俺のヒロイン力が試されようとしている…ッ!
例えば武装したテロリストとかが授業中に乱入してくるとするじゃん?
「や、やめて下さい…嫌ぁ!」
で、クラスのアイドル的な女子が案の定捕まっちゃうじゃん?
「おい、星宮を離せ」
するとリーダ的存在のイケメン君が勇敢にも立ち向かおうとするじゃん?
「あん?テメェ、自分の立場分かってんのか、あぁん?」
「ぐぁっ?!」
「緋色くん!」
で、案の定返り討ちにあっちゃうんだけど、その後の展開としては
「すみません、お手洗いに行きたいんですけど」
唐突にクラスに一人はいる陰キャラ生徒がしゃしゃり出て
「んだよ、行かせるわけねえだろ。へへっそうだお前、みっともなくその場で漏らしてみろ−–なッ?!」
隠された実力で犯人グループをあっちゅう間にボコボコにしてくれたりするのが定番じゃん?
「チッ……油断した」
「へ、俺らに舐めた態度とったらどうなるか、思い知らせてやんよ。おら、こっちに来い」
「痛ッ、引っ張らないで」
でも完全な無力化に失敗して一度はピンチに陥る場面が出てくるじゃん?実は最強系の人が動けない間に犯人はアイドル人質に屋上へ逃げ出すじゃん?
「生意気な学生諸君、一つゲームをしよう。
悪いがこの学校には爆弾を仕掛けさせてもらった。臆病にも外へ逃げ出した奴がいたら全て爆発して、お前らは全員瓦礫の餌食か爆破に巻き込まれて死ぬことになるだろう。
助かりたければ屋上まで上がって来い。建物の上階になるにつれてトラップや銃を持った俺の仲間がうろついてるから充分注意しろよ。
無事に屋上へ来られた生徒がいれば俺は無条件でお縄に着いてやろう。だがそう簡単に上手くいくと思うなよ?
期限はそうだな、この人質から衣服を一時間ごとに1枚剥ぎ取っていく。娘が哀れもない姿になった時が……お前らの最期だ。
なんて言ってる間に、ほーら。早速一枚頂いたぞー。無能な救出部隊もちったぁ気張って行かねえと全員助けられてもこの娘だけ立ち直れなくなるなっちまうぜ〜?あー可哀想に。
では諸君の健闘を祈る。……言い忘れていたが、降伏するなら上がってくる生徒の妨害をしてみな。少しでも俺に働きを認められた奴は、コトがすんだら命と立場を保証してやるよ。
仲間から裏切者が出ないことを精々祈んなさいや」
とかテロリスト集団の頭目らしき人質を取った人物が校内放送で命がけの脱出ゲームの開催を宣言するじゃん?
ヘリコプターでカメラマンが固唾を飲んで人質の行方を見守る中で救出部隊は何やらまごついてて身動きが取れない状況にあったりしてるじゃん?
「ここはあいつに頼るしか無い…か。頼む、無事にみんなを救い出してくれよ」
何やら訳知り顔の刑事は苦虫を噛み潰したように険しい表情で、とある生徒にこの場の運命を委ねたりするじゃん?
でも運命は、数時間もしないうちに思わぬ展開を迎えるのであったッ!
三時間後、人質の女生徒が靴下を剥ぎ取られて少し経過した後にヘリに乗った報道レポーターは言った。
「あっと、これはどう言う事でしょうか?
生徒が、生徒達が玄関口から次々と脱出しています。爆弾は一体どうなってしまったのでしょうか?」
「なっ?!……にィ…!」
驚愕の表情で頭目の人が屋上フェンスまで駆け寄ると、既に何にもの生徒がワラワラと広いグランドを駆け抜けて、学校を囲う警察に救助されてるし
「ボ、ボス!ヤバイですよこの学校!早く逃げ–− ギャーッ!」
「ど、どうしたジェイムズ!応答しろ、ジェイムーズ!」
「何だこいつら、学生の動きじゃ……う、うわぁぁあー!」
「ジェイコブッ?! くそ、一体何が起きている?」
もはやお約束と言うべきか、流れ作業の様にテロリスト側の人たちが倒されて頭目は追い詰められていく。
ガンガンと、屋上へ繋がる鉄扉の叩く音を聞いて、頭目は人質の女生徒を連れてフェンス際まで後退して、直後に吹き飛んだ扉。
「大丈夫か!」
鉄扉の先から現れたのは勇者っぽい剣を持った男に
「あちゃー。あいつこんな状況でも居眠りしそうだし」
だけでなく、怪しげなローブを纏った女や
「まあ何時もの事とはいえ、もう少し緊張感を持ってもらいたいもんだね」
「でもあの状態が一番安心ってのが笑えない冗談だわ」
機械の鎧を身に纏った男女に
「オーホッホッホ! 幻惑魔法、【誤識結界】。設置完了ですわ!」
「バーロー!どっからどう見ても科学力じゃねえか」
魔女っぽい帽子をかぶった女や、黒いボディスーツを着た男も
「忍法、他力本願の術ッ!」
「いや忍者しろよ」
「えー、それ言っちゃう?終わった後の事後処理は全部私の忍法に頼りきりなあなたがそれ言っちゃう?」
「忍法、かっこ薬の力、だけどな。ったく、どいつもこいつも科学力でゴリ押しし過ぎだろ。みろよ、俺が買収した報道レポートが全部水の泡じゃねえか。明日の特ダネが無意味に動物園のパンダ特集になっちまったぜ」
白衣の女にスーツの男、
他にもミリタリースーツの者やパンツ一丁のマッチョマンなど、統一感のない服装した生徒達がゾロゾロと屋上へ勢揃いしてる。
「な、なんなんだよ、お前らは。一体、何者なんだ!」
「何者かって聞かれても……ねぇ?」
「特殊部隊所属に極秘研究所の職員や世界を影で支配する闇の組織幹部に大手企業の御曹司、はともかくとして。元勇者やその仲間とか霊能力者に前世の記憶持ちなんて言われても貴方、信じられる?」
「な、なんだそれは、一体なんの話をしている?」
「ほらね。言っても分からないでしょ」
「こ、こんなふざけた連中に俺の野望を邪魔されるなど、認めん!俺は認めんぞ!
そ、そうだ!この女、この女がどうなっても良いのか?」
人質の少女に拳銃を突きつけて脅す頭目を呆れた目で見つめる一行。不思議なことに、誰も彼女を心配する生徒はこの場には居ない。
なぜなら……
「おい、テメェ。一人でも上がってこれたら無条件で捕まるって約束はどうした」
「は?俺の銃ガッ?!」
人質の少女にいつの間にか銃を奪われていた頭目は、いつの間にか背後にいた白衣の男に怪しげな薬を打ち込まれ、あっという間に意識を失った。
「……はっ?!私は一体何を?
え?なんで銃なんて持って」
「ちょ、落ち着け!」
「え?きゃっ!」
勇者っぽい人に押し倒される人質だった女子生徒。か、顔が近いんですけど。
「ななな、なんでそんなとこ触るんだよぉ……」
「あ、ごめっ、ぶふぉ!」
そして発動するラッキースケベのチカラで両の胸をもまれてしまう彼女。意外と初心な勇者クンはフリーズ。少女は顔を真っ赤にして涙目で抗議する!
「はいはい、さっさと退く。大丈夫?怪我はない?」
「うん、ありがとう花咲里ちゃん」
「災難だったわね。とりあえずその銃さっさと博士にでも渡しときなさい」
「うん、そうするね」
チラリと少女が横目に初心な勇者を見ると、彼は顔を真っ赤にしてこちらを見ていて、その姿に顔がかっと赤くなった。またしても彼らの距離は少し縮まったということだろうか?ワカラナイ。いや、あってたまる者か。
人質の少女、もとい、俺は顔をパシパシと叩いたのち、ため息を吐いて拳銃をクラスメートの一人に預けるのであった。
教室にテロリストあらわる、ね。前世はこんな妄想したことあった、ような気もするが、何か違うくね?
「夕ちゃんが無事でよかったよ」
「よっ!クラスのヒーロ!」
「いや、ヒロイン?」
「なんにせよ、お手柄じゃないか」
「え、また私の手柄として隠れ蓑にされるの?無理があるでしょ!」
クラスのみんなに労いの言葉を駆けられながら、事件解決の一番の立役者にされそうなことに抗議する俺。
つか、何か違うと思ったらヒロインは俺かよ!
一体、どうしてこうなった?
「まあ今回は全員派手に立ち回り過ぎたから全力でもみ消す予定だし、大丈夫っしょ」
「もうやだ、このクラス……」
「そういうあなたも大概だと思うけど」
ここは私立エリート学園。ここの1年E組の生徒は、学生時代にありがちな妄想の世界で起きる事件によく巻き込まれる。ただし、妄想と違うのは、所属する生徒が一人を除いて全員特殊過ぎて事件があっさり解決してしまうような、そんな所だろう。
これは優秀すぎる落ちこぼれ教室の生徒が繰り広げるドタバタな毎日を綴った物語……
「まともな生徒は私だけかよ」
「いや、お前が一番おかしいから!」
否、落ちこぼれを装った生徒が集うエキスパート教室に通う生徒たちの華麗なる英雄列伝である。
よう実みたいな作品をもっとみたいでござるるる~。