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鳩のお姫様

仕事に行きたくない…


スノウが我が家に来て一週間


大きなぬいぐるみのようなモフモフの優しい彼女と料理したり皆でホラーを観たり、伝説や伝承を聞かせてもらったり、お風呂に入ったり一緒に寝たりの毎日が心地よ過ぎてずっと家にいたくなってしまった


というよりもスノウから離れたくない登校拒否の幼稚園児のようになってしまった原田朋美34歳


お休み前の金曜の夜、ヒロくんのお土産のミルクパイシューを食べながら口火を切る


「皆に相談があるんだけど…」


「改まってどした?」


心配そうに顔を覗き込んでくる亮君


『モミちゃん、どうなすった? 独りで胸に抱えておくのはよくありませんわ』


ふんわりした羽根で背中を撫でてくれるスノウ


「別にいいよ、モミ一人くらい俺たちの収入で養えるし、おっと、一人と一羽か(笑)」


ふだんはSなヒロくんの優しい言葉にギョッとした反面、ウルっとくる


「どうして?」


『リーディングなさったのね』


「ああ、僕たち霊感強くって子供の頃から他人の考えている事が脳内に入ってくるんだ。


最初は驚いてノイローゼになって友達にコントロールの仕方を教わってバリアをはってふだんは聞こえないようにしてるんだけど本当に相手の考えを知りたいときは


リーディングするんだ」


そうだったんだ


屈託のない笑顔で説明する亮くんに安心感を覚え私は素直に頷いた


「言わなくていいよ、モミちゃん。今まで頑張ってきたぶん、スノウちゃんと僕らにに甘えるといい」


「本当に…いいの? 」


「いいよ。お前は頑張り屋で我慢強いからな…そろそろ楽していい頃だろう」


『モミちゃん、何も心配しなくていいのよ。むしろね、よく今まで頑張ってこられましたね…辛いこともあったでしょう』



ママン…


そう…なのだ


優しい父としっかり者の妹に甘えっぱなしで大した苦労もせずに生きてはきたが いわゆる私はコミュ障であるため、働きながらも三十路過ぎまで亮とヒロ以外に心許せる友達も作れず孤独だった


唯一の理解者で親友でもある妹が嫁いだ時は精神を病み心療内科に通いなんとか誤魔化しながらも前向きに1人暮らしを満喫していたつもりだが誰かに甘えたくて子供に戻りたくて心は悲鳴を上げていた


そんな私を見かねて同居してくれた亮とヒロとの生活になじんできた時に出会ったスノウ


「うん…私、スノウママンと離れたくない…大人のフリするの疲れちゃった…ずっとおうちで一緒にいたいの…毎日美味しいお料理作るから」


「おいおい、お前さんは耳が悪いのかい? 何も言わなくていいよ…」


『ええ、ええ。お二人は何もかもわかっておいでですわ』



スノウはそう言うと みんなの前でいつもの大きな鳩人間に姿を変えた



え、え、えっ…


ヤバくない? 二人にどう説明すれば…



「知ってたよ、だってモミちゃん、君は鳩のお姫様じゃない」


「え…亮くん?」


「あっちじゃお姫様だったんだから無理も出るだろうさ、そろそろ俺たちも帰る頃じゃねぇか?」


『そうですわね…お二人とも真の姿にお戻りになって…いえ、お戻りなさい…』



「畏まりました、スノウ様…」


亮とヒロは跪くと目の前で騎士の姿になる


なっ、…ええっっ



あ、でも…見覚えある…かも…



「ヒロージュにリョシアン…」


「思い出しましたか? モミール姫…」


『モミちゃん、そうよ、この二人はあなたが生まれたときからずっと守り続けている騎士ですもの…そして私は…』


「スノウ姉さま! 」


「そうですよ、姫。魔界の闘いで我々は散り散りになり、下界に人間として転生されたあなたをスノウ様とずっと探しておりました」


そうだった…


魔界の戦争で多くの者たちが傷つき離れ離れになり前世の記憶を失ったのだ


まるで霧が晴れるように忘れていた記憶が鮮明になっていく



「ええ…思い出したわ…私は、鳩で魔女だった」


『そうよ、真の自分の姿を御覧なさい』


スノウ姉さまは私の手を弾き姿見の前へ立たせた


鏡に映っているのは人間じゃなく、うっすらと桜色の羽根で佇んでいる鳩人間だった


「お姉ちゃん、やっと目覚めたのね!」


「眞子…まぁこ、いつの間に…あなたも知っていたの?」


「知ってたも何も…お姉ちゃん天然ボケでなかなか目覚めないからわざと孤独になるように嫁いだのよ、ね、アンジュ?」


「姉さん、やっと目覚めたか…よかった!」


妹のまぁこはピンク色の、夫のアンジュは漆黒の鳩人間になっていた


「ふたりとも…そうよね…その姿だった…」


「そうよ、もう…! 心配したんだから…」


涙ぐんで私を抱きしめるまぁこ


なかなか目覚めない私をずっと待っていてくれたのね…歯がゆかっただろうな



『焦らないで、まぁこ。モミールは目覚めたばかりなのよ』


「そう、私とまぁこはスノウ姉さまをママンって呼んでいたわ…姉さまは母性が豊かで面倒見良くて私、いつも甘えていたもの…」


『ええ、ええ。そうよ、いい子ね、モミー。やっと、やっと思い出したのね…よかった…』


真っ白い羽根で涙をそっと拭うスノウ姉さま…ああ…懐かしい…



「よかった、※ジニーママに知らせなくちゃ! どこでもドアで帰りましょう」


「ジニーママ…??」


『私たちの本当のママよ…あなたをひどく心配しているわ』



ジニーママ…ああ、そうだ、思い出した


鳩娘たちを心から愛する子煩悩の優しいママ


鳩の魔女で大魔王のジニーママは魔界の戦争に巻き込まれて娘たちが散り散りになり、姉妹ともはぐれてそれぞれに悲しい想いをしたことに心を痛め泣いていた





※ジニーママとは鳩娘たちを愛する鳩の魔女でスノウとモミールの母親


ピジョンタウンを築き上げた鳩の女王で夫の大魔王ダンと共に魔界を離れ、生まれ変わった娘たちが二度と悲しい想いをせずに平和で暮らせるようにと、

争いのない美しい国、ピジョンタウンを築いた



「ね、ねぇ、ところで人間のパパの記憶はどうなるの? 突然私たちが消えたら心配しない?」


「ああ、それなら問題ないよ、きみが覚醒した時点で記憶から消えているからな」


「そうだよ、モミール姫。彼は人間だから記憶を消すのは容易いよ」


なら、よかった


本当の父ではないけれど下界でお世話になったものね



「大丈夫? 目覚めたてでまだ混乱してると思うけど、聞きたいことがあったら聞いてね」


「ありがとう、まぁこ。心配性は鳩に戻っても変わらないのね、ふふ」


「なんだかね…今まで生きずらかったことに納得がいくなって思って…」


「そりゃそうよ。だって私たち、鳩のお姫さまだもの、ジニーママの娘なんだから」


「そうだよ。モミ姉さんはまぁこが器用にやっているって思ってたようだけどこいつは、実際、不器用でね…陰で泣いてた」



そうだったの…


「ごめん、知らなかった、まぁこは友達も多いし皆と上手くやってて羨ましかったんだ…」


『まぁこを許してあげて。あなた想いで目覚めさせるとはいえ、あなたを独りにさせるのがイヤだってなかなか承知しなくて説得するのに大変だったの』


「あら、スノウ姉さんもあまりにお姉ちゃんが覚醒しないから心配で見るに見かねて白い鳩で近づいたじゃない」


『ええ、これ以上は一人にしておけなくてヒロージュとリョシアンに相談してね…』


「なかなか気づかなくてさ~やっぱりスノウ様は偉大だな…」


みんな、心配してずっと…見守っててくれたんだ


「ごめんなさい…私、気づかなくって…心配させて…」


自分でも呆れるほど涙が出てきて止まらない



『いいのよ…お泣きなさい、ずっと我慢していたものね…』


「よかった、お姉ちゃん…」


スノウ姉さんとまぁこの暖かい羽根に抱きしめられながら原田朋美に転生して本来の自分に目覚めたモミール姫は これ以上はないというほどの幸福感と安らぎを感じていた





Happy Ending








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