番外編 キリュウが恋人⑪価値観
焚き火のぱちぱちと弾ける音だけが響く夜。
キリュウは腕を組んだまま、ふいにフローナへ視線を落とした。
キリュウ「一つ、言っとかなきゃならねぇことがある」
フローナ「なに?」
キリュウ「俺はちびすけが好きだ。」
あまりの直球な告白にフローナの顔が真っ赤に染まる。
しかし、フローナが返事を返す前にキリュウが続けた。
キリュウ「攫うとか言っといてこんな事言うのもなんだが、ちゃんと言っとかなきゃならない。」
フローナが静かに頷く。
キリュウ「俺は、結婚もしねぇし子どもも作らねぇ。
それは捨てられた時から決めてる。
女をまともに愛せる器もねぇ。
だから、俺といてもちびすけを幸せにはできない。
悪い。」
重く、湿ったような空気。
シェルやレンが聞いたら心配で割り込んできそうな言葉。
けれどフローナは眉一つ動かさずさらりと言った。
フローナ「え、じゃあちょうどいいじゃん」
キリュウ「・・・は?」
フローナ「私も結婚に興味ないし、子ども作る気もないから」
さらっとした声。その軽さに、逆に重みがあった。
キリュウ「え」
フローナ「それに、私もうすでに幸せだから。
キリュウ君がさっき言った悩みって、全部もう解決済みなんだけど。
あと何かある?」
キリュウ「いや・・・なんか拍子抜けした」
フローナ「そこら辺の女と一緒にしないでよね?」
フローナは肩をすくめ、ニッと笑った。
キリュウはぽかんとし、次の瞬間ふっと笑いがこぼれる。
誇らし気に胸を張るフローナの姿に笑い出しそうになる。
キリュウ「はは。やっぱちびすけはちびすけだったな」
フローナ「キリュウ君」
キリュウ「ん?」
フローナ「私も!キリュウ君がだーいすき!!」
その笑顔を見た瞬間、
キリュウは胸の鎖が解けたような、そんな気がした。
♦︎
両思いを確認したあと。
少し照れた顔でフローナを見つめながら、
キリュウが低い声で言った。
キリュウ「もう触ってもいいんだよな?」
フローナ「う、うん・・・」
その返事を聞いた瞬間、キリュウの表情が少しだけ柔らかくなる。
そっと、まるで割れ物に触れるみたいに優しくフローナの頬へ指先が伸びた。
フローナ (わ、キリュウ君、触り方優しい・・・)
胸がぎゅっとなり、呼吸が浅くなる。
そしてキリュウが、ゆっくり顔を近づけた。
フローナ (キリュウ君、色気やば・・・(ふらっ)」
その瞬間。
キリュウ「おい!?」
フローナ「え?」
キリュウ「また鼻血出てるぞ、大丈夫か?」
フローナ「大丈夫。キリュウ君の色気にやられただけだから」
ピッと親指を立ててグーサイン。
キリュウ「あぁ、うん。お前が変態なのは今のでよく分かった」
少し呆れ気味に言いながらも、耳がほんのり赤いキリュウだった。




