第2話 火どころか、太陽すら手のひらの上なのだ。
あれから10年経って、現在は12歳。
魔力だけでは強くなれないので、
この10年間はひたすら体を動かして
運動神経を育て続けた。
具体的には、筋トレに柔軟に有酸素運動。
他にも、剣を振る。拳を岩に打ちつける。
滝に打たれる。瞑想をするなど、
思いつく限りの鍛練を行った。
それでも肉体的な限界はあるわけで、
せいぜいできるのは、ぎり音速でパンチを
打つことくらいだった。
なので、その限界を超えるために考えた結果、
俺は文字通り肉体を改造するに至った。
水中での浮力が失われない程度に
骨密度を上げ、筋繊維1本1本を人間の
ものから取り替えるなどなど。
その結果パンチは余裕で音速を超えるし、
脚力に関しては垂直に30m以上跳べる。
こんな事ができたのも魔力あってこそだ。
だけど魔力のスペックはこれが限界じゃない。
魔力というのは純粋なエネルギーで、
それを感知し操作する事で更なる強さが
期待できるのだ。
魔力は体内で生み出される。
へその辺りを中心に全身に巡らせ、そして放出。
放出した魔力を圧縮して纏う。
これが魔力の基礎、身体強化。
この状態なら因縁の相手、
車なんて簡単にスクラップにできるだろう。
だが、これが圧倒的かと言われるとまだ弱い。
だってこの世界の人間にとっては
存在して当然の力なのだから。
魔力は純粋なエネルギー、
それを生み出し、操れるということは
神にも等しいと言えるのではないか?
たとえばただ魔力を放つだけで、
簡単に都市1つを滅ぼせるだろう。
果たして、
人にこんな力が許されていいのだろうか。
だがまあ、あくまでも理論上の話。
なぜなら魔力は無限ではないから。
個人の魔力総量というものがある。
そして俺自身、魔力の操作も完璧ではない。
もし100%完璧に操作できるようになったなら
核ミサイルですら遅すぎるし、重すぎる、
そして非効率なものに見えるだろう。
つまるところ、
火どころか太陽すらも手のひらの上なのだ。
とはいえ魔力というのも
この世界の人間の身体機能の1つみたいな
ものなので、これも鍛えれば増える。
結局大切なのはたゆまぬ努力と鍛錬なのだ。
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魔力だけで、そこまでできるなら
魔術なんて必要ないように思えるが、
実際はそこまでできないから、
みんな魔術を使うのだろう。
ちなみに魔術は、全部で5つ属性がある。
火、水、地、光、闇の5つ。
この内の火、水、地は応用が利いて、
火は雷、水は氷、地は風になる。
光と闇は応用が利かない代わりに、
他の属性よりも強力らしい。
そして属性は1人1つと決まっていて、
俺は闇だった。
光と闇は他の属性に比べて応用が利かない上、
汎用性が低いらしくいので別の属性が
よかったが、この世界の魔術の仕組みに
気がつくと案外わるくない。
要は魔術というのは連想ゲームで、
たとえば火といえば熱。
熱といえば電気もそう、つまり雷。
といった感じ。
他の属性もこれと全く同じなのだ。
とはいえ、全く関連性の無いものは
成立しないけどね。
だから、魔術師の力量というのは
どこまでこれを連想し成立させられるか、
みたいなところだろう。科学者みたいだ。
闇というものの本質から、
連想し、解釈を広げる。何だっていい、
科学的、宗教・哲学的、いろいろな視点から
アプローチするのだ。
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試しに軽く強化しただけの拳で、
目の前の大岩を殴ってみたところ一撃で粉砕された。
――ヒュ! ――ドゴォ゙ォ!!
音が送れて聞こえてくる。
一流の武術家みたいな芸当だ。
前世よりそこそこ強くはなっただろう。
でもまだ、俺の求めた強さには程遠い。
そもそも強さの基準とはなんだ?
車を簡単にスクラップにできることか?
都市1つを滅ぼせることか?
核ミサイルを超越することか?
どれも違う。俺の求める圧倒的な力、
それを一言で表すなら『宇宙』だ。
宇宙というものに対して、
車だの都市だの核ミサイルだのは
あまりにもちっぽけなのだ。
そういう意味ではそれこそ、
手のひらの上で太陽を作れればそれは
俺の求める圧倒的な力と言えるだろう。
だが俺の目指す絶対王者は、
ただ強いだけじゃない。
圧倒的な力で人の上に立ち、
偉そうな態度で王座に君臨する。
そして実際に偉い。
つまりかっこいい。
だが今のところ俺は強さも中途半端だし、
君臨するための王座も無い。
手っ取り早くどこかの組織を乗っ取ろうか、
はたまた国家転覆でもしてみるか。
いや、それは浅はかな考えだな。
自分の力が、この世界でどれほど通用するのか
まだわかっていないし、テロリストの肩書きは
ダサい気もする。
今は考えるだけ無駄だろう。
ひとまず強くなって、圧倒的な力を
手に入れることに集中しよう。
夜空の下、天を見上げる。
瞳に映るのは星空、いや宇宙。目の前のそれに
手をかざしてひとまずはそう決めた。




