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60話 静かな嫉妬


午後の休憩時間。

キャンプ地の片隅、少し離れた場所でシェルは何人かの女性に囲まれていた。


旅先で偶然出会った商隊の護衛の女性たち。

陽気で、好奇心旺盛で、そして少しだけ距離が近い。


「ねぇねぇ、あなたってどこの隊の人?すっごく強そう〜!」

「髪の色、珍しいね!虎族の血?触ってみてもいい?」

「えー、腕すごい筋肉!!ちょっと力入れてみてよ!」


シェル「え、ちょっと待って、そんなに一度に・・・」


女性たちはまるで珍しい生き物でも見るようにシェルに群がる。

まさにモテモテ状態だった。


近くのテントからその様子を眺めていたのはレンとフローナ。


レン「良いんですか?行かなくて。隊長、あんなに女性達に囲まれてますけど」

フローナ「話の邪魔したくないんで」


レン「邪魔って恋人なんですから・・・フローナさんは嫉妬とかしないんですか?」

フローナ「しますよ・・・でも、シェルが楽しそうだし」


フローナは肩をすくめ、くるりと踵を返す。

その仕草はどこか冷静で、ほんの少しだけ寂しげにも見えた。


その瞬間、風のような速さで

シェルが女性陣をスッと抜けてきて、フローナの腕を掴んだ。


シェル「何で行っちゃうの」

フローナ「だって、邪魔しちゃ悪いと思って」

シェル「何で邪魔だなんて思うの」

フローナ「だって・・・男の人だし。そういう気分の時もあるでしょ?」


シェルはフローナの瞳をじっと見つめた。

その目の奥にある引いた感情がどうしても気に入らなかった。


(フローナって妙に物分かりがいいんだよな・・・。

期待しないっつーか、最初から諦めてるっつーか・・・。

どれだけ触れても壁がある。どこか冷めてる。)


少しだけ掴んでいた腕に力がこもる。


シェル「そんな悲しいこと言うなよ。俺にはフローナしかいないんだから」


フローナ「・・・ありがと」


フローナが微笑む。


その一言をきっかけに、背後で待機していた女性たちがざわつき始める。


「えっ、ちょっと今の聞いた?」

「えー!もしかして彼女!?」

「うっそー!あんな強くて優しそうな人、彼女いるの!?」


シェルは照れくさそうに頭をかきながらも、堂々と答えた。

 

シェル「おう!可愛いだろ?」


そう言ってフローナの頭をポンポンする。

フローナは顔が少しだけ赤くなっていた。

 

女性たちは手を叩きながら、黄色い歓声を上げた。


「きゃー!何このカップル!青春か!」

「可愛いー!!」

「やーん、ショックだけどこんな可愛い彼女いるんなら仕方ないよね!」


シェル「てなわけだから、ごめんね」


「いいよいいよー!」

「彼女さん大事にねー!」


嵐のように盛り上がった女性陣は、嵐のように去っていった。

可愛いと褒められたフローナはどこか誇らしい気持ちでその日の夜を過ごした。


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