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5話 フローナの感

とある屋敷に足を踏み入れた時のこと。


「お待ちしてました!ささ、こちらへ。」


家の主人に案内され、一行は豪奢な客間へ通された。

テーブルに並べられたのは見た目にも上品な飲み物。

しかし、シェルは一切手を伸ばさない。

他の皆んなも同じだった。


理由は簡単。

レンが作った食事以外を口にする時は、

一番嗅覚の鋭いシェルが、毒が入っていないかを匂いで判断すること。

それがこのチームの数少ないルールだった。


主人「どうかされましたかな?」

シェル「ねぇ、これ毒入ってるよね?」


手と手を組み、ニコリと笑ってシェルが言うと

部屋の空気がひやりと止まった。


主人「・・・なぜ分かった。」


シェル「匂いでね。それに君たち、最初からずっと殺意ダダ漏れなんだもん。」


主人は僅かに目を細めた。

そして、急に口調を変えた。


主人「さすが半妖だな。随分と鼻が効くらしい。」


シェル「まぁね。」


シェルはちらりとフローナを見やる。



(フローナに関しては、敷地に入った瞬間から違和感を覚えてたしな。

フローナの感は妙に当たるんだよな。)




*15分前*


屋敷へ向かう道の途中。

フローナが急に立ち止まり、シェルの背中に隠れた。


レン「フローナさん?」

メリサ「どしたのさ?」


フローナ「・・・何かここ、怖い。」


レン「怖い?」


フローナ「あ、えっと・・・何となくなので、自分でもよく分からないんです。」


それを聞いた瞬間、シェルの表情がすっと引き締まった。


シェル「分かった。皆んな、用心しとけ。」


フローナ「でもでも!私の気のせいかも!」


シェル「いや、気のせいでも用心に越したことはない。


フローナ「う、うん」



シェル(俺はその場に行って匂いを嗅いで状況を把握したり、

相手の表情や仕草を見たりして、考えてることを読み取れる。

でもフローナは、そもそもたどり着く前から危険を察してる。

本人は気のせいだと思ってるみたいだが・・・。

俺でさえ気づかないことに気づくんだもんな。

やっぱすげぇよ、フローナは。)


シェルはフローナの肩をそっと叩いた。


シェル「フローナ。怖いと思ったらそれでいいんだ。

違ってたって誰も責めないし、違ったらラッキーだって思っとけばいい。な?」


フローナ「う、うん。」

 

シェルの優しい言葉に頬がほんのり赤く染まり、胸がきゅんと鳴った。


屋敷の奥から聞こえる不穏な気配の中、

フローナの感が、また静かに警鐘を鳴らしていた。

 

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