第4話 違いと言えば塩か醤油かくらいだろ!
森での事は腹立つから忘れて家族で食事をする。
この世界の食べ物は美味しい。
だってふつうに洋食だもの。おかげで
ストレスフリーな異世界生活を送れている。
「アル、そろそろお前も15歳になるが、
将来なりたいもの、やりたいことは
決まっているのか?」
アルというのは今の俺の名前。
どうやら転生先は貴族の家だったらしく、
フルネームはアル・ガラクシア。
パパがそう問いかけてくるが、
ぶっちゃけ強くなれれば何だっていいからなー。
「……まだ決まっていないのなら、
王都の学園に入学するのもいいだろう」
王都の学園、聞いたことはある。
魔術や剣術、多方面の分野が学べるので、
将来の就職にとても役立つのだ。
正直、魔術はまだしも、剣術や格闘術などの
戦闘技術はまだまだ未熟。王都の学園に
入学するのもわるくない、寧ろ都合がいい
かもしれない。
「――そうね、私もそれがいいと思うわ
アルは魔術の勉強が好きみたいだし、
もっと広い世界で学んで欲しいわ」
そう声を上げるこの、
銀髪で胸の大きい女性は俺のママ。
「アル、私も同じだ。
質の良い知識を身に着けて欲しい。」
「私は平民出身で、まともな教育を
受けてこなかった。お前は賢い、だからこそ
学園に行くべきだと思うのだ」
パパって平民出身だったのか、
成り上がったってこと? 漫画みたいだな。
「わかったよママ、パパ。
俺、王都の学園に入学したいな!」
俺はそう答える。
さて、そうと決まれば入学までの
3年で更に鍛えておこう。
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修行回に入ったらやることは決まっている。
それは必殺技の開発だ。
もちろんコンセプトは決まっている。宇宙だ。
そしてそれを実現するのは当然魔術。
まずは俺の闇属性を
宇宙まで連想する必要があるのだが、
実はそれ自体はもうできている。
流れはこうだ、闇とは真っ暗なイメージ。
真っ暗からそのまま夜。夜から夜空。
夜空をじっと見つめる。その奥行きや、
広大さ、その果てしなさから宇宙へ。
ぶっちゃけこれくらい直感的でいい。
ポイントはそこじゃないのだ。
連想の過程が大切で、目標のものまで
どれだけ短い過程で辿り着けるかなのだ。
過程が長ければ長いほど、
必要な技術も魔力量も増えてしまう。
つまりこれが俺の、宇宙までの最短距離なのだ。
そして自分の中に宇宙を宿す。
いや、自分こそが宇宙そのものくらいの
イメージをしてやっとまともに機能するのだ。
それでも今できるのは、
重力を操ったりすることだけ……。
そんなしょぼいのより欲しいのは
圧倒的な破壊力をもつ必殺技。
数多の漫画とアニメを見てきた
俺のイメージは固まっているのだ。
それらの作品から着想を得て、
必殺技は爆発みたいに重たい一撃で
ドカンと全部吹き飛ばすようなものがいい!
技名はスーパービッグバン! とか、
ギガインパクト! とか、アルティメット超凄い
ドカーンとか色々考え中だ。
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それから3年が経ち、15歳になった。
これから王都の学園に入学をする。
この3年間でだいぶ強くなった。
鍛練の過程で、この世界に魔力以外の
力がないか探したり試したりもしたけど、
見つからなかった。
だから俺は既存の力を伸ばすのと、
武器などで強くなる道を選んだ。
ひとまず、準備はできただろう。
後は王都に行く前に、身だしなみのチェックかな。
俺は姿見の前に立つ。そこには、
パパ譲りの黒髪と顔立ちの
西洋系男子が居る。
全体的にパパ似なのだが、
パパはザビエルヘアーだ、それも遺伝するの
だろうか。……話がそれたので戻そう。
鍛え上げられた体ではあるが、
着やせするタイプのようであまり目立たない。
別にナルシストな訳じゃない。
ただ、自分に絶対王者の風格があるか
確認したかっただけ。
結果ふつうの男子。ちょい美形か?
そんなに強面じゃないし、威厳なんて無さそうだ。
これだけはちょっとコンプレックス。
いかつい甲冑でも身に着ければマシになるか?
要検討だな。
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王都の学園、もとい
レガリステラ王立総合学園に入学して
2ヶ月が経った。
学園と家の距離が、かなり
離れていたので、現在俺は学園の寮で
生活をしている。
そして、この2ヶ月間で両親から
引くほど手紙が届いている。
俺は前世で両親がいなかったので、
親というものがどういうものなのかわからない。
でも、今の両親が本気で俺のことを
愛しているのは伝わっている。
なので俺は両親を実の親のように思っている。
実際、実の親なんだけど。
だからこそ、悩みもある。
俺の転生によって、この体の元の人格を
乗っ取ってしまったのではないかと。
……ま、考えても仕方がないか。
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学園での俺立ち位置はというと、
ふつうよりちょい上くらいである。
違うのだ、手を抜いたり
実力隠しムーブをしているわけではない。
王都の学園なだけあって、貴族や王族などの
金や立場のある人間が沢山居る。
その中で男爵家の俺がトップに立つと、
メンツとかなんとか色々面倒なのだ。
それに出る杭は打たれるとも言うだろ?
自分にとって1番安全なポジションを選んだまでだ。
――ダッダッダッダ。
「おーい! アル! 学食行こうぜ!」
こいつは俺の数少ない友だち、
ユージーン・フレンド。同じ男爵家だ。
――サ。
ユージーンが俺の向かいの席に座る。
「アル、お前いつも同じの食べてんな
そんなに美味いかそれ?」
そう言って俺の食べてる
オムライスに視線を向ける。
「美味いよ、俺の好物だ」
「あっそー」
自分で聞いたくせに適当な返事しやがって!
お前だっていつもラーメンだろうが!
違いと言えば塩か醤油かくらいだろ!
「てかよー、知ってるか?
最近王都で話題のアビスの福音っつう組織」
初耳だ、なんか厨二臭くてかっこいいかも。
「聞いたことないな、なんだそれ?」
「なんでも深淵王とか言うのを信仰してる集団で、
やたら強引な勧誘をしてくるって話題になってんだ」
深淵王……?




