ガラス細工のシンデレラ
息苦しい。
最初の感想はそんなものだった。
何の感慨もなく
「ああこんなものなのか」と軽い失望も覚えた。
執拗に絡み付いてくるざらついた感触にも何も思わなかった。
不快にすら思わなかった。
ああ、こんなものか。
なんて味気ない。こんなものが。
そうか、そうなんだ。
別に何か期待していたわけでもないけれど私の中で一つの幻想が終わりを告げた。
甘酸っぱい恋も、情熱的な愛も、嘘っぱちだ。
薄い薄い硝子の板で作られた、美しくて脆弱なシンデレラの靴。
履くことの出来ない甘い夢。なんてくだらない。
「どうする?」
かすかに掠れた声で、彼は問いかけるといった体裁をとりながら口調で続きを催促した。
つまりその次に行われるべき行為を、だ。
「好きにして」
間違ってはいない。
嘘はついていない。もう好きにしてくれればいい。
壊したいなら壊してくれ、もうどうにでもなれ。
他人から見れば自暴自棄、そうかもしれない。
それすらどうでもいいのだ、ああ。
情けない。
顔を上げれば男の目が見えた。
貪欲な獣の目。淫靡な色に染まって濡れている。
本能を剥き出しにして、体中で欲を渇望して。
紳士的な皮を一枚剥がせば、なんて醜い。
さようなら、私。
さあ、まぶたを閉じて、その先は。