65話 ケシアの毒
半妖が唯一苦手とする毒、"ケシア"。
その実を煙状にしたものは、人間には害がないが半妖には致命的だ。
今回の敵は人間の男。三人組みだった。
人間の中ではかなりの凄腕の部類だ。
どういうルートかケシアの実を手に入れ、半妖に対抗すべく力を得たらしい。
しゅううっという音と共に煙が辺り一面に充満していく。
レン「煙!?」
メリサ「隊長にそんなもの効くわけないじゃないか」
シェル「・・・!?ぐっ・・・なんだこれ・・・ただの煙じゃねーな、ケシアか?」
シェルは目眩に襲われ、咄嗟に袖で口元を覆った。
レン「隊長!?どうしたんです!?」
敵A「そう、この煙は人間が半妖に唯一対抗できるケシアの実を焚いたもの。
普通の人間には何ともないが、半妖には効くらしいぞ。長く吸えばお陀仏だとよ」
敵B「ははは、情けねぇツラだなぁ」
敵C「全くだ」
シェル「ケシアか、こいつはやべぇ・・・」
足が崩れ、その場に膝を付く。
フローナ「シェル!」
レン「フローナさん、隊長を煙が届かない場所へ!」
フローナ「はい!」
♦︎数分後。
街中まで来た二人。
シェル「はー・・・フローナ悪いな」
フローナ「ううん、それよりホントに大丈夫?」
シェル「あぁ、だいぶ楽になったよ、すぐ離れたおかげで毒が回りきらずに済んだ」
フローナ「レンさん達、大丈夫かな・・・」
シェル「あいつらだけじゃヤバいかもな。結構強かったし。
俺も戻りたいが・・・まず煙対策が必要だな。
あれさえ何とかなれば・・・」
♦︎機転
フローナ「ん?」
ふと街の方をフローナが見ると、市場の露店でガスマスクが売られている。
その瞬間、フローナの目が一気にキラキラと輝いた。
シェル「どした?」
フローナ「いいこと思いついた!」
敵A「半妖に不利なこの場所に、奴が助けに来るはずがない」
敵B「違いねぇ」
敵C「俺だったら来ねぇなぁ」
レン「隊長は戻ってきますよ。絶対にね。策を練ってでも」
三人は身を寄せ合い、シェルが戻るまで必死に持ち堪える。
そして・・・。
シェル「おめーら、待たせたな」
レン「たいちょ・・・!?」
メリサ「え、なんだいそのガスマスクは!?」
敵A「ちっ・・・姑息なまねを」
シェル「シュゴーッ・・・毒撒いてる奴に言われたくねーな」
その後、ガスマスクで完全防御したシェルは圧倒的勝利を収めた。
♦︎戦いの後
シェル「シュゴー・・・」
メリサ「ぶはっ!!」
フローナ「あははっ・・・!」
メリサとフローナは腹を抱えて大笑い中だ。
レンは顔を逸らして、
レン「ククッ・・・」
と、笑いながらメガネをくいっと上げる。
シェル「助けに来たのになぜ笑う・・・シュゴー・・・」
メリサ「いや、その“シュゴー”がツボでさ」
フローナ「わ、私も・・・ふふっ・・・」
コキア「壺?」
(ツボの意味が分からず首を傾げる)
シェル「君のアイデアでしょうよ」
フローナ「ごめんごめん、でも似合いすぎて!」
シェル「シュゴー・・・」
メリサ「ぶはっ!もう、勘弁しとくれよ隊長!!」
フローナ「もうだめ・・・お腹痛い・・・!」
レン「ククッ・・・」
シェル「君たちねぇ・・・」
メリサ「まぁとにかくさ!早いとこ煙が届かないところまで移動しようよ」
シェル「だな! ・・・このガスマスク、持って帰るか」
レン「何気にあなたにとって最強アイテムですしね」
シェル「ああ」




