第五話 〜魔王っすね〜
第五話をアップロードしました。
最後まで読んで頂ければ幸いですm(._.)m
『お願い』を聴き入れれば、わからない世界を救いに行く。
『お願い』を断れば殺される。究極の二択を前に僕は固まってしまった。
前者の場合、恐らく異世界であろう場所へ行き、何かに襲われ死ぬかもしれない。この世界へ帰ってこれる保証もない。
しかし、無事に救う事が出来れば、帰ってこれる保証は無いにしろ、向こうの世界で生きていける。後者の場合、百パーセント死ぬ。この二択なら受けざるを得ないだろう。
「申し訳ございません。死んでいただくのは嘘です」
そうライラは言った。嘘、嘘なのか。ならば断る方を選ぶ他ない。
「死んでいただくのではなく、両手足の腱を切ります。その姿のまま、長生きして頂きます」
綺麗な顔をして、ニコニコ笑顔で、死ぬ方がマシだと思うような事を言ってきた。
本当に大変な事に巻き込まれた。この恨みはいつか晴らす。覚えておけよミルモ。
ミルモはライラの言葉を聞いて青ざめていた。
こうなったら僕も男だ。さっきミルモに言った「とことん付き合ってやる」と言う言葉にも二言は無い。腹をくくる時だ、瞬。
「わかった。どこまで出来るかわからないが……その話、引き受けよう」
承諾した事をライラに伝えると、彼女の顔が明るくなり、勢いよく頭を下げて
「ありがとうございます‼︎」
と言った。何度も何度も言った。
「手足の腱を切られるよりはマシだからな」
これは僕の意趣返し。これ位の嫌味は言わせてもらう。
「あら? 瞬様、本気にされましたか? 冗談ですよ‼︎ 冗談‼︎」
本気なわけないじゃ無いですか。うふふ。と、彼女は無邪気に笑った。
僕が見た彼女の目は本気の目だった。恐らくは断った瞬間に手足が動かなくなっていただろう。
「で、具体的にはどこの世界をどう救えば良い? ライラの世界にいる魔王でも倒せば良いのか?」
「うーん……少し違います。私達の世界には『魔王』と呼ばれる者は存在致しません」
「そうなのか」
魔王退治では無いのか。では一体何から救えば良いのか。
「魔王ではありませんが、ある者を退治して頂きたいのです」
話が回りくどい。それって結局の所、魔王では無いのか?
「退治するって事は、それって魔王じゃ無いっすか?」
ミルモが僕の代わりに言ってくれた。良くやった。後で殴る回数を十回減らしてやろう。これで僕がお前を殴る回数は五十回になった。
「魔王と言う程の事はありません。暴力と、自身の魔力で作ったモンスターで世界を我が物にしようとしているだけで……」
「魔王だな」
僕が言った。
「魔王っすね」
ミルモも言った。どこからどう聞いても、そんな事企む様な奴の呼び方は『魔王』以外の表現が見当たらない。
そこまでの事を実行しようと言う奴を「ちょっと悪い人」で片付けるつもりか、ライラ。
「これを魔王じゃないって言ってしまえば、世界の名だたる魔王さん達は軒並み、ちょっとやんちゃしてる人になってしまうっす」
よく言ったミルモ。残り四十回にしてやろう。
「確か、ミルモさんには一度ご説明致しましたよね?」
「さっきも言ったっすけど、覚えて無いっす」
ライラは頬に手を当てて、溜め息をついた。どうやらこのポーズが困った時の癖らしい。
「まぁ、瞬様もいらっしゃる事ですし、もう一度ご説明致します。今度はちゃんと聞いて下さいね」
「ありがたいっす‼︎」
ん? あまりに綺麗な流れなのでスルーしていたが、ミルモ、お前も付いてくる気なのか? 迷惑だ。是非ご遠慮頂きたい。
「そうだ‼︎ 忘れるところでした」
ライラは両手を打ち、話を切り出した。
「私達の世界では、新たに名前を付ける必要がございます。そうしなくては私達の世界に存在出来ません。それぐらい重要な事を、私、恥ずかしながら忘れてました」
「僕は霞 瞬と言う名前があるが?」
「私はミルモっす」
「ミルモさんは、こちらで付けた名前なので問題ございません。瞬様の場合、『霞 瞬』と言う名前はあくまでこの世界での名前となりますので、そのままでは私達の世界では使用出来ません」
「そうなのか?」
「えぇ。今の名前にもう一つの単語を付け加えるだけで十分です。今の名前はそのまま残して、単語を付け加えましょう」
名は体を表す、と言いますから。そう付け加えた。「名は体を表す」か、成る程、一理あるやも知れない。僕は妙に納得してしまった。
「さて、付け加える単語ですが……」
そう言うと、彼女は右手で顎を軽く掴み、真剣な顔立ちで考え出した。
「考えて頂いている所申し訳ないが……」
「はい? 何でしょうか?
ライラは顎から手を離し、首を傾げて僕を見た。
「君が考えるのか? 僕の名前」
何を言っているのか理解出来ない。ライラは呆気にとられながらこう言った。
「はい。こちらの世界から私達の世界にやって来た者に関しては、私が一任して名前を与えております」
何かご不満でも? と聞いて来た。あまりの迫力で聞かれたものだから、僕は咄嗟に「別に」と答えてしまった。
後から思えば、この時に異議を唱えるべきだったのかも知れない。
「決めました‼︎ ブレイカーはどうでしょう⁉︎ 素敵ではありませんか? ブレイカー瞬様‼︎ 素敵すぎます‼︎ 勇ましくて、頼もしい名前ではありませんか⁉︎」
「ブレイカー瞬……」
僕が呟いた。
「ブレイカー瞬……」
ミルモも呟いた。
一生懸命考えて頂いた所申し訳ないが、何と言うか……
「めっちゃダサいっすね」
「なっ‼︎……」
ライラが固まった。そんなにショックだったのか?
「ライラってネーミングセンス死滅してるっす」
そこまで言わなくてもいい。
「そんな……酷い……悩んで決めたのに……」
ライラが目を潤ませた。今にも泣き出しそうだ。
「わかった。僕を呼ぶ時は、ブレイカー、霞、瞬のどれかで呼んでくれ」
「了解っす‼︎ 瞬‼︎」
「わかりました。瞬様」
いや、お前は呼べよ‼︎ 自分で考えた名前だろう。考えた本人も呼ばない名前は失敗作だろう。
まぁネーミングセンスが死滅していると言われれば仕方がないか。
「では、めでたく名前も決まったところで、もうすぐ到着致します。説明はその後に致しましょう」
「到着? 何処に着くんだ?」
僕の問いかけに対し、彼女は微笑みながら言った。
「勿論私達の世界。ヴァルハラです」
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