第9話 S級は化け物揃い。1人で一国の軍隊並みの力を持つという。
2日連続で1話のみの投稿が続いてしまって
申し訳ありませんでした!
現在、その日書いた分をそのまま
投稿している状況です。
また、1話のみの投稿が続いてしまう
こともあると思いますが、引き続き
この作品を楽しんでいただけると幸いです。
――ダッダッダ! ――ガチャ!
「おいアル! 休日だからって
いつまで寝てんだ! 飯行くぞ飯!」
「…………うん」
寮の部屋までユージーンが起こしに来た。
別に怒ってない。休日くらい寝かせてくれ
とか思ってない。たしかに腹は減ってるし、
怒ってない。騒がしい奴だとは思ってる。
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――ズルズルズルッ!
「ッんでよ、最近正体不明の魔物が
王都を騒がせてんだよ!」
「ふーん」
「その魔物がチョー強いらしくってよ!
おまけに正体不明だから倒し方も
わかんねぇんだと!」
「なるほど」
「それで騎士団所属の元S級冒険者
セレナ・ガラクシアがその魔物の討伐に
向かったんだ」
「へえ、お姉ちゃんがねえ」
S級冒険者とは、冒険者の中でも
最上位の等級で、S級は化け物揃い。
1人で一国の軍隊並みの力を持つという。
ぶっちゃけ説明だけ聞くと、
めちゃくちゃかっこいい。だけど、
冒険者という職業自体には魅力を感じない。
冒険者の仕事内容なんて正直なんでも屋だ。
依頼をこなす過程であちこち行くだけで
冒険者なんて名ばかりなのだ。
まだ今ほど地図がしっかりして無かった
昔なら、まさに冒険だったんだろうな。
現在は本当に冒険している冒険者なんて
いないだろうし、目指す奴は肩書き欲しさだろうな。
「くぅー! S級冒険者! 俺もなりてぇー!」
そういえばユージーンの夢は冒険者だったな。
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次の日、ユージーンに連れられて
学園の美少女たちを片っ端からナンパしよう
という事になった。
ユージーン曰く、学生の内に恋愛しないのは
勿体ないらしい。
うるせえ黙っとけ。
「――あれは!」
声を上げたユージーンの視線の先には、
薄い紫の髪と瞳の、綺麗で大人びた感じの美少女。
「学園2大美女と呼ばれる
アリシア・ラベンド生徒会長!」
「へえ、そんなの居――」
「ッんあれは!」
俺が言い切る前にユージーンが声を上げる。
今度は何だ。
ユージーンの視線の先には、
ゴールドの髪と瞳の、守ってあげたくなる系の
美少女。
「学園3大美少女と呼ばれる
ミーシャ・フローリアちゃん!」
さっきから2大美女だの3大美少女だの
言うけど毎回1人しかいないのだが?
「んぬあぁぁれは!」
ユージーンの視線の先には
ピンク色の長髪と緑の瞳の儚げな美少女。
「学園5代天使と呼ばれる
カトリーヌ・ブランシュちゃん!」
今回も1人しか居ないし、
ただの学園の天使でよくね?
というかさっきからやたらと
タイプ別の美少女が都合よく出てくるけど、
安っぽいヒロイン紹介みたいになってるな。
「よっしゃアル! とりま全員に声掛けてくるわ!
1人くらいいけんだろ!」
どこから湧いてくるのかわからない
自信に満ち溢れたユージーンはそう言って
彼女たちに飛び込んでいった。
もちろん結果は惨敗。
そりゃそうでしょうよ、だってユージーンだもん。
俺とユージーンは何の成果も得られず、
教室へ向かうのだった。
マジで何の為の時間だったの
何かの伏線ですか?
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「だからな? 最強なのはドラゴンだって!」
「いいや! 宇宙だね!」
――ドン。
「んあ、すみません……」
2人で、どうでもいい話をしながら
廊下を歩いていると、ユージーンが人にぶつかる。
ユージーンを上から下まで見た相手は、
ニヤリと笑って口を開く。
「あ? お前……、1年か?」
「ッ! ……、ら、ラリーゴ先輩」
「ほう、俺のことを知っているのか。
ならこの後の事はわかってるよな?」
「か、勘弁してください……」
よくわからないが、
このラリーゴとかいう男はなんなんだ?
「なあおい、この人何?」
俺は声を小さくしてユージーンに問う。
「3年のラリーゴ先輩だ、
騎士志望でめっちゃ強い。
でも暴力沙汰とか悪い噂が絶えないんだ。」
「ふーん」
仕方ないな。
友人の為、ひと肌脱ぎますか。
「先輩、俺も謝ります。ぶつかってしまったのは、
コイツの不注意だけじゃない。
一緒に話してて気がつけなかった
俺にも責任があります」
俺は頭を下げる。何でもかんでも力で
解決すればいいってもんじゃない。
「――アル!」
「そうか。だが謝っただけで許されるなら、
街に衛兵は必要ないよな?」
……こいつ最初から許す気ないな。
こういう奴は前世にも居た。
自分勝手に暴力を振るいたいだけの輩。
「つまり?」
俺は一言聞き返す。
「お前も一緒に殴られとけ!」
ラリーゴの大振りの拳が
俺の顔面に向って放たれる。
たしかに体は大きいし、ガタイも良い。
首も太い。前世だったらこの体格は正直
相手にしたくない。
だがこの世界に存在する力は、
なにも筋力だけじゃない。
――ヒュ! ――ガシ。
放たれた拳を、身を捩って躱す。
次に拳を放った方の手首を掴む。
――ズゥン。
「ッぐぁ!」
そして出力を弱めて圧をかける。
「先輩、辞めましょう。暴力は」
「な……、何を! しやがった……」
圧力に潰され、
膝立ちになったラリーゴが問うが無視する。
「あ、アル? どうなって……」
ユージーンが俺に聞く。
「何でもない! 先行ってて」
「でも……」
「大丈夫だ! 俺が謝っておくよ!」
ユージーンを先に教室に行かせる。
そして俺は手首を掴んだまま
しゃがんで、ラリーゴと同じ目線で話す。
「……相手と自分の力量の差も
わかんねえ癖して何が騎士志望だ」
「俺たちのことを上から下まで見て、
自分より下だと判断した。そう判断した
相手にしか脅しはしない。だろ?」
「騎士道精神の欠片もねえ。
正直向いてねえよ。剣握るの辞めちまえ」
俺はラリーゴの耳元で小さく呟いた。
「――ッテメェ!! ッは……」
怒鳴るラリーゴの目をただ見つめた。
決して目線を外すことはない。ただ見つめる。
「聞こえなかった。
悪いけどもう一度言ってくれないか?」
俺はラリーゴに聞き返す。
「な、何でも……、ありません……」
ラリーゴがそう答えると、
俺は魔術を解いて教室へ向かった。
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――ダッダッダッ!
「アル! 大丈夫だったのか!?
怪我とかしてねぇよな!?」
ユージーンが駆け寄ってきて、そう問う。
「大丈夫だよ、そんなの見ればわかるだろ?」
「でもよぉ! ……でも」
ユージーンは珍しく、
申し訳無さそうな様子だ。
「ちゃんと謝ったら許してもらえたさ」
「アル……」
普段はアホな癖して、
こういう奴なんだよな。
「気にすんなよ! 友だち、だろ?」
「……あ、アルぅぅ!!」
そんなやり取りをしてから、
俺たちは席についた。




