第28話 ちなみにヘイトは全部俺に向いている。
試合開始直前。
「フレアー! そんなインチキ野郎
ぶっ飛ばしちまえー!」
「そうだそうだー!」
観客たちが声を上げる。
するとフレアが口を開く。
「黙りなさい!」
彼女はただ一言そう叫んだ。
「インチキなんかじゃないわ。
貴方の実力は本物よ。それを理解できない
アイツらはただのバカね」
「へー、ありがとう?」
彼女の恐らくフォローに対して礼を言う。
「そ、それでは試合開始ぃぃ!」
そして審判が合図をする。
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彼女は動かない。
剣も抜かない。
様子見か……。
――ズズズズ!
かと思えばゆっくりと剣を引き抜いた。
剣を引き抜く際、鞘と刃の間で火花が散る。
……かっこいいな。
タッタッタッタ。
彼女はこちらへゆっくりと歩み寄ってくる。
――ジワ、ジュゥゥ。
そして、彼女の歩いた箇所が焼け焦げている。
火……、熱かな。じゃあ火属性か。
――タ。
彼女が歩みを止める。
あと一歩踏み出せば彼女とぶつかる。
それ程まで距離が近い
――バキャン!!
俺の剣が破壊される。
彼女は剣を振り下ろしていた。
凄まじく速い? 否、重い。
――シュ。
彼女の剣先が俺の首に当てられる。
「降参して、貴方の負けよ」
一連の光景を見ていた審判、観客のすべてが
唖然とした様子。
俺は彼女に告げる。
「……フレア、だっけ。君の近くは温かいね」
俺の言葉を聞いた彼女は目を見開く。
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「それに気づいたとして、貴方の剣はもう――」
彼女もようやく気がついたようだ。
俺の剣先も彼女の首に当てらていることに。
お互いが剣先で首突く異様な光景。
――ドッ!
凄まじい力で踏み込み、後退するフレア。
「……こうなるのが嫌だったから
武器を破壊して早めに決着をつけようと
思ったのだけど、失敗ね」
そう、彼女は慎重だった。
その慎重さ故に相手油断させ武器を破壊し
強制的に戦闘不能を測ったのだ。
「こうなってしまった以上、
真正面からぶつかり合うしかないわね!」
――ブォォォォ!!
そう言った彼女は思い切り剣を振る、
その剣筋を追うように炎が燃え上がり壁が作られる。
タタタタタタ!
炎から出てきた彼女が俺の周囲を走り回る。
すると走った後にも炎の壁が作られ、
彼女の炎に完全に包囲される。
こうなったらもう、
彼女がどこから来るのかわからないだろう。
グルグル回る彼女。どんどんと炎が迫ってくる。
そして炎の壁との距離はどんどん狭まり、
目と鼻の先まで来ている。
一歩でも動けば火傷じゃ済まないな。
――パキン!
俺の足元が凍らされる。
――ブワ!
彼女が目の前の炎の壁から飛び出し、
斬り掛かってくる。
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彼女の魔術は一言で言えば熱。
体温を操作して身体能力を向上させていて、
熱を操作して炎も氷も生み出す。
足を拘束され、炎に包まれ、
ゼロ距離で斬りかかられている。
避けられない。そして避ける必要もない。
――ッブン!
「――――ッえ!?」
彼女は驚愕する、なぜなら振り下ろした剣が
俺の体を通過したから。
寄生型ハーヴェスの時と同じ。
次元が違う。ぱっと見そこに居ても、
俺の体は別の次元にある。
炎の渦の中、彼女の腹部に拳入れる。
そして彼女に告げる。
「もし、このまま俺が魔術を解いたら
どうなるだろうか……」
それを聞いた彼女は、青ざめた顔をしている。
原理や詳しい能力は理解できなくても、
何となく察しはつくのだろう。
「あ、……、貴方……」
彼女が何か言おうとするが、無視して続ける。
「降参してほしい」
ただ一言だけ告げる。
すると、彼女はコクリと頷いた。
ちなみにこれはブラフだ。
物質と物質が重なり合った状態で
魔術を解いても弾き出されるだけだろう。
……たぶん。
俺は腕を引き抜き、彼女も魔術を解く。
そして彼女が口を開いて言う。
「降参……、するわ」
審判は困惑した様子。
「え……? 勝者……、
26番、アル・ガラクシア……」
審判の言葉に観客たちもざわめいた。
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「アル……、まさかお前が
ここまで上がってくるとはな……」
強者と化したユージーンが呟く。
「ふっ……、まさか俺に
これほどの力があったとは……」
それに乗っかる俺。
ここまでギリギリ勝ち上がって来た
ユージーンの株は、かなり上がったようで
熱狂的なファンが居るほどだ。
ちなみにヘイトは全部俺に向いている。
さっきのフレアとの戦いだって、
俺はその場から一歩も動いておらず、
観客からすればなぜかフレアが降参して
戦わずに勝利を収めただけなのだ。
「遂に決勝戦だな……、
まさか俺とお前が戦うことになるとは……」
ユージーンがそう言う。
「ああ」
そう答えると、遂に最後の時が来た。
俺とユージーンはステージに上がって
決勝戦へと進むのだった。




