第26話 もとより人を辞めることは覚悟しているのだ。
学園が再開し、平穏な日常が戻る。
……ことはなかった。
「おいアルぅ……、どうするよ?」
懐かしのユージーンが問う。
「どうするもこうするも、できる限りの事を
やって、あとはなるようになれ。だな」
3日後、この学園で学園祭が開かれる。
俺とユージーンは、その学園祭のイベント、
異種混合武闘大会に出るのだ。
異種混合武闘大会では、騎士も魔術師も
なんであれ出場する全ての生徒同士が戦い、
優勝者には賞品が与えられるのだ。
俺はその賞品が欲しいユージーンに
頼まれて出場するのだ。ユージーンか俺の
どちらかが優勝できれば、賞品はユージーンの手に、
ということらしい。
それと、もしも俺とユージーンが
当たった場合は俺が負けることになっている。
「はぁ……、いやまあ俺なんかが
優勝できる訳ないんだけどよぉ」
ため息をついたユージーンが
こちらをチラリと見る。
「……なんだよ」
俺が問うとユージーンは口を開く。
「いや、やっぱ無理そうだな……、って」
俺もやっぱ当日バックレようかな。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
自分のことを強いとは思う。
基本的な鍛錬から激しいものまで行ったし、
肉体改造から始まり、魔術式を肉体に刻むに至る。
俺は次のステージに進む。
これまで戦ったハーヴェス・宇宙人から
作り上げた血清。名付けて超人ならぬ宙人血清だ。
これを投与すれば、
俺は更なる高みへと登れるだろう。
血清の効果は肉体の魔力適正の向上。
いくら魔力を核融合エネルギーに変換
しているとはいえ、元がゴミなら
生み出されるものもゴミなのだ。
血清の効果で俺は魔力の質、量、扱いなど、
全ての能力が向上する。
ただ血清を打つと、人間であることに
変わりはないが、より宇宙人に近い存在になる
と思われる。
上等だ。既にこの肉体は
魔物の臓器と筋肉を人の皮で包んでいる状態。
その上に魔術式によるタトゥーをいれてる。
今更宇宙の血が加わろうとどうってことない。
今後は、眼球など交換していないパーツを
魔道具に置き換えることも考えているのだ。
もとより人を辞めることは覚悟しているのだ。
強くなれるなら悪魔や魔王、神とだって 契約する。そしてこの魂すら捧げよう。
――プシュッ。
俺は血清を打った。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
武闘大会当日。
参加者が多いので、
18ブロックに分けられて始まる。
1ブロックにつき参加者は10名。
それをトーナメント形式で進めていく。
その後各ブロックの優勝同士が同じ形式で
闘い勝ち上がっていく。そこで優勝すれば
賞品が貰えるという訳だ。
「おおおおい……、アルるるるるる」
ユージーンが震えている。
「落ち着けよ……」
これから抽選を行い、どのブロックで
誰と当たるのかを決める。
抽選のやり方は単純で、外から中が見えない
箱の中身の抽選用紙を引くだけ。
――ガサガサ、ゴソ。
26番。
「おい、アル……、何番だった?」
「26番だ」
「おおお俺、42番……」
ユージーンと番号を確認し合う。
「それじゃ、俺は3ブロックだから
ここでお別れだな」
「おう、がんばえよ……」
歯を抜いた直後みたいな
喋り方をするユージーン。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
各ブロックでの試合終了後。
「なんか、優勝したわ」
「すげーな、よかったな」
優勝したことを俺に報告するユージーン。
「いやー、俺って強かったんだなぁ」
イキるユージーン。
「でもよ、アルも優勝したんだろ?
ラッキーだったな!」
「おう、ありがと」
今回の抽選は、俺が細工をさせてもらった。
魔術で抽選の結果を
ちょちょいといじらせてもらったのだ。
ユージーンのブロックには、彼が少し苦戦
しながらも、余力を残して勝てるくらいの
相手のみを集めた。
俺のブロックには、ユージーンが
勝てなさそうな相手を集めた。
次の俺とユージーンを入れた計18名での
勝ち上がり試合では、最後に俺とユージーンが
当たるようにしてある。
そしてこれからユージーンが当たる相手は
全員、彼がギリギリ負けるくらいの強さだ。
抽選の結果をいじくれても、
参加者の強さまではいじれない。
なので、ユージーンにはプレゼントを渡す。
「ユージーン、これやるよ。
次からの試合で使えよな」
「んだこれ? まぁ受け取っとくわ」
ユージーンには俺お手製の剣を渡した。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
これから俺が闘う相手は全員強い。
なぜならユージーンが100%負ける相手を
根こそぎ俺の方に集中させたからだ。
面倒そうなのは後半の1、2名って
ところかな、ユージーンは俺の剣があれば
問題無いだろう。
……ということで、そろそろ時間だし
もうひと頑張りしてきますか。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「うっひょー! 信じらんねぇぜ!
俺の真の力が遂に解き放たれちまったみてぇだ!」
力に溺れたユージーン。
「そりゃ凄いな」
「なんだよ! 反応薄くね?
ていうかお前も順調に勝ち進んでんじゃん」
ユージーンの言う通り、残るはお互い
あと2名。ここからが本番だな。
「なあ、あの26番と42番……」
「やっぱおかしいよな、42番はなんか……、
強いのかもしれないけど、26番は覇気がねぇ」
コソコソと声が聞こえてくる。
「42番はそこそこ頑張ってるけど、
26番は大体相手が勝手に負けてんだよな……
不戦勝とかズルだろ」
観客たちの言い分もわかる。
だって実際、これまでの俺の相手は全員
技の暴発や自爆。なんならコケて退場の奴もいた。
もちろんそんな偶然はない。俺がやった。
――コト、コト、コト。
「26番は君かな?」
そう言って現れたのは金色に青い瞳、
鍛え上げられた体格の男。
「僕は君の次の対戦相手、
ケメイン・オトコマエ。挨拶をしに来たんだ」
「……俺はアル・ガラクシア。よろしく」
ケメイン、名前は聞いたことがある。
この学園でもトップクラスの実力者だな。
挨拶は口実だろう。
試合前に相手の力量を測りに来たってところか。
ケメインが口を開く。
「さあ、そろそろ試合が始まる。行こうか」
「そうだね」
ケメインの後に続いて俺もステージへ上がる。




