Level.2「痛い」
未だ、覚醒し切っていない意識の隅で、「ピピピピピピ」という連続する機械音が聞こえてきた。
俺はそれが携帯のアラームの音だと認識するのにたいした時間は掛からなかった。
が、携帯のアラームを止めることができなかった。
なぜなら、
「え?も、森?」
隣から驚きの隠せないユメの声が聞こえてきた。
そう、森。俺たちが朝を迎えたのは、文明の息吹を全く感じさせない木々の生い茂る森の中だったのだ。
「え、えっと昨日はお風呂に入ったあと、ホテルで寝たよね?」
「あ、あぁ、俺もそう記憶しているんだが…」
俺たちは未だパニックになっている頭を整理させるため、昨日の記憶を確認しあった。
すると突然に頬に痛みを感じた。
「ひたいひたいひたい。え?なんで?!なんで俺つねられたの??」
「いや、夢かなぁと思ったから…」
「いや、『夢かなぁと思ったから…』じゃねぇよ。なんで俺の頬つねったの?自分のでしなよ!」
どうやら、夢かどうか確かめるためにつねったらしい。
いや、それ自分でしないと意味ないんじゃないのか…
「そんなかわいい目でコッチ見られても痛いもんは痛いんだよ」
「そ、そんな、かわいいなんて…」
ユメが的はずれに照れている。
「そこじゃねぇだろ…」
と、そこで二人とも我に返る。
「そうじゃねぇ、なんでこんなことになっているかだ」
とりあえず周りを見回してみると、俺ら二人の旅行バッグがあった。