後悔という名の自己嫌悪
刹那、時が止まったように感じた。
「別れよう」
残酷な響きを伴ったそれは、私の頭をがんがんと容赦なく殴りつける。
――何で?
言いかけた言葉は音にならなかった。
私は、彼の顔をぽかんと見つめる。
冗談でしょ、と笑い飛ばすには、彼はあまりに真剣な表情をしていた。
見慣れた顔なのに、まるで知らない人のように見える。
「そうだね」
するり。唇が勝手に言葉を紡いだ。
――待って、今私、何て……?
いつもと変わらない調子で、私の知らない私がしゃべり続ける。
「私たち、何だかんだもう2年目だし。もうそろそろ飽きてきたよねー」
――ねえ、何言ってんの?
ねえ、私ってば。何言ってんのよ?
待ってよ、待って。
駄目。待てない、止まらない。
違うよ、私が言いたいことはそうじゃないのに。
「そうそう。こんだけ一緒にいたら上等だよなあ。つか、よかったよ。何か文句言われんじゃないかとか、結構ビクビクだったんだけどさ。お前も俺と一緒だったんだなー。……んじゃ、そういうことだから俺帰るわ」
彼はからからと笑った。
いつもと同じ笑顔で笑って、ひらひら手を振りながら来た道を戻っていった。
私を、置いて。
――何で?
言いたいこと、言えてないじゃん。
私、またやっちゃったんだ。
素直になれなくて、結局思ってることが言えない。最後までこんなんだなんて。
バカ、バカバカバカ。
言えばよかった。
何でって。私の何が駄目だったのって。
未練がましくても、今も好きなこと伝えればよかった。
嫌いにならないでって、言えたらよかったのに。
今更、涙出てくる位なら。
言えば、よかったのに。
何でよ、バカ。




