第六話 〜この草原は抜けられないっす‼︎〜
第六話目。いよいよ異世界へ突入しました。
立ちはだかる難関を乗り越える事が出来るのでしょうか⁉︎
最後まで読んで頂ければ嬉しいです^ ^
僕達が包まれていた光。これは一種の移動装置らしい。ライラが「到着する」と言った直後の事だ。僕達を包んでいた光が徐々に消え、辺りの景色が見えた。
どうやら僕達は広大な草原の中に立っているようだ。草の一本一本が僕の腰辺りまで伸び、見渡す限り続いている。
どれ位の時間立っていただろう。この草原の美しさに、僕は見惚れてしまった。
僕達が立っている場所から円を描くように草が倒れていた。恐らくはあの光の範囲分倒れているのだろう。直径五メートル、六メートル位か。あまり大きく無かった。
空を見上げると青空が見える。太陽もあり、雲もある。僕がいた世界とは別の世界と言われて、すぐには理解出来ない。
太陽は丁度天頂に差し掛かった頃のようだ。日差しが眩しい。しかし、気温はそれ程高くない。時折風が吹いた。とても爽やかで心地良かった。
「はぁ〜……少々マズイ所に着いてしまいました」
ライラが頬に手を当てて溜息交じりに言った。このポーズをすると言う事は、本当に困っているのだろう。
「何がマズイっすか?」
ミルモが不思議そうに尋ねる。深緑色の草原。爽やかな風。草が風になびき風の波が起きる。一見して穏やかな所のようだが。
「この草原はマズイです」
「だから、何がマズイっすか⁉︎ とても綺麗な場所じゃないっすか」
ミルモも僕と同じ意見らしい。
「説明……しましょうか?」
何だその含みを持った言い方は。そんなにヤバイ場所なのか?
「あぁ。頼む」
「私も知りたいっす‼︎」
僕達が説明を求めると、ライラは手を下ろした。僕達を真剣な眼差しで見つめ、話し出した。
「この草原の名は〈枯れ果ての草原〉と言います。見た目は綺麗な草原ですが、動くと命を落とします」
動くと死ぬ? どういう事だ? 結論から言わず、順を追って説明してくれ。仕方が無いので、僕が疑問を投げかける。
「動くと死ぬ? 一体どういう事だ?」
「見ていて下さい」
そう言うと、彼女は倒れていない草へ近づいた。草の一本を指で弾いた。草に向かってデコピンをする程度に。草と指が触れる瞬間、ライラが顔を歪めた。
「ご覧下さい。これが〈枯れ果ての草原〉の由来です」
ライラは、草に触れた指を立てて僕達に見せた。
「どうしたんっすか……?」
「おい。大丈夫なのか……それ」
僕達はライラの指を見て息を飲んだ。
まるでミイラの指。ゴツゴツと関節の位置がわかる程痩せている。皮はその骨に張り付いていた。
「ご覧の通り……」
ライラが話し出した。
「生き物に触れると血液を根こそぎ吸収します。触れた所から針のような物で刺し、そこから吸うようです。実際に触れたのは初めてなので知りませんでした」
「そんな事より指‼︎ 指は大丈夫っすか⁉︎」
ミルモはライラに駆け寄り心配そうに指を見た。
「こんなにカラカラに干からびて……私達が説明して欲しいって言ったせいっすよね。ごめんなさいっす」
ミルモが頭を下げて謝罪した。僕は「すまない」と小声で言った。聞こえるか聞こえないかの音量で。
「お二人とも、ご心配なさらず。血液が通えばまた元通り治りますから」
ライラはミルモの頭を撫でながら言った。ミルモは顔を上げてライラを見た。ライラはにっこりと笑って「大丈夫」と言った。
人体構造上大丈夫なのか? 僕は人体に特別詳しい訳ではない。一部分がミイラ化して、血液が通えば元に戻るのか?
いや、これもまた僕の常識の中で考えてしまっている。ここは僕の世界とは別世界。ヴァルハラなのだ。僕の常識は一旦全て捨て去ろう。ライラが大丈夫と言えば大丈夫なのだろう。
「ほら、元通りになりました」
「本当っす⁉︎ ライラ凄いっすね⁉︎」
どうやら本当に大丈夫らしい。僕は心のどこかで少し安心したようだ。気持ちが軽くなったのがわかった。
「おわかり頂けましたか? この草原がどれだけマズイのか。どうしてマズイか」
「あぁ。良くわかった」
「私もわかったっす」
「良かった」
そう言って彼女はニッコリと笑った。
「でも本当にマズイっすね」
ミルモが真剣な顔で辺りを見渡す。
「これ全部さっきと同じ草っすよね?見た感じ、地の果てまで続いているっす」
僕もついさっき確認した。地平線の彼方までこの草原は続いている。この草原に生えている草一本のスペックも高い。
吸収量、絶大。
吸収スピード、非常に早い。
これが見える範囲に敷き詰められている。さて、どうしたものか……
草原の範囲を確認していた時、僕の荷物を見つけた。僕は荷物を手に取り、確認する。
ランタン一個、望遠鏡一台、三脚一本、ライター一個、ハサミ一本、水一リットル、後は絆創膏と僕の服位か。
「これ、ダッシュしたら何とか行けるレベルっすか?」
「さぁ? どうでしょう? 試されますか?」
「いや……遠慮するっす」
と、ミルモとライラが話しているのを横目に、僕はシャツを脱いだ。
「ど、どうしたっすか⁉︎ そのまま走るっすか⁉︎」
「それは勇気では無く無謀ですよ。落ち着いて下さい」
僕は至って冷静だ。光に包まれていた時は少々取り乱していたが、覚悟を決めた今、頭は冷静を保っている。
「僕なら大丈夫。少し確認したい事があるだけだ」
そう二人に言って、草へ歩み寄りシャツで草を叩いた。予想通り、湿っていたシャツの水分が一気に吸われ、カラカラに乾いた。
次にハサミで一本草を切り、水を掛けた。草が濡れ、吸収はされなかった。
「ライラ。これから僕達はどの方角に進めば良い?」
「……」
ライラは答えずに放心状態で僕を見ている。一体どうした?
「ライラ?」
「あっ‼︎ はい‼︎ 申し訳ございません‼︎」
「どうかしたか? やはりさっきのが応えているのか?」
ライラが首を横に激しく降った。
「いえ……そういう訳では……」
僕は首を傾げた。
「どうした?」
「いや……その……恥ずかしいのですが……」
「?」
「『良い筋肉だなぁ』と思いまして……」
「……」
ライラはそう言うと、顔を赤くして俯いた。
「確かに。服の上からじゃわかんなかったっすけど、細身の癖に良く締まってる良い筋肉っすね」
僕の筋肉の話はもういい。どっちの方角に向かうのかを教えろ。僕はそう思いながら乾いたシャツを急いで着た。
「……どっちの方角に進むのか教えてくれるか?」
僕はライラにもう一度尋ねた。
「はい‼︎ ええっと……」
ライラはキョロキョロと辺りを見渡す。
「あちらですね」
ライラが指を指す方向を見ると、小高い山があった。
「あの山の麓に私達の国があります。先ずはそちらに向かいたいのですが……」
向かう方向はわかった。
「ではそのライラの国に行くとしよう」
「どうやって行くっすか⁉︎ この草原は抜けられないっす⁉︎」
「大丈夫。考えがある」
僕はそう言って二人の元へ戻った。
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