ちょっと、神様!失敗ルートで覚醒させないでよね!
・・・何だろ?物凄いデジャヴな温かさなんだけど?
だけど、わたしはそれが未来永劫続けば良いのにと思った。
『ハラヤマ シホ。目覚めなさい。あなたの願いを叶えましょう』
「・・・」
わたしは聞いた事ある中性的な声とセリフもデジャヴだなと思ったら、目の前には夜空色の瞳をした黒髪ロングで女性としてはかなり背は高いけど猫背気味の、顔立ちは整っているのにどんよりとしためちゃくちゃ暗い表情の女がいた。
「え?誰?あー、わたしか・・・ないわー。マジ、ないわー」
そして、わたしは鏡に映る自分の姿に大きく溜め息を吐いた。
「はあぁぁぁぁ・・・えーっと、明日の卒業パーティーがエンディングだっけ?」
わたしはここがした事のある乙女ゲームの世界なのは間違いないと確信したのは、今現在鏡に映る自分の残念過ぎる容姿に見覚えがありまくりだったからだ。
「ん〜、これは詰んだか?」
わたしは改めて鏡に映る暗い顔をした自分をしげしげと眺めた。
「・・・だけど、面白くないよね〜。まあ、魔法がある世界なんだから何とかなるかな?」
再び大きな溜め息を吐くと、どうすればいいのか考えた。
そして、これしかないなと決意すると、直ぐ様行動を開始したのだ。
「ダンスのお相手を願えませんか?」
「は、はい!」
わたしは相手の手を取るとダンスフロアへと向かった。
「まあ!?あの方はどなたなのかしら!?」
「見た事ないよな?誰だ?」
「だけど、とっても美しい方ね!」
わたしはざわざわと周囲が騒がしくなっているのを確認しながら、ダンス相手に微笑んだ。
そして、ダンス相手は終始真っ赤になり、時折ステップを間違えそうになっていたけど、わたしは全く気にせずにさり気なくリードしてダンスを終えた。
この乙女ゲームは男爵家の家督を相続する権利がどちらもある双子の姉妹からヒロインを選べるのだけど、今のわたしは暗くて地味な姉の、それもハードモードの容姿の方で、そのゲームの舞台は貴族学院なのだ。
そして、その貴族学院で攻略対象のヒーローの誰かと卒業パーティーまでに婚約出来たらクリア成功でエンディングの卒業パーティーと言う流れなのだけど、昨日の時点でわたしは誰とも婚約してなかったので、クリアは既に失敗している。
だから、本来なら卒業パーティーの会場の片隅で、ドジっ子属性の妹とその婚約者を眺め、家督相続も諦め一人佇むエンディングのはずだった。
だけど、全く何もしてないのにクリア失敗なんて絶対に理不尽だと思ったし、家督相続ももうどうでもいいから、万が一この後に人生が続くなら何もしない訳には行かないと思ったのだ。
そして、何人かとダンスを終えたわたしは強い視線を感じたので、そちらを見ると、そこには来賓として招かれているこの国の最高権力者がいた。
「ダンスのお相手を願えますか?」
「ほう、私に声を掛けるのか?」
「はい、本日は無礼講でございます故に」
そして、わたしは陛下の手を取るとダンスフロアへと向かい、その後陛下と続けて三曲踊ったわたしは王宮へ行儀見習いとして上がる事となったのだ。
「エミール。こちらへ参れ」
「はい、陛下」
「本当にそなたは美しい。この先ずっと私の側にいて欲しい」
「はい、陛下。ですが、わたしも子供が欲しいとは思っております」
「ふむ。そなたの生む子は私も見たいな。誰ぞ良き者と娶合わせる故、そなたは安心して私の側に居るが良い」
「はい、陛下」
わたしがそう返事をして微笑むと陛下は顔を赤らめた。
「・・・いや〜、ここまで上手く行くとはね〜。クリアは失敗だけど、人生は成功なんじゃない?」
わたしは王宮に充てがわれた自分の部屋に戻ると、ドレッサーの前に座り、自分に向かってそう満足気に問いかけてみた。
「・・・さてと!一応あの?男装の麗人をやってみたい願いは叶ったし、この先どんな人生になるのかな〜♪」
わたしは立ち上がると、女王陛下から侍女として側に居る際には着る様に言われている、魔法で作り替えた卒業パーティー用のドレスだったタカラ◯カ感満載の騎士服からパジャマに着替えて男爵令嬢だった頃とは桁違いに豪華なソファーに座ると、温かいお茶を一口飲んだのだ。




