56話 告白
海風が薄く冷たくなり始めた頃。
二人きりの時間が流れる。
シェルはいつものように海のような深い瞳で向こうを見ていた。
言葉を吐く前の沈黙が、長く、居心地よく続く。
シェル「・・・あー、俺さ。フローナのこと、好きだわ」
シェル(って、何その告白の仕方!もっとサラッとカッコ良く言えねーのか俺は!!)
シェルがドギマギとしている横で
フローナは少し首を傾げ、柔らかな声で返す。
フローナ「え、私も好きだよ」
その“ケロッ”とした軽さが、シェルの胸に衝撃を与える。
二人の間に気まずさはなく、むしろ自然に馴染んでいた。
シェル「なっ、何でいきなり言うんだよ!」
フローナ「シェルだっていきなり言ったじゃないの」
シェルは焦るように両手を軽く振る。夕陽に指先が赤く染まる。
シェル「そーだけど!もっとこう・・・心の準備ってもんがあるだろ!」
フローナは口の端をうっすら上げる。いたずらっぽさと安心感が混ざった顔だ。
フローナ「えー、じゃあ今の一旦無しにする?」
シェルは即座に首を横に振る。真顔だ。
シェル「それはできない」
フローナはその即答にクスリと笑い、内心で思う。
フローナ(可愛い)
空気が少しだけ甘く濃くなる。風が通り抜け、二人の髪を揺らした。
フローナは一歩近づくと真剣な目に変わる。
フローナ「あのさ、本当に私でいいの?」
シェル「それはどういう意味だ?」
フローナは小さく息を吸ってから、拗ねた子どものような、尚且つ、真面目な顔で言う。
フローナ「後から若くて可愛い子が良かったとか言わないでよ?」
その言葉に、シェルの顔から冗談がすっと消える。
一瞬、静寂。彼の胸の奥で何かが突き上げるのが見えるような気がした。
シェル「言わないよ。つーか、フローナこそ歳上で包容力ある男が良かったーとか言うなよ?」
フローナ「言わないよ。だって、シェル以上の人なんて、この世界中どこ探し回ったっていないもの」
その言葉は、どこまでも真っ直ぐだ。
シェル「今、何かが刺さった」
フローナ「え?なになに、何が刺さったの?」
シェルは顔を真っ赤にして、反論する。
その仕草がさらにフローナの頬を緩ませる。
シェル「よせ、これ以上俺をいじめてくれるな」
フローナはいたずらっぽくシェルの胸を小突く。
フローナ「いいじゃん教えてよ〜!」
シェル「だーめ!」
フローナ(シェル、大好きよ。
私のこと1秒でも長く好きでいてね)
夕陽が沈む前の静けさ。
二つの影が寄り添い合って伸びていた。




