第15話 名付けて可愛い過ぎる君、作戦だ
――ガヤガヤ、ザワザワ。
ここは学園のめちゃ広い庭園。
今はメルティアと2人で星を探しているところ。
「ねえ、目星はついてるって
言ってたけど、誰なの?」
隣のメルティアに問う。
「……居ました、あの女です」
彼女はそう言って星に視線を向ける。
視線の先に居たのは、
黒髪ロングで赤い瞳の少女。そして眼帯を
着けていて制服は着崩している。気だるそうな
表情をしていて、どこか達観した様子だ。
「……ホントにあの子?」
俺はメルティアに再度問う。
「はい。調査期間中あの女は
「右手が疼く」や「封印されし力」などと
不審な言動をとっておりました」
メルティアそれは……。
「他にも、常に眼帯を着用していたり、
人目を避けているのか、常に孤立しています」
そりゃあ孤立するでしょうよ。
「でもさ、彼女は違うんじゃないかな?
纏ってる魔力もふつうな感じだし……」
「……ですが言動から推測するに、
正体を隠す為故意に力を封印しているようでして」
……そうか、この世界で厨二病は
ガチな奴と思われてしまうのか。
――ザッザッザ。
「――視線に気づいてないとでも思いましたか?
貴方たちの思惑はお見通しですよ」
厨二女子がこちらに気づいたようで、
近寄ってきてそう告げる。
まずいな、ジロジロ見すぎたか。
遂に本人が降臨してしまった。
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「先程から私に向けられている視線。
宣戦布告、と捉えていいですね?」
厨二女子よ、意図はわからんが
紛らわしい発言をするんじゃない!
「やはりハーヴェス…………」
隣のメルティアがそう小さく呟いて、
厨二女子を睨み、臨戦態勢をとる。
さすがにこれ以上は危険なので
メルティアに小さく耳打つ。
「……メルティア、俺に任せろ。考えがある」
そう言って俺は前に出る。
そして厨二女子に告げる。
「ふッ、気づかれていたなら仕方がない」
「やはり貴方……」
「そう、君に見惚れてしまっていたのさ……」
この窮地を乗り切る為にたった今思いついた作戦。
名付けて可愛い過ぎる君、作戦だ。
「「え?」」
メルティアと厨二女子がハモる。
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この作戦は女の子をおだてて
気分を良くさせ、情報を聞き出す作戦だ。
「な、ななな何を言ってるんですか貴方は!?」
めっちゃ動揺する厨二女子。効果は抜群だ!
「だ、旦那様……、
どういうことですか……?」
なぜかメルティアも
動揺しているがひとまず放置。
俺は厨二ちゃんの目を見つめて続ける。
「ずっと気になっていたんだ、
君のこと。一体どんな人なのかって……」
どういう設定なのかね。
「わ、私は……、別にふつうの魔術師……、
じゃなくて! 選ばれし特別な力があって……」
頬赤らめた厨二ちゃんが答える。
「そうだったんだね。にしても君ってなんか、
……何かしら素敵な感じだよね」
「す、素敵って……、私が素敵……」
いける! このまま押しきる!
「うん、とっても素敵だよ。それで
気になってたんだけど、封印されし力って?」
「えぇ!? きっ、聞いていたんですか!?
うぅ、えっと、その、本気をだすと凄くて!」
「へー」
動揺しすぎて語彙が終わってるな。
すると厨二ちゃんが恥ずかしそうに問う。
「……あ、あの、何で私なんかを
気になってたんですか……?」
「…………その綺麗な黒髪と
赤い瞳に惹かれたんだ」
予想外の質問だったから
少し考えて、定型文的なのを答えた。
「へ、へへへ。
綺麗ですか……、初めて言われた……」
厨二ちゃんがそう呟く。
よし、上手くいったな。
同調したら逆効果だっただろう。
これでメルティアも厨二ちゃんが
ふつうの人間だと気づいたはず。
「メルテ……」
メルティアの方を向いて、
声を掛けようとしたが彼女の様子を見て
言葉を失う。
黒い。真っ黒だ。どす黒い闇。
いつの間にかダークサイドに堕ちていたのだ。
そしてメルティアの厨二ちゃんを見る目。
殺意が宿っている、殺す気満々。なぜだ!?
俺は今の会話で厨二ちゃんの無害性を証明
したつもりだが!?
――ん? 何か呟いて……。
「旦那様どうして旦那様。
私を愛してるって言ったのに旦那様。
愛を誓い合ったのに旦那様。
他の女に見惚れて綺麗って旦那様。
旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様旦那様」
――ギロ。
メルティアが俺に視線を向ける。
そして厨二ちゃんも口を開く。
「あの! えっと、気になってしまって、
お隣の方は誰なのか……、とか」
今更か? なぜ今このタイミングなんだ!?
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今度は厨二ちゃんに視線向けるメルティア。
「誰? 私ですか?
決まってるじゃないですか……」
――ギュッ。
メルティアはそう言うと、俺の腕に抱きつく。
その小さくて控えめな柔らかさを腕に感じる。
……アシェルの方が断然大きかったな。
「ッな! 何でそんなに
くくくくっついて……!」
「当たり前じゃないですか?
私たちは愛を誓い合った仲なんですよ?」
顔を真っ赤にして動揺した厨二ちゃんが問うと、
メルティアは当然の事のように淡々と答える。
愛を誓い合った仲!? いつの間に……!?
「愛を誓い合った仲……?」
そう呟いた厨二ちゃんは絶望の表情。
――なぜ?
そして厨二ちゃんはカッと俺を見て
大きな声を上げる。
「どういうことですか!?
私を弄んでたんですか!?」
――ザワザワ。
何が起きた?
怒涛の展開過ぎて処理しきれない。
この状況、傍から見れば俺は2股野郎だ。
勘弁してほしい! 一体どうすれば!?
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「――俺は本気だよ」
意を決して、真剣に告げる。
「え……?」
――トゥンク。
厨二ちゃんが再び赤くなる。
「は?」
――ギチィ。
メルティアの腕を抱く力が強まる。
「最初から思ってた事なんだ……」
俺は慎重に言葉を選ぶ。
「もしかしたら君も、
そうなんじゃないかって……」
かなり無理やりだが、
厨二病に同調して話しの路線を戻す!
「隠したって無駄だよ、俺の目は誤魔化せない。
でも大丈夫、俺も同じ気持ちだ」
「貴方も私と同じ気持ち……」
手応えあり。厨二ちゃんが理解してくれそうだ。
よし、今だ!
「君も厨二ッ……!」
「――完璧に隠れてたつもりだったんだが
なぁ……。まさか見抜かれるとは」
俺の言葉を遮って、
野太い男の声が辺りに響き、庭園が騒然とする。
声の主を探すがどこにも見当たらない。
先程までダークサイドだったメルティアも
異常を察知して臨戦態勢をとる。
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「バレちまった以上は仕方ねぇわな。
だが、そろそろ頃合いだな。この女の体は
頂くとするぜ」
すると、厨二ちゃんの体から
異質な魔力が漂い始める。
「ど、どういう事ですか!?
魔神王ディアボロネーゼさん!!」
男の声と会話する厨二ちゃん。
声の主と知り合いらしく、
魔神王ディアボロネーゼと言うらしい。
「どうもこうもねぇよ、騙されてたんだよ。
まだわからねぇのか? 相変わらず
物分かりが悪い女だなぁ?」
ディアボロネーゼが続ける。
「寄生した俺を、勝手に選ばれただの
特別な力だの勘違いしてくれたのは
都合が良かったぜ」
「だが毎日、友だちができねぇとか
くだらねぇ相談ばかりしてきやがったのは
鬱陶しくてしょうがなかった」
「そんなんだからお友だちの1人も
できねぇんじゃねぇか?」
「………………」
ディアボロネーゼの言葉を最後まで聞いた
厨二ちゃんは涙目になり、俯いて黙り込む。
すると厨二ちゃんの体から植物の根の
ようなものが飛び出し体にまとわりついて
姿を変える。その姿は人型の植物のようだ。
その光景を見ていた生徒たちは
パニックになって逃げ出し、この場には
俺とメルティア、厨二ちゃんの3人だけが残った。
話の流れで大体察しはついた。
寄生型のハーヴェスが厨二ちゃんの体内に
潜んでいて、厨二ちゃんの勘違いや弱みに
つけ込んでいたと。
どうしてハーヴェスはこうも
胸糞が悪く、気分が悪い連中ばかりなんだ。
「メルティアの言う通りだった。
俺が間違ってたよ」
「旦那様……」
メルティアにそう告げる。
メルティアも状況を理解している様子だ。
「魔神王ディアボロネーゼ……、だったか?」
俺はディアボロネーゼに確認する。
「あぁ? おい人間!
俺をそんな名で呼ぶんじゃねぇ!
それはこの女が勝手に付けた名前だ!
俺の名前はなぁッ……!」
「じゃあもういいや、お前の名前とか」
「あぁ!?」
「それに、これから消える奴の名前なんて
知っても仕方ないだろ?」
「テメェ……、人間の分際でぇ……」
「お前らってホント好きだよな、
人間見下すの。聞き飽きたよ、そのセリフ」
――ハタッ。
俺は漆黒の甲冑を身に纏う。
「旦那様、よろしいんですか?」
「ああ」
王はメルティアの問いに対して、
一言だけ答えた。




