表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/98

69話 隊長の苦手なもの


森の中は、昼間だというのに薄暗く、木々の隙間から差し込む光がまだら模様に地面を照らしていた。

湿った土の匂い、どこか遠くでギャー!ギャー!と鳴く鳥の声、そして風に揺れる葉擦れの音だけが静かに響いている。


フローナは周囲をきょろきょろと見渡しながら、少し楽しそうに言った。


フローナ「わー!なんかこの森、お化け出そう〜!」


その瞬間、隣を歩いていたレンがハッとしたようにフローナの袖を引く。


レン「フローナさん、いけません。隊長の前で幽霊の話をしては」


声を潜めて、こそっと耳打ちする。


フローナ「え? どうしてですか?」


フローナがキョトンとする。


レン「あれを見て下さい」


レンが視線で示した先。


そこには、少し離れたところで屈み込んで尖った両耳をぎゅっと丸めて塞ぎ、背中を小さく丸めているシェルの姿があった。


フローナ「え?」


フローナは思わず目を瞬かせた。


フローナ「もしかして・・・シェルって幽霊が苦手なんですか?」


レン「ええ」


メリサ「まぁ、僕もあんまり得意じゃないけどね」


メリサが肩をすくめて苦笑する。


フローナ「私も得意じゃないですけど・・・でも皆んながいればヘーキかなぁ」


メリサ「僕も僕も」


フローナはくすっと笑って、最後にコキアの方を見る。


フローナ「コキア君は・・・」


コキア「??」


相変わらずの無表情で首を傾げている。


メリサ「コキア君はこのまんまだよ」


フローナ「ですよね!」


そして、もう一度シェルを見る。


フローナ「でも、シェルの方はダメみたいですね」


メリサ「自分は半妖のくせにねぇ。

大体、隊長は妖怪とか猛獣とだってよく戦ってるじゃないか」


その言葉に、シェルがぎゃっと顔を上げた。


シェル「妖怪は生きてるからいいんだよ!!

幽霊は死んでるんだぞ!!」


必死な叫び声を上げる。

しかし、その威力の無さ。


フローナはくすっと笑ってシェルの前へ一歩進み出る。


フローナ「シェル、大丈夫だよ!

もし幽霊が出てきたら、私がやっつけるから!」


(※本人の中では完全にナイトのつもり)


どやっと胸を張るフローナ。


シェル「ほ、本当に・・・?」


不意にしゃがんだ状態から上目遣いで見つめられ、

ドキッとする。


フローナ「(ズッキューン)うん! 私が付いてるから大丈夫だよ」


シェル「フローナ、ありが・・・」


その時。


ガサガサッ!!!


突然、すぐ近くの草むらが激しく揺れた。


シェル「わぁっ!?」


反射的に、シェルはフローナの背後に回り込み、ぴったりと張り付いた。


が。シェルは身長198cmでフローナは153cmだ。

どう見ても、頭も肩も完全にはみ出している。


「にゃあ?」


草むらから現れたのは、一匹の黒猫だった。


フローナ「シェル、猫だよ?」


シェル「はー・・・なんだ、猫か・・・」


恐怖によっていつもの感知能力もどこ吹く風。

安堵のため息をつくシェル。


レン「隊長、あんた恥ずかしくないんですか。

自分より小さいフローナさんを盾にして」


レンからの冷たい視線を浴びるシェル。


シェル「だって・・・」


メリサ「隊長。幽霊なんてアトラクションくらいでしかいないって。」


レン「そうですよ。幽霊なんてこの世にいるはずないんですから。」


その時、コキアがちょんちょんっとフローナの裾を掴んだ。

 

フローナ「ん?どうしたのコキア君」

コキア「ひとだま」


コキアは森の奥を指差している。

その一言に空気が一瞬で凍りつく。


フローナ「あー、やっぱり気のせいじゃなかったんだ」


フローナがけろりと言う。


シェル「え・・・」


皆がそっと、コキアの指差す先を見る。


そこには、

ふわり・・・ふわり・・・と、青白い不気味な光が二つ宙に浮かんでいた。



レン「・・・・」


メリサ「・・・・」


シェル「わああ!!!」


一番遅れて、シェルが叫んだ。


シェル「ほら!やっぱりいるじゃんか!レン!! メリサ!!」


メリサ「いや、確かに言ったけどさぁ・・・」


レン「論理的に否定したはずなんですが・・・」


二人とも、目だけは完全にひとだまに釘付けだ。


シェル「論理的も物理的もあるか!実際に見えてるじゃん!!」


わーわーと叫ぶシェルの隣でフローナとコキアが冷静に会話をしている。


フローナ「ほんものかな?」

コキア「さぁ、でも、絵本で見たものと似てます。」

フローナ「コキア君、絵本読むの?」

コキア「昔・・・スラに読んでもらいました」

フローナ「優しいんだね、スラ君」

コキア「どうなんですかね」


シェル「なに雑談始めてるの君たちは!」


青白いひとだまは、ふわりと高度を上げ・・・

ゆっくり、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


レン「風もないのにあの動きは・・・」


メリサ「否定材料が消えていくね・・・」


フローナ「とりあえず水、ぶっかけたら消えないかな?」

コキア「ああ、火ですもんね」

フローナ「でしょでしょ〜?」


シェル「君たち、なんか楽しそーだね」


シェルがちょっぴり冷静になった次の瞬間。


ひとだまがふわっと急接近した。


シェル「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


ついにシェルは大パニック。


「キィー・・・キィー・・・」


しかし、奇妙な鳴き声と共に光の中から現れたのは・・・。


メリサ「フクロウ?」


レン「・・・みたいですね」


フローナ「可愛い〜!!」


どうやら、火の玉のように見えていたのはフクロウの目らしい。


数秒の沈黙の後。


シェル「ふく、ろう・・・?」


フクロウはこちらを見て一度だけ首を傾げると、バサッと羽ばたいて森の奥へ消えていった。


完全な静寂が五人を包む。


フローナ「幽霊じゃなかったね」


レン「ええ。隊長、生きててよかったですね」


シェルはその場にへなへなと崩れ落ちるのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ