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魔界への誘い  作者: 直井 倖之進
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エピローグ


                エピローグ


 総合病院屋上の魔法円の上に、再びミカの姿が現れた。

「わぁ、暑い」

 南西高くから降り注ぐ日の光を見上げ、目を細める。

 そこに、階下からひとりの看護師がやってきた。

「あ、いたいた。随分と探したのよ、ミカちゃん」

 彼女の姿を目に留めるなり、声を弾ませて看護師は言った。

「どうしたんですか?」

「ミカちゃんのお母さんの病気、明日の手術を前に最後の検査をしてみたんだけど、その結果、何ともないことが分かったの」

「本当ですか!」

 ミカが喜びの声を上げる。

 看護師は大きく頷いた。

「本当よ。まるで魔法を使ったみたいに、綺麗さっぱり治っていたの。不思議な話だけど、病気が治るようにミカちゃんがたくさんお祈りしていたから、きっと神様がそれを叶えてくださったのよ。さぁ、早くお母さんの病室に行ってあげなさい」

「はい!」

 元気に返事をするとミカは、病室に向かおうと駆け出した。

 ところが、

「あ、ちょっと待って、ミカちゃん」

 と、それを看護師が呼び止める。

「どうしたんですか?」

「どうしたじゃないわよ。ここに描いてある奇妙な図形、ミカちゃんの仕業でしょう? ほら、名前が書いてあるもの」

 看護師は、ミカが地面に書いた“天音ミカ”の文字を指差した。召喚したルシファーに名を問われた際、ミカがチョークで記したあの名前である。

「それは、その、……ごめんなさい」

「今はいいわ。でも、あとでちゃんと消しておいてね」

 そう告げると看護師は、ミカよりも先に屋上を出て行った。


「魔界、か……」

 ひとりになったミカが、魔法円を見下ろしながらそっと呟く。

 すると、描いていた魔法円と名前が、地面へと吸い込まれるように消えて行き、そこから、ルシファーの声が聞こえてきた。

「ミカよ、貴様に伝え損なっていたことがあるゆえ言っておく。忘れてはおらぬだろうが、我は、母親の病を治す引き換えとして、貴様の命を受け取った。これは契約であるため、覆すことはできぬ。しかし、現世においてはそれを(ゆう)()し、貰うのは来世の貴様とする。即ち、死後、貴様は再び魔界へと誘われることになる。そして、魔界にて転生を経たのち、我が息子リストの妻となるのだ。我々魔の物、皆、それを希望している」

 くすりと笑って、ミカは答えた。

「分かりました。でも、私は人間の血なんて飲めませんから、たくさんお水を準備しておいてくださいね」

「承知した。では、再び(まみ)えるその時まで、暫しさらばだ」

 その言葉を最後に、ルシファーの声は消えた。

 現世では恋人さえもいないのに、早くも来世での婚約者が決まってしまったミカ。

 再び魔界へと誘われる遠い未来を胸に抱きつつも、今は病室で待つ母の(もと)へと急がんがため、彼女は屋上をあとにした。

 最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。直井 倖之進です。

 他の私の拙作に目をとおしていただいた方ならお気づきかと思いますが、『魔界への誘い』は、それらと比較すると、少しライトな文章表現になっております。

 これは、本作の対象年齢を中学生としているためです。(正確には、太宰治の『走れメロス』と同じ、中学2年生の3学期を想定して書きました)

 無論、内容については太宰に遠く及ぶものではありませんが、それでも、そこは元教師の意地。何とか子供たちに楽しんでもらおうと、また、既に成人なさっている方には、軽い読み物として親しんでいただこうと考え、創作しました。

 本拙作が、偶然にも子供たちの目に触れ、且つ書を娯楽とすることへの興味・関心に僅かでも貢献できたとするならば、私は、それだけで幸せです。

 それでは、寒さ一段と厳しさを増してくる折、お身体ご自愛ください。

 なお、次作については、以下で説明をしております。そちらでも再会できることを願いつつ、結びとさせていただきます。ありがとうございました。


 次作のジャンルは、“ホラー”。タイトルは、『隠者の住む里』です。

 “プラトニックラブホラー”などと銘打ってみたのですが、はたしてどう受け取られるか。

 作品の対象は、R15ということもあり、10代の後半。高校生・大学生を想定しています。

 本日中にプロローグを投稿いたしますので、よろしければ、引き続きお付き合いください。

 また、作品としては、一応、既に完成しているのですが、それを改変しながらの更新になります。投稿後での大きな書き換えを避けるため、更新が隔日となってしまうことをお許しください。

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