けもの
そこはかとなくエロです。
15禁です。
熱い吐息が耳元を掠めた。
深く繋がった結合部から淫猥な水音が聞こえた。
どろどろに溶けた肉を抉られるような、不思議な感覚。
快感とも、痛みとも呼べる、わけのわからないそれに嬌声をあげながら、頭は冷え切っていた。
……違う、まだ足りない。
もっと深く、強く交わりたい。
こんなんじゃ足りない。
全然足りない。
これは人がするセックスだ。
私が欲しいのは、もっと単純で、生臭くて、本能的なセックスだ。
獣の交わりが欲しい。
人はもう、ヒトでなくなってしまった。
人は今や動物であることを放棄した。
文明や言葉によって装飾された世界を造り、そして人はパーツになっていく。
世界や歴史のパーツになることを選んだくせに、今を生きることを放棄したくせに、人は生きる意味を知りたがる。
今日も昨日も、明日ですら過去へ繋がるひとつのピースでしかないのだというのに。
完成することのない巨大なパズル、世界を作り上げる為のピース。
生きるのも死ぬのも、全てピースの柄にしかならない。
しかし、それが何だと言うのだろうか?
獣は己がパーツやピースであることを知らない。
彼らには今という一瞬しかない。
思い出にひたり、過去を取り出すなどということはしないのだ。
未来を憂えて溜め息をつくことなどないのだ。
嗚呼、なんて浅はかで愚かで気高いのだろう。
獣に、なりたい。
食べて交わって産んで育て、それを繰り返し、やがて死ぬ。
単純で難しくて、でも本来かくあるべきという、偽りや虚構に惑わされない姿。
獣に、なりたい。
獣に、戻りたい。
そう思いながら、私はまた快楽に溺れるふりをした。