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#3 ヒトカゲ (1)


 次の日。昼休み、いつものように生徒会室にたどり着き、ドア開けてーと頼むが、返事がない。あれ、珍しく今日はオレが一番乗り?


 仕方ないなぁ…。オレは女の子たちからのプレゼントを片手に抱え直して、ポケットに入っているはずの生徒会室の鍵を探す。…いつも誰かが先に来ているから、滅多にこの鍵使わないんだよなぁ…。見当たらない。


 もたもたしてると後ろから手が伸びてきた。鍵穴に鍵を挿す。振り返ると智史だった。


「わりぃ。オレが一番なんて、珍しいよなぁ。」


「…律と栄子ちゃんまだなんだ。真咲は?」


 ドアを開けて、中に入る。…心なしか、智史の表情が硬い? 気のせいかな…。


「あぁ、真咲、今日は志信ちゃんたちに校内案内してもらうんだってさ。」


 ふうん、と言った智史の返事の後に、短い溜息が混じった。…やっぱり、なんか智史、いつもと違う。


 荷物を置いていつもの席に座って、智史を眺める。窓から差し込む光の中、逆光になっているからというだけじゃなく、暗い感じ…?


「…なんかあった?」


 あくまで軽く、聞いてみる。十年以上も見てきた顔だ。なんかあったに決まっているのだが、ここはさらりと聞いたほうがいい。


「…ん、ちょっと。」


 智史が少し笑ってみせる。そしてポケットから一通の封筒…手紙?を出しながら、話し始める。


「昨日さ、帰り、誰かにつけられてるような気がするって言ったじゃん。」


「うん。…ってまさか…」


「…違うかもしれないけどさ。」


 智史はオレにその封筒を差し出す。オレはその薄いピンク色の封筒の中に入っていた一枚の便箋を取り出し、目を通す。


 そこにはたった一行、女の子っぽい字で、短い文章が書かれていた。




『あなたをずっとみています』




「…ストーカー…?」


 オレがつぶやくと、智史がうなる。


「うー…ん。昨日の視線とは別かもしれないけど…。これ、今朝郵便受けに入ってたんだよ。ほら、封筒。差出人も書いてないけど、宛て先の住所も書いてない。てことは、郵便じゃなくて、直接入れたってことだよな。」


 言われて封筒を見てみる。表には『大石智史様』の宛て名だけしか書いていない。切手も貼ってないし、智史の言う通り、直で郵便受けに入れたんだろう。


「こーいうこと慣れてなくてさ。女の子から手紙とかはもらうけど、みんな直接もらったり、直接じゃなくてもちゃんと差出人書いてあったりしたから…どう対処していいのかわかんなくって…。逸ならわかるかな、って。」


「わかるかよ、オレだってストーカーには慣れてないし。てか慣れてたくねーよ。」


 真顔で言う智史にうなだれてしまった。ストーカー慣れしてる奴なんているのか? いねぇよフツー。そんなことに慣れたくない…。


「うー…ん、どう対処したら、ってもなぁ…。」


 オレと智史はそのピンクの手紙を眺めたまま、しばらく沈黙。その沈黙を破ったドアの開く音。律と栄子ちゃんだ。


「うわ、今日は逸のほうが早かったんだ。なんかくやしいっ。」


「仕方ないじゃない律が調子に乗って怪我なんかするから…。」


「怪我ってほどの怪我じゃないけど…あれ、どした二人とも。」


 自分の右腕に貼られたガーゼを一瞥して、律がオレたち二人の顔を見る。なんか変な感じを察したらしい。


「律、怪我って、どしたの?」


 智史が話を逸らせようとしたのか、律の問いを別の問いで返す。律はあぁこれ、と右腕を上げてみせる。


「さっきの時間、体育で幅跳びやっててさ。奥井が新記録出してみろってゆーからマジになって跳んだらずさぁぁっっってすりむいちまった。」


「奥井サンの挑発になんか乗るからよ。で、保健室行ってて遅くなったってわけ。」


 奥井っていうのは律のクラスの女子体育の先生。律を気に入っているのかいないのか、よくそーいう注文を出されると前々から律は愚痴っている。


「…で、何? なんかあったの?」


 智史の話逸らせよう作戦は失敗に終わる。ま、そりゃそーだろ。律だってオレと同じ、伊達に十年以上智史とつるんでいるわけじゃない。智史の表情、見逃すわけはない。


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