第25話 このケモミミとかモフモフしててたまらん。どさくさに紛れて触っとこ。
そろそろ学園が再開するので、
俺はトータスから王都へ戻った。
エイペックスのみんなには改めて協力して
もらって、お金はかなり稼げたのだ。
彼らの仕事柄、また生きて会えるかは
わからないが、再会できたときは
ゆっくりと話でもしようと思う。
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俺はカテドラルの拠点に来ている。
マーシアと約束があるのだ。
「あれ? アヴァロン様!」
後ろから声を掛けてきたのはジュピカ。
「アヴァロン様も訓練所に用があるの?」
「まーね」
ジュピカの言う通り、訓練所に用があるのだ。
「アヴァロン様、お待ちしておりました」
そう言って出迎えてくれたのは、
少し癖のある赤毛の長髪と赤色い瞳。
肉付きのいい体格で、
凛とした表情のマーシアだ。
ちなみに彼女のチャームポイントは、
もふもふの尻尾とケモミミだ。
「ご苦労」
出迎えてくれたマーシアに礼を言う。
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――カッ! カッ!
木剣同士がぶつかり合う。
「力み過ぎです!
もう少し力を抜いてください!」
「ああ」
俺はマーシアに、よくこうして剣の練習に
付き合ってもらっているのだ。
彼女は以前、とある王国で騎士団長を
務めていたらいのだ。
なので彼女の剣の腕は非常に良く、
ぶっちゃけ学園で習うよりもずっと上達する。
そして組織でも教官を務めてくれている。
なぜ俺は彼女に剣を習っているのか、
そんなの決まっている。俺は剣術に関しては
ど素人なのだ。
いや正確にはど素人だった、だ。
今ではそこそこ上達したからな。
俺の戦闘スタイルは基本魔術だより。
もし魔術が制限された状況ならどうなることか。
――ッカァン!
マーシアの木剣が、俺の木剣を弾き飛ばし
剣先が俺の首を突く。
「参った……」
単純な力だけでは絶対王者にはなれない。
技をもっと磨く必要がある。
「もともと姿勢や体幹はしっかりしています。
肉体に関しては正直、人間の域を超えています。
剣の上達も凄まじく早い。素晴らしいです」
マーシアがベタ褒めしてくれる。
「マーシアこそ、相変わらずいい腕だ」
「――! ありがたき御言葉です……」
俺がそう言うとマーシアが頭を下げる。
そして尻尾フリフリ。
「ねーアヴァロン様、
なんでマーシア相手だと話し方が違うの?」
俺とマーシアの練習を観戦していた
ジュピカが聞く。
「――え」
ジュピカの言葉を聞いたマーシアが固まる。
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「あたしやメルが相手の時はもうちょっと
友だちみたいに話てくれるのにさ」
ジュピカが追い打ちをかける。
「あ、あああアヴァロン様……、
いいい一体どういう事ですか?」
激しく動揺したマーシアが俺に問う。
「いや……、別にふつうだけど」
俺はそう答える。
あんまり気にして無かったけと、
確かにな。無意識にマーシアの堅苦しさに
つられてたのかな。
「えー、そうかなー……。
いつもはもうちょっと優しいそうだけどな」
そう言ってジュピカがくっついてくる。
「優しそう……? ――というかお前!
なに馴れ馴れしくアヴァロン様にくっついている!」
マーシアがジュピカに怒鳴る。
「いーじゃん別に、
いつもこれくらいしてるよねー?」
「うーん、まあ」
ジュピカにそう答える。
ドサ――。
「そんな…………、私だけ……」
マーシアが座り込んでしまった。
というかジュピカもマーシアに対して
やけにしつこくないか?
マーシアの反応を楽しんでるような、
あ、マウント取ってるのか。
この前の集会の時、
メルティアと一緒に注意されてたし
たぶんジュピカは日常的にも注意されてる
タイプだからな。
日頃の恨みをここで晴らしてるのか。
「アヴァロン様……、なぜ、なぜですか。
私が獣族だからですか!? それとも私が
女性らしくないから……、ですか」
マーシアが俺に聞く。
おいおい、いつもの女傑はどこいった?
心折れてんじゃん。尻尾と耳が垂れちゃってるよ。
見てられないし、フォローしてあげよう。
「はぁ……、ジュピカ。いい加減にしろよ。
マーシアをいじめ過ぎだ。可哀想だろ」
「――! ごっ、ごめんなさい……」
何気に俺、ジュピカを注意したこと無かったな。
俺は座り込んだマーシアに歩み寄る。
「ごめんな、マーシアはいつも立派だから、
俺も組織の王として見習わないとって
思ってたんだ」
ごめん嘘。話し方とかふつうに何となく。
この言い訳も今思いついた。
「アヴァロン様……」
涙目のマーシアが俺を見つめる。
俺はマーシアの頭に手を置く。
そして撫でながら話を続ける。
「自分が獣族なの、気にしてたのか?
俺は獣族かわいいと思うけどな……」
犬みたいでかわいいし。
このケモミミとかモフモフしててたまらん。
どさくさに紛れて触っとこ。
「あ、アヴァロン様……、
かわいいって。それに耳……」
少し恥ずかしそうなマーシア。
「マーシアはさ、充分女性らしいと思うよ。
俺は強かな女の人好きだよ」
俺は強い人には敬意を持つのだ。
「すすすすす好き!?」
今日一デカい声でたなマーシア。
「もー! マーシアだけずるっ!
あたしだって撫でられたこと無いのにー!」
不満そうなジュピカ。
「ということは私だけ……?」
マーシアが呟く。
「アヴァロン様! 私は?」
ジュピカがそう言うと
マーシアがスッと立ち上がる。
「お前はもう充分だろ、
それより任務は終わったのか?」
「うっ……、まだ、だけど……」
「ならさっさと任務へ戻れ!」
ジュピカにそう言うマーシアの
尻尾を見るとめっちゃフリフリしている。
元気になったみたいで良かった。




