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「うおぉぉぉおー‼‼」
怒号にも似たフェイトの雄叫びが坑内に響き渡る。
「 __なっ‼」
「フェイト⁈」
戦っているイレーナや他の騎士達がフェイトに視線を向けた。複数のオークもフェイトに注視する。
フェイトは一体のオークの腹めがけて、グローブからワイヤーを放ち、素早く巻き取ってオークの真下まで接近した。
同時にバスタードソードでオークの腹を斬り裂き、真下から顎に剣を突き刺す。突き刺された刃は、頭を貫いた。
そして、フェイトは剣を顎から引き抜いて、その剣を別のオークの頭めがけて投げる。フェイトから放たれた剣はオークの頭に突き刺さり、絶命させた。
「お前……」
倒れたオークの近くには見覚えのある騎士が一人居た。
「オーガスタ‼ お前も救護に専念しろ‼」
フェイトがその騎士に言い放つ。
「黙れ‼ お前の指図など受けない‼」
「フェイト‼」
イレーナが走り寄ってきた。
「隊長‼ 奴に近づくのは危険です‼ きっとこのオークだって奴が__‼」
「何を馬鹿な事を言っているの⁈ 早く負傷者の回収をしなさい‼ オークは私達が引き寄せるから‼」
「ぐぅ__‼」
「早く‼」
「了解‼」
オーガスタは怒りを抑えながらといった感じで返事をすると、フェイトを睨んで走り去る。
会話をやり取りしている間に、フェイトとイレーナはオークに囲まれてしまった。
複数のオークの攻撃が同時に襲いかかる。
「くっ‼」
フェイトは、その攻撃を交わしながら腰に手をやると、すかさずナイフを両手で放った。
二体のオークの目に突き刺さり、視界を奪う。
同時に背中に吊るした二本の短剣を引き抜くと、オークの足元を縫うようにかけ走り、次々とオーク達の足を斬り裂く。
イレーナは、エストックの切っ先を真上に向け、その刃を指でなぞる。
首に下げたネックレスの飾りである魔導石が輝く。すると、エストックの刃に風がまとった。
「くらえ‼ エアースラッシュ‼」
イレーナの素早い三連撃は、刃がオークにとどいていないはずなのに、複数のオークを斬り裂いた。
あの技はイレーナが得意とする風魔法で、刃に風をまとわせる事によって、遠くにいる敵を斬り裂く事ができる風の刃を生み出す魔法だ。
フェイトも負けじと攻撃を続ける。
グローブからワイヤーを放つことによって可能としたワイヤーアクションを屈して次々とオークを殺す。
壁から壁へと飛び移る際、すれ違いざまに四肢を切断し、頭を斬り落とし、のどを斬り裂く。しだいにオークの数は減り、そして複数いたオークを全て殺した。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
呼吸が乱れ、身体が重たい。
「やっと、終わったわね。はぁ、はぁ……」
そう言って笑みを浮かべるイレーナの顔を見て、安堵するフェイト。辺りを見渡すと、地面は血の海と化していた。
無数のオークの死体が無造作に倒れ、異臭が辺りを包む。何体居たのか、そして自分は何体殺したのだろうか。
まったくわからない。ただ分かっている事は生き残れた事。そしてイレーナを護れた事だった。
フェイトは二本の短剣を鞘に収めると、オークの頭に刺さったバスタードソードを引き抜いて、それも鞘に収める。
「あらかた片付いたな」
「そうね」
イレーナもエストックを鞘に収めた。
「でも……」
「どうしたのフェイト?」
「どれも三メートルぐらいのオークばかりで、それ以上のオークは居なかったな」
「まだどこかに居るってこと?」
イレーナの顔が少し引きつっている。
「その可能性は高い。でも、ここっておそらく最深部だよな?」
「うーん……。これ以上先に行けそうな坑道はなさそうだけど……」
「とりあえず一度外に出るか」
フェイトがイレーナに提案する。
「そうね。みんなの事も心配だし」
フェイト達は坑道から出る事にした。