちゃんたちに逸と彼女がどこどこでデートするって噂を流してもらう。あの二人なら他校のネットワークも持ってるから、犯人グループにも噂はすぐ耳に入るだろう。で、逸は彼女を連れて予告どおりその場所でしばらくデートをしてから、別れる。彼女を一人で歩かせて、犯人が狙ってくるのを待つ。犯人が迫ってきたら、後ろからみんなで…。」
がっっ、と智史は腕をすばやく前に回して、捕まえる素振りをする。
おおお〜。オレと律、そして栄子ちゃんは拍手。さすが智史、バッチリじゃん。
「よーし、じゃ、明日、その作戦で犯人捕まえてやる!」
なんか元気になってきた。まだ実行してないけど、なんだか上手くいきそうな気がする。犯人さっさと捕まえて、楽しい夏休みを送るんだっ。
オレが一人犯人確保に燃えて(?)いる横で、自分で作戦を考えておきながら智史はまだ少し不安そうだ。
「…栄子ちゃん、ほんっとにその彼女、おとり役引き受けてくれるかな…。」
「大丈夫よ大石くん。あたしに任せてって。」
栄子ちゃんが胸を張って言い切るので、智史も安心したのか、微笑んで頷く。
「…そんな適任、栄子の友達にいるっけ…?」
その傍らで律は一人首をかしげていた…。