61話 戦友との再会
昼下がりの市場は人で賑わっていた。
フローナが珍しく目を輝かせながら屋台を見て回っていると・・・。
セイヤ「フローナ!? おい、フローナじゃん!!」
振り返ると、かつて同じ空手道場で汗を流した仲間、
セイヤ、タイガが立っていた。
フローナ「え!? セイヤ!?タイガ!?」
セイヤ「俺たちも旅してんだよ! まさか街で会うとはなー!」
セイヤがガシッとフローナの肩に腕を回す。
タイガ「元気そうで何よりだ!つか、ちょっと太ったんじゃない?」
タイガはフローナの頬をふに〜っと引っ張る。
フローナ「い〜だっ・・・あれ、てか二人だけ?」
セイヤ「いや、イツキもいるぞ」
少し向こうの方からイツキが顔を出した。
イツキ「久しぶり、フローナ。」
フローナ「久しぶりイツキ君」
懐かしい仲間たちに、フローナは目を細めて笑った。
その後ろからシェルたちが歩いてきた。
セイヤがニヤッと笑い、拳を握った。
セイヤ「シェル、手合わせしようぜ!!」
タイガ「俺も混ぜて!」
イツキ「・・・俺も。」
フローナ「えぇ・・・イツキ君まで!?」
♦︎シェル VS セイヤ・タイガ・イツキ
広場に移動すると、三人が同時に構えた。
レン「三対一はさすがに不公平では?」
メリサ「隊長なら大丈夫でしょ。」
シェル「じゃ、いくよ。」
次の瞬間、
ドンッ!!バンッ!!ガッ!!
シェルは軽く動いただけで三人を簡単に吹き飛ばしてしまう。
セイヤ「はっや!!!」
タイガ「全然見えなかった・・・」
イツキ(強過ぎる・・・)
三人は地面に座り込んだまま呆然とした。
イツキは悔しそうに拳を握りしめながらも、
真っ直ぐシェルを見てポツリと言った。
イツキ「・・・これだけ強ければ安心か」
その声を聞いていたのはシェルだけだった。
♦︎ユキ登場
その時、
「フローナさーん!!!」
遠くから一人の少年が走ってきた。
道場の後輩、ユキだった。
モサモサな黒髪ショートヘアに丸いメガネをしている。
フローナ「ユキ君!? どうしたの?」
ユキ「どうしてもフローナさんに会いたくて・・・ずっと探してました・・・!」
彼は息を切らし、真剣な眼差しで告げる。
ユキ「俺、フローナさんのこと好きです。だから俺と付き合って下さい!」
セイヤ「残念だがユキ、フローナは今、シェルと付き合ってる」
セイヤがシェルを顎で示す。
フローナ「え!?何で分かったの!?」
セイヤ「んなもん、見てりゃ分かるっつーの!」
タイガ「フローナは分かりやすいからねぇ」
ユキ「そっか・・・僕、遅かったんですね・・・。」
フローナは苦笑して頷く。
フローナ「ごめんね。」
するとユキはシェルを睨みつけ、拳を握った。
ユキ「あなたが彼氏なんですね。戦ってください!」
シェル「えぇ・・・」
メリサ「また始まったねぇ。」
♦︎ユキ VS シェル
ユキは気合い十分で突っ込むが・・・。
指一本で軽く押し返され、
ユキは地面に転がった。
ユキ「くっ・・・やっぱり敵わない・・・!」
悔しさに唇を噛みながらも、彼は立ち上がる。
ユキ「フローナさん、僕、強くなってまた来ます!!」
そう言って、ユキは旅に出てしまった。
♦︎イツキの言葉
三人が去ったあと、メリサがぼそっと言った。
メリサ「ユキ君だけじゃなくてさ、あの三人の中にもフローナちゃん狙ってる人いそうだよね。」
シェル「セイヤとタイガはともかく・・・イツキはそうだろうな。最後、ちゃっかり釘刺されたし。」
メリサ「釘?」
♦︎数分前の回想。
イツキ「シェルさん。
フローナのこと、泣かせないでくださいね。」
落ち着いた表情のまま笑ってはいたが、目の中の力強さは冗談じゃなかった。
シェルは少しショックを受けていた。
シェル「フローナ、イツキと仲良かったよな。
なんか、その・・・親密そうだったし。」
フローナ「うん。まぁ、昔付き合ってたから。」
フローナがさらりと言う。
シェル「(ガ、ガーン・・・)」
メリサ「自分で聞いたくせに驚いてるねぇ。」
シェル「いやだって・・・!!」
♦︎イツキとフローナの過去
メリサ「何で別れちゃったんだい?」
フローナ「価値観の違いですね。イツキ君は結婚したいって言ってましたから。」
メリサ「フローナちゃんは結婚考えなかったの?
凄く優しそうな彼だったけど。」
フローナ「私は旅したかったんです。
それにもし、私が結婚願望あったら・・・」
フローナはあっさりと言った。
フローナ「旅なんて出ずに、あの街で結婚相手見つけて、とっくに結婚してますよ。」
メリサ「言われてみれば確かに・・・」
レン「フローナさんって、たまに核心を突いてきますよね。」




