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#4 マチブセ (6)


「携帯! 由の携帯!」


 律が叫ぶ。オレは急いで由の携帯に電話しようと自分の携帯を開く。


 そのときだ。


「ただいまぁ〜。いっちゃぁん、智史くん来てるよぉ〜。」


「お邪魔しまーす…っと、あれ、二人とも、どした?」


 玄関から買い物袋を持った由と智史がのほほん、とやってきた。オレと律はへにゃへにゃっと床に座り込む…。なんだよぉう…心配したのにぃ…。


「どうしても今日はエビフライが食べたくなっちゃって…スーパー寄ってきたの。そしたらそこで智史くんに会ったから、荷物持ってもらっちゃった。」


 無邪気に笑う由。…まぁ、何事もなくてよかったけど…。


「ちょっと帰り遅かったから…由も逸のストーカーにやられてんじゃないかと思ってさ…。」


 律が短くため息をついて言う。うんうん、とオレも頷く。


「あぁ、その話、わたしのクラスの女の子たちもしてたよ。いっちゃんと一緒に帰った女の子たちが狙われてるんでしょ?」


「だからおれが一緒に帰ってきたってのもある。ま、それでなくても寄ろうと思ってたんだけどね。」


 由はそう言って智史から買い物袋を受け取り、冷蔵庫に入れるため台所へと向かう。智史はオレたちと一緒に居間のテーブルを囲む。


「ちょっと、気になった点があってさ。」


 智史が話し始める。なに? とオレたち双子は身を乗り出して智史の話を聞く。


「…昼の志信ちゃんたちの話で、逸、おかしいなと思わなかった?」


「…? うーんと?」


 首をかしげる。と、智史が続ける。


「理奈ちゃんと聖子ちゃんとのぞみちゃん…て言ったっけ? 三人とも、それぞれバラバラになった後に一人ずつ襲われてるんだよな? 逸、三人の住所わかる?」


「…はっきりは知らないけど…、理奈ちゃんはS市から来てるはずだよ。聖子ちゃんはT駅の近くって言ってたと思う。のぞみちゃんは…確かW小学校の出身…」


「ほんっとにみんな見事にバラバラじゃん。」


 律が口を挟む。と、智史が「それなんだよ」と頷く。


「それだけバラバラな帰り道にみんながみんな襲われてるってことは…犯人は一人じゃない、ってことじゃないか?」


 …犯人は、一人じゃない?


 智史の推理に驚くけど、言われてみればその通りだ。S市・T駅・W小学校…地図で見ると、恐らく綺麗に大きなトライアングルを作るんじゃないかって思えるくらいの距離。しかもオレたちが遊んでいたカラオケはちょうどその三角形の重心に当たるくらいの位置で…。そこから例えば理奈ちゃんを襲った後、聖子ちゃんを追いかけて襲い、さらにのぞみちゃんを追いかけて…なんて、ちょっと不可能だ。


 ぞくっ。なんだか急に、悪寒が走った。夏なのに…。


 犯人は、一人じゃない。


「…やっぱ捕まえないと気が済まないな…。」


 律が舌打ちする。


「さっきさ、栄子から電話あったじゃん。」


 突然律は今までの話からちょっと離れたかと思うようなことを言う。うん、確かにさっき、栄子ちゃんと電話で話してた。頷くと、律は続ける。


「栄子のストーカー、栄子の彼氏が捕まえたって。」


 え? マジで? オレと智史は顔を見合わせる。


「栄子がいつもストーカーされてる駅から、栄子を一人で歩かせて、彼氏が後をこっそりつけてたら…案の定、ストーカーが現れて、確保。」


「それって前に律が言ってた捕獲作戦? 栄子ちゃんの彼氏、協力してくれたんだ。」


 智史がそう言ったのを聞いて思い出す。そういえばそんなこと言ってた…ってか、その作戦参加したいと思ってたのにぃ。


「…どんなヤツだったって?」


「…近所の小学生だったらしいよ。由と同い年くらいだって。とりあえず止めるように言ったら、泣く泣く承諾したって。」


 小学生…。ったく…最近のガキは…。


「だからさ、逸も捕獲作戦やりゃいいんだよ。一人でもとっ捕まえれば何らかの解決に繋がらないかなぁ。」


「それだ!」


 思わず立ち上がって叫んでしまった。その手だよ! 捕まえて、オレが話せば、オレのファンだもん、オレの言うこと聞いてくれる…かも。


「…でもさ。」


 オレが一人で盛り上がってると、智史がぽそっと口を挟んだ。


「…栄子ちゃんの場合と違って、狙われてるのは逸じゃなくて逸と一緒にいた女の子だろ…? おとりになってくれる女の子なんて、いるかな…。」


 そうだ…噂が流れてしまっている今、狙われてるのわかっててオレと一緒に歩いてくれる女の子なんていないかも…。唯一協力してくれてる志信ちゃんと比呂美ちゃんだって、ただでさえ情報仕入れてもらってるし、それ以上危険な目にあわせられないし…。あとは栄子ちゃんと由ぐらいしか…。いや、この二人も危ない目にあわせたくない…。


 うー…。行き詰まってしまった。智史に助けを求める目を向けてみても、智史もむむぅと唸ってしまっている。


 …いい考えだと思ったんだけど…なぁ。





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