第20話 以上だ殺し合おう
さて、クリスたちは行ったみたいだな。
「出てきなよ、トータスを出た辺りから
ずっとついてきてたでしょ」
俺は一見、他に誰も居ないその場でそう告げる。
――ザ。
「さすがアヴァロン様! 最初から、
あたしが居るって気づいてたんだ!」
そう言って元気よく姿を現したのは、
濃い緑色のボブカット。
キラキラと綺麗なゴールドの瞳。
スラッと背が高くてスタイルのいい……、
ジュピカだった。
あり? てっきりメルティア辺りかと
思ったんだけどな。
「今日はメルティアじゃないんだね」
「えー、メルが良かったの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどね」
あれからメルティアがどんな調子なのか
ちょっと気になっただけ。
「でも、メルはねー、最近ちょっと変かな。
アヴァロン様のこと旦那様って言ってるし、
なんかちょっと暗い気がする」
「そ、そうか」
……そうだよな。正直よくわかってないけど、
彼女のことを傷つけてしまったのは間違いない。
ちゃんと向き合わないとなー。
「ところでジュピカは何の用なの?」
「あたしはねー、任務!」
「へえー、任務ねえ」
「うん、トータス周辺で人型リトマスの
目撃情報があるからさ、その調査に来たんだ
けど、当たりみたいだね」
あー、あ? ああ! さっきのか!
「え、てことはこの奥には……」
「そう! 居ると思うよ! ハーヴェス!」
やっべえじゃん、クリスたち行っちゃったよ。
「でも、アヴァロン様は
最初から気づいてたんだよね!」
「……うん」
「この前の寄生型ハーヴェスの時も、
最初から気づいてて、あえて宿主の子と
対話して、状態を確認てからハーヴェスを
引っ張り出して倒したってメルに聞いた!」
「…………うん」
メルティア……、話を盛ったようだな。
「じゃあ行こっかアヴァロン様!」
「うん」
「なんかデートみたいだね!」
「うーん」
適当に答えて、
俺とジュピカは遺跡の奥へと進んでいった。
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――カン! カンカン!
――カカン! カカカン!
「やるじゃないか、人間の割には」
「お前の方こそ、
魔物の割に剣が上手じゃないか」
クリスとハーヴェスは、両者共に
不敵な笑みを浮かべて斬り合っている。
だが、クリスの鎧はボロボロで
剣は刃毀れしている。
片目はつぶれ、口には吐血の跡がある。
相手のハーヴェス紫色の肌、
黒目と金色の瞳、腕が4本あってその全てに
剣を握っている。
前線に立つのはクリスだけ。
その後ろでは、意識を失って倒れている
ガルドをセシルが癒している。
アネットはクリスとハーヴェスの
激しい動きについていけず、
援護すらできていない様子。
――カン! カンカンカン!
カカカカン!
クリスはたった1本の剣で、右から、
次は左から、次を防いでもまた次がくる。
終わりの見えないハーヴェスの超連撃を
防ぎつつ、攻撃を加える。
――ザ、バシュ! ――ボト。
直後、4本の腕全てに握られた剣から
繰り出される超連撃を遂に捌ききれず、
クリスの片腕が切り落とされる。
「…………ッ!」
だがクリスは声を上げない。
彼の精神力は並の人間のそれでは無かった。
そして彼の目はまだ死んでおらず、
相手を倒すべき敵として見据えている。
「腕を斬り落とされても発狂しない胆力。
認めようお前は強い。だが少々時間を掛けすぎた、
次の1振りで殺す」
ハーヴェスはそう言って
4本の内1本の剣を振り上げる。
クリスは残された片腕で剣を握り、そして構える。
「さらばだ」
――ッブン!
クリスの首めがけて剣が重く振り下ろされる。
「ッんぐぅぅぅ!!」
――キン! ――バリィィン!!
クリスが強く力んで声が漏れる。
自分の剣で相手の攻撃を防ごうとするが
抵抗も虚しく、剣が叩き折られる。
それでも振り下ろされた1振りは止まらず、
今、剣先がクリスの首元に……
――ギィ゙ーーン!
漆黒の剣先が、その1振りを止める。
剣先と剣先がぶつかり合い、鋭い金属音が
鳴り響く。
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奥へと進むと、大きな部屋があった。
俺とジュピカが目にしたのは、
満身創痍のエイペックスがハーヴェスと
凄まじい剣戟を繰り広げる様子。
そして今まさに、クリスの首元に
ハーヴェスの剣が迫ろうとしていた。
「ハーヴェスは俺が殺る。ジュピカは他を頼む」
「了解!」
――ダッ!
王はジュピカに用件を短く伝へ、
急いでクリスとハーヴェスの元へ向かう。
――ハタッ。――ギィ゙ーーン!
ハーヴェスの剣を受け止める。
「「――!?」」
その光景を見たクリスとハーヴェスが驚愕する。
そして残りの3本の剣が振られるより速く、
王は剣を空中に置くように手放す。
剣が落ちるよりも速く、
ハーヴェスの顔面を殴り飛ばす。
――ド。ヒュウン! ――ドォォォォォン!
ハーヴェスが壁に叩きつけられる。
「な……、何が起きたんだ……」
クリスが唖然とした様子で声を漏らす。
「後は俺に任せて下がっていろ」
王がクリスに1言だけ告げる。
――パラ、ガラララ……。
「速いな、凄まじく。我が反応しきれない程に」
ハーヴェスがそう言って
瓦礫の中から起き上がる。
「タフな奴だ」
俺はそう呟く。
筋肉質の巨体に腕が4本。
その見掛け通り、タフネス。
「漆黒の騎士よ、名は何という」
「……アヴァロン・ザ・カテドラル」
王は短く名乗る。
「アヴァロン……!
深淵王アヴァロンか!?」
クリスが驚く。
「そうか、アヴァロン。
我はアリオウ。以上だ殺し合おう」
「ああ」
そうして王はアリオウと向かい合った。




