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星降る夜には願い事を  作者: 竜吉
9/17

第九話〜困ってる割には贅沢っすね〜

今回も楽しみながら書くことが出来ました^ ^


楽しんで頂ければ幸いです♬

 僕は一体、どれ位の時間眠っていたのだろう。体感的には数時間と言ったところか、とても心地が良い睡眠だった。


 目が覚めると、僕はベッドの上にいた。見慣れた天井、懐かしい自分の部屋の匂い。寝返りを打つと、見覚えのあるポスターが壁に飾ってあった。


「そうか……全部夢だったのか……」


 僕は起き上がり、窓の外を見る。もう夕暮れなのか、空が赤く染まっている。それと、庭でトレーニングをしている親子が見えた。


 どうやら格闘技のトレーニングをしているらしい。父親のパンチを子供が受ける。今度は子供が父親を蹴り、父親がそれを受ける。初めはゆっくり動いていたが、徐々に早くなり、遠目では追いきれなくなった。


 僕はそれを見て懐かしく思う。


 僕も高校を卒業して家を出る迄は、同じ様に父に(しご)かれた。『文武両道』を家訓にしていた父の教育は、とても厳しく、辛いものだった。


 夢で見た、あの草原から脱出した時の呼吸法も、基礎中の基礎として叩き込まれた。それを僕は忘れていた。今の風景を見て、僕は思い出した。父から叩き込まれた事を全て、思い出した。久しぶりに父と組手がしたくなった。


「今なら、勝てるかな?」


 窓の外を見ながら僕は呟く。鈍った体では勝てるはずも無いのに。


『組手がしたいなら相手をするが?』


 不意に父の声が頭に響く。窓の外を見ると、子供がいなくなり、父親だけが立っていた。こちらを見て笑っている。


「是非」


 僕はそう言って部屋から出た。


 玄関の扉を開けると、眩しい光に目が眩む。僕は咄嗟に目を閉た。


「……さま……し……さま‼︎」


「し……す‼︎……だ……っすか‼︎」


 遠くから声が聞こえる。どこかで聞いた事のある声。何処だったかよく思い出せない。


「瞬様‼︎ 起きて下さい‼︎」


「しっかりするっす‼︎」


 僕はゆっくりと目を開ける。そこには女性が二人、僕の顔を覗き込んでいた。


「良かった……目を覚まされましたか」


「大丈夫っすか⁉︎」


 そうだ。思い出した。この二人は夢で見た。僕の体がミイラの様に枯れ、意識が遠のいて……


 僕は飛び起きた。急いで体を確認する。ミイラになっていた部分は元通りに戻り、痛みや疲労感も無くなっていた。


「僕は……生きてる?」


「本当にもう死んだかと思ったっす‼︎」


「もう駄目かと思いました……」


 僕は辺りを見渡した。見知らぬ部屋のベッドに寝ていた。ライラとミルモは目を潤ませて僕を見ている。


「ここは? 僕は何で生きているんだ?」


「ここは私の国で、私の城にある客室です」


「凄いっすよ‼︎ この国‼︎ この部屋‼︎ あちこち金ピカで、困ってる割に贅沢っすね‼︎」


 確かに。あちこちに金の装飾があり、高価そうな物がゴロゴロとある。だがまぁ、金銭に困っている訳では無いのだが、ミルモの言いたい事は分かる気がする。


「僕の体はどうなっているんだ?」


「これのおかげです」


 ライラは小瓶を取り出した。中には液体の様な物が入っている。


「それは?」


「これは『命の水』と言って、生きている者の怪我や病気が、立ち所に治る水です」


「そんな便利な物があるんだな」


「でも欠点があります。この水は文字通り、()()()の命で出来ています。飲み過ぎてしまうと、飲んだ者の命が溢れて若返ったり、最悪産まれる前まで戻ってしまいます」


「そうか。あまり多用は出来そうに無いな」


「そうです。しかも数年に数滴しか取れません。この瓶に入っている分で、ざっと150年分って所でしょうか」


「そんな貴重な物を僕に飲ませてくれたのか……ありがとう」


 僕は頭を下げて礼を言った。


「お礼を言うのは私の方です‼︎ 自分の命を顧みず、私を助けて下さいました。本当にありがとうございました」


 僕は恥ずかしくなり、下を向いた。


「でもその水を飲んでも一向に目が覚めなかったっす。なのでライラが焦って多少飲ませ過ぎたかもしれないっすね」


「なに?」


 僕は立ち上がった。視点が低い。これはまさかと思い、鏡の前に立ち、自分の姿を見る。


「これって……」


「申し訳ございません‼︎ 一滴で効果が出なかったので……

その……」


「まあ、可愛くて良いんじゃないっすか? 身長も丁度私と同じっす」


 『命の水』とやらを飲み過ぎたせいで、僕はどうやら10歳ほど若返ったらしい。鏡に写った姿を見ると、13歳位か。


「本当に申し訳ございません‼︎」


「良いよ。命が助かった代償としては軽い位だ。それよりも、服を貸してくれないか?」


 両手を上げ、ブカブカになった服を見せながら言った。


「はい‼︎ 直ぐに見繕って来ます‼︎」


 ライラは足早に部屋から出て行った。


「ミルモ、聞きたい事がある」


「何っすか?」


「僕をどうやって運んだ?」


「あぁ、それなら私が担いだっす‼︎ ほぼ骨と皮だけだったっすからね。軽かったっす」


「そうか。お前にも迷惑をかけたな。ありがとう」


 ミルモは照れながら頭をかいた。


 僕はもう一度鏡を見る。寝ている間に見た風景を思い出す。そこに見えた子供の姿にそっくりだ。……そうか……あれは僕だったのか。


「お待たせしました‼︎」


 息を切らせて、ライラが勢いよく部屋に入ってくる。僕は礼を言って服を着替えた。


「そう言えば、さっき『命の水』の説明をしてくれた時、()()()と言ったな?」


「ええ、説明がまだでしたよね。私の国は『ユグドラシル』と言う木の上にあります。と、言うかこの木が国そのものです。まだ若い木ですけど」


「草原で、ライラが指差した方向に山があったの覚えてるっすか?」


「あぁ。確かそこを目印に走った」


「あの山に見えたものが、この木っす」


「……」


 相当でかい木だな。その木の中に国があり、その国の中にこの部屋があるのか。スケールが大き過ぎて全体が掴めない。


「さ、そろそろお腹が空きませんか? 食事を済ませた後、色々とご説明致します」


「そうだな」


「ご馳走してくれるっすか⁉︎」


「えぇ、もちろんです。では参りましょう」


 僕達はライラの後について部屋から出た。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます^ - ^

次回から徐々にバトルパートに持って行こうかと思います♬


次回も読んで頂ければ幸いです。

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