相談
前話に出てきた恋愛相談。
優香の恋敵、花鶏陽菜穂と、風山楓の話。
楓side
名簿を貰った初めの感想は、1組の1番の子は難しい名前だなぁだった。悠長な感想。忘れることができない名前。
高校時代に付き合っていた女の子を思い出した。
私は別に女の子が好きな訳じゃなかったけれど、その子のことが好きだった。どうして続かなかったんだろう。
今でも凄く、後悔している。
花鶏陽菜穂ちゃんは明るく社交的な子だった。小さめの身長、小さい顔、華奢な体。小動物のような愛らしさで、周りの人を虜にする。4月当初は、私にとって"仕事上の"敵だと思った。私はこの数十年で、そこそこの雰囲気を出して、少しはまあ、人気があると思っていたから。
それがどういうわけか、私は今、彼女にある感情を抱いてしまっている。
先生、相談があるんだけど?
覗き込む仕草、私の目の前でにっこりと微笑む陽菜穂ちゃん。
何?
考えていたことがバレないように、私は姿勢を正した。
ちょっとね~
言いにくそうなことを言う雰囲気だったので、大丈夫だよという意味を込めて私も微笑み返す。
彼女は安心したようにひとつ息を吐いた。
私の恋愛相談なんだけどね、私、女の人が、好きなの
多分今の私、凄く驚いた顔してる。
え?女の人が好きなの?
引いた?
まさか。でも、ちょっと驚いたかな
そっか~
あっけらかんとした表情で彼女は笑った。
私も少しだけ笑った。何よりも、それが知れたことが嬉しかった。
私は独身だから、あまり大きなことは言えないのだけれど。後悔しないで。ね?
今言える精一杯のこと。
あなたには、私のような思いをしてもらいたくないから。
はい。頑張るよ!出来る限りね
少しだけ頬を染めてそういう彼女。
言ってもらえる彼女の"好きな人"に少しだけ嫉妬した。
見守るだけでいい。私の好きな人。