第3話 魔物愛護団体とかいないよね?
ここは近所の森。
「ちょっとそこまでお散歩」を口実に
俺はいつもここに来る。
今回は強くなる為に、
実践を積もうと思ってここにやって来た。
この世界にも異世界らしく
魔物とかがいるみたいで、この森には
その魔物が沢山生息している。
いつも魔物たちには
鍛練の相手になってもらってる。
肉体改造の時には、沢山の魔物たちに
協力してもらったものだ。
解剖して体の構造を隅々まで
調べさせてもらったし、いくつか臓器を
俺の体に移植させてもらったりもした。
魔物の本質は悪。問答無用で人間を襲う。
だから色々と試す相手として、
魔物は都合が良かった。
今更だけど、魔物愛護団体とかいないよね?
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入り口付近には弱い魔物しか居ないので、
とりあえず森の奥まで進む。
すると以前も来たことがある、
開けたところに出た。ここは森の主的な
魔物と出会った場所だ。
その当時は、魔物を食べたら何か変化が
あるかもと思って調理したものと、
生きたままの状態で食べてみたけど、
結局何も変わらなかったな。
そんな失敗を沢山して
試行錯誤した結果の臓器移植なのだ。
――あ、でも今後人魚的な魔物に
出会えたなら、また食べてみるのもいいかな。
人魚を食べると不老不死になるとか
聞いたことあるし。
歳を取らない、肉体が劣化しない。
永遠に鍛錬を続けられる。圧倒的な力を手に
入れる上で不老は都合がいい。
「――? なぜ人間がここに居る」
そう言って急に現れた男の人は変な見た目。
何だこの人? 纏ってる魔力が変な感じ。
「まぁいい。貴様、
以前ここに居た竜を知っているか?」
竜、竜? あ……、森の主さん。
竜田揚げにして食べちゃった、とは言えないよな。
「いえ、知りませ……」
いやちょっと待て。俺が目指すのは絶対王者。
言動にも気を遣わないといけない。
俺は個人的に、強い人が自分の強さを隠した
態度をとるのは卑怯だと思うんだ。
だって舐められるような言動をして、
もし喧嘩になった時、相手は力の差を
知らずに挑んで負ける訳だ。
前世好きだった作品の受け売りだけど、
力には責任が伴う。これが俺の持論。
相手から視線は外さず、常に呼吸は一定に。
強者の余裕を見せて相手に告げる。
「さぁ、知らんな」
我ながら素晴らしい絶対王者的発言。
前世もしかしたら必要になるかもと
思い、帝王学の本を読み漁っていたのだ。
軽々しく口を開かない、
感情を露わにはしないのだ。
まぁ王様みたいな
責任や器の広さは求めてないけど。
「……そうか。念のためもう一つだけ聞こう
貴様はなぜ、ここに居る」
なぜ? なぜとは?
「…………ちょっと散ぽ」
「ここは私が認識阻害の魔術を使い、
竜を待機させていた場所だ」
oh……。
「貴様何者だ?」
何者も何も、一般人だしなー。
認識阻害とか言われても、当時は
大きな魔力を感じてふつうに来れたし。
ここは1つ穏便に。
「何者でも無い、名乗る名など無い」
「……そうか。なら、
力ずくで聞かせてもらおう」
――ッバ!
そう言って男の人が地を蹴って
こちらに真っ直ぐ踏み込んでくる。
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――ッシュ!!
一瞬で距離を詰めた男の人が
俺の顔の中心めがけて手刀を突き出す。
いきなりの戦闘! 対人戦は初めてだ!
この世界の人ってみんなこんなに野蛮なのか!?
だが俺は絶対王者。
その場を一歩も動かず手をポケットに入れたまま、
首を傾げてそれを躱す。
「ほう、もとより寸止めにするつもりだったが
今のを躱すか。貴様相手には殺すつもりで
丁度よさそうだな」
――ッヒュ、シュバ!
次の瞬間、突き出した手刀を引いて、
反対の拳を俺の頭めがけて突き出すが
既に俺は男と背中合わせに背後を取っている。
「……ッな!」
「フッ……、残像だ」
男の人がすぐに振り返ろうとするが、
その時にはもう俺は男の方を向いており、
真正面から向き合う。男の人が目を見開いて、
思考が停止した様子。
――ゴシャ! ――ドズゥ゙!
「ぐぁ!」
――メギャ゙!!
「……ッんぐぅ゙!」
その一瞬の隙に俺の拳は、
男の人の顎を、そしてみぞおちを殴り、
腹を抱えて前のめりになったところを、
顔面に膝蹴りを入れる。
「ッ貴様ァ……」
「どうした、殺すつもりでくるんだろう?」
「――ッ! あぁ、望み通り殺してやる!」
直後、男の人の魔力が増大する。
「ックククク、
深淵王……だったか? それの力だ!」
「まさかこの力を
使うことになるとはな、人知を超えたこの力!
貴様に見せてやろう!」
深淵王? そこそこかっこいいじゃないか。
「ほう……、ならば見せてもらおうか。
その力とやらを」
男の人が視界から消える。
――ヒュン! ヒュヒュン!!
目で捉えることができないほどの
超高速の移動。
でもそれは常人ならの話。
俺にはハッキリと見えている。
動き回りながらドヤ顔してるのも、
速さを制御しきれてないのか、
実はところどころ転びそうになっているのも。
速さで誤魔化そうったって、そうはいかない。
――ビュ!
「死ねぇぇぇぇ!!」
散々周りをぐるぐる動き回って、
最後には背後から叫びながらの奇襲かよ。
奇襲なら叫ぶのはナンセンスだし、
お得意の突きなんて、力の制御がお粗末で
狙いがずれてる。これでは即死には至らない。
「……浅いな。お前に見せてやろう、
真の力。その一端を」
……ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ。
「頭が高い。平伏せ」
――ズゥン。――ッドォォン!!
「ガハッ!!」
大気が震えたその直後、俺を中心に
時空は歪み、圧力が掛かり男の人は
押し潰され、地に伏した。
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俺は魔術を解く。だって殺す気なんて無いし。
「……ッなんだ、なにが、どうなっている。
いったい何の魔術だ」
「なに。大したものではない、ただの重力だ」
「ッ重力だと!? バカな!
人間の身でありながら、それは神にも等しき力!」
「なんの魔術をどう解釈すれば……、
いやそれよりも、それを実現する魔力量!
化け物め!」
地面に這いつくばる男の人が
ボロクソに言ってくる。悪口なんだけど、
俺にとってはそれ以上に褒め言葉だ。
「……さて、
深淵王とやらについて教えッ……」
「なぜだ!」
「な、なぜって……?」
いきなり問われて
びっくりした俺は聞き返す。
「なぜ貴様はそれ程までの力を有する!」
なーるほどね、圧倒的な力の秘密。
絶対王者らしく教えてあげようじゃないの。
「いいだろう教えてやろう。
たゆまぬ努力と鍛練、研鑽。そして、
限界を超えるための試行錯誤によるものだ」
「いいやわからぬ、わからぬぞ!
そこまでする理由は何だ!」
「ただ強さを求めたのみ。
他に理由など無い、ただの憧れだ。
その為なら人を捨てることだって厭わない。
俺が求めた強さはそういうものだ」
少しの沈黙の後、
男の人は俺を睨みながら口を開く。
「…………『頭がおかしい』んじゃないか?
ただ強さを求めた? ただの憧れだと?
笑わせるな! 『バカバカしい』!
『くだらない』!」
「なにも特別ではない、信念もない。
『する必要の無い無駄な努力』だ!
貴様はただのッ……」
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男の発する言葉のひとつひとつに腹が立ち、
気がついたら口が動いていた。
「――――それで? だから何だ?
強さを求め、強くなるのに何か特別な、
崇高で唯一無二の理由がなくてはいけないのか?」
絶対王者らしくない。
「違うだろ? 自分が納得できるだけの理由の無い
相手に負けたから。ただそれだけの八つ当たりだ」
言い返す必要はない。
ただの負け犬の遠吠えだ……、なのに。
「お前が負けたのは、お前の言う
無駄な努力が足りなかったからだ」
「一方的に勝負を仕掛けてきたのはお前だ。
返り討ちにあったのもお前だ。
責任は全てお前にある」
俺は男を見下ろしながら淡々と告げた。
重なってしまったんだろう。
前世で自分の夢を、憧れを否定された時の言葉と。
「うるさい、うるさいうるさい!!
人間風情が調子に乗るなぁぁ!」
「貴様も道連れにしてやる!!」
叫びを上げた男の
周囲の魔力が収束し圧縮され、光り始める。
「ぐぉぉぉぉ!!」
――ドォォォォォン!!
自爆した。なんでその行動に出たのか
意味がわからない。
気分が悪い。後味が悪い。
――ッポツ、ポツン。ザーー。
静寂した森に雨が降る。
急なシリアス展開は求めてないんだよ。
今日はもう疲れた、帰って寝よう。
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