番外編 キリュウが恋人⑧またね
風が名残惜しさを煽るように二人の間に吹き抜けた。
帰り支度を終えたキリュウの前で、フローナは不安げに唇を噛む。
フローナ「キリュウ君、ほんとに行っちゃうの・・・?」
問いかけに、キリュウは答えず、ただじっとフローナを見つめた。
ほんの一瞬のようでいて、永遠にも感じられる沈黙。
そしてキリュウは、仲間たちに向き直る。
キリュウ「おい、お前ら10秒後ろ向いてろ」
メリサ「なんでさ」
シェル「向いてやれメリサ」
シェルに促され、メリサとレン、コキアは渋々背を向けた。
キリュウはフローナの前にしゃがむと、そっと耳元へ口を寄せる。
フローナの心臓が、ばくん、と大きく跳ねた。
そしてキリュウが囁く。
キリュウ「次会ったら攫ってく」
フローナ「っ!?///」
耳まで真っ赤になり、言葉が出ない。
もちろん、他のみんなには聞こえない・・・はずだった。
しかしシェルだけは耳がいいので全て筒抜けだ。
シェル(丸聞こえだっつーの)
キリュウはそんなシェルの視線にも気づかず、
それだけを告げて立ち上がると、無言で歩き出した。
フローナは腰から力が抜け、へたりと座り込んでしまう。
去りゆく背を見つめながら、震える声で呼びかけた。
フローナ「キリュウ君!またね!」
キリュウは背を向けたまま、
キリュウ「おー」
とだけ返す。
そして右手をひらひらと振った。
その仕草が、妙に優しくて。
フローナの胸に、じんわりと温かさが広がっていった。




