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43話 シェルvsキリュウ


それは、突然来た。


シェルが力の制御を完全に失った時のことだった。


大地が震え、風が渦を巻く。

半妖の力が暴走し、理性の色を完全に失ったシェルは、獣のような唸り声を上げていた。


シェル「グルルル……!」


レン「隊長!!!」


フローナ「シェル!!戻って!!」


しかし、その声は届かない。

理性はすでに、暴走する力の奥底に沈められていた。


 

♦︎

キリュウ「ったく、何やってんだよバカ」


キリュウはゆっくりと一歩、前に出た。


その瞬間、

シェルが地を蹴り、キリュウへと一直線に飛びかかる。


キイィン!!!


鋭い金属音。

剣と剣がぶつかり、衝撃波が上空へ。灰色の雲を真っ二つに裂いた。


キリュウ「ぐぅ・・・」

(なんつー馬鹿力だ。)


吹き飛ばされながらも、すぐに着地。


キリュウ「おもしれぇ。いいぜ、俺も全力で行く!!」


 

♦︎

キリュウ(あの時、俺は確かに不調だった。

負けた言い訳にしたくなかったが・・・)


 

♦︎

二人の攻防は、完全に拮抗していた。

風と炎がぶつかり合い、大地が抉れ、木々がなぎ倒される。


理性を失ったシェルは、ただ破壊の衝動のまま剣を振るい続ける。

それをキリュウが全て受け止めている。

 

やがてシェルは一瞬だけ動きを止め、荒い息のまま、低く唸った。


♦︎

シェル「キリュウ。あの時全力じゃなかったろ?」


キリュウ「・・・」


シェル「俺たちが、本気でやり合ったらたぶん、互角だもん」

 

♦︎

フローナ「お願い」


震える声が、戦場に響いた。


フローナ「お願いキリュウ君!!

シェルを助けて!!」


必死に叫ぶフローナの瞳には、大粒の涙が溜まっていた。


フローナ「正気に戻った時に仲間を自分が殺したなんて・・・そんなの、悲しすぎるよ!!」


 

♦︎

キリュウ「・・・」


一瞬だけ、キリュウの視線が揺れる。


キリュウ「ったく、自分が殺されそうになってんのに、

あいつの心配かよ・・・」


小さく、舌打ちをする。


キリュウ「全く、どいつもこいつも」


 

その時。

シェルが、再びキリュウへと飛びかかった。


キリュウ「・・・シェル」


低く、冷たい声が響く。


キリュウ「俺は、今機嫌が悪い。死んでも・・・恨むなよ」


シェル「グルルルッ!!」


完全に、半妖の力に支配された獣の目。

次の瞬間、

キリュウの体から落雷のような力が発せられる。


周辺の岩が砕け、閃光が走り、キリュウの髪が黄色くなった。



♦︎

そして。

荒れ狂っていた風が止み、

地に伏したシェルの体から、暴走した黒い力が静かに消えていく。

キリュウが暴走したシェルに勝ったのだ。

 


シェル「う・・・」


ゆっくりと、シェルの瞳に理性の色が戻った。


シェル「キリュウ・・・?」


完全に正気に戻ったシェルは、しばらく状況を理解できずにいたが

やがて、全てを思い出し、青ざめる。


その場に膝をつき、深く頭を下げた。


シェル「キリュウ、お前のおかげで仲間を死なせずに済んだ、ありがとう・・・」


キリュウ「頭なんか、下げなくていい。俺も、途中から私情挟んだしな」


シェル「え?」


キリュウは無言でフローナの前まで歩く。


そして、フローナの頭を、ペシ、ペシと軽く叩いた。


フローナ「え?

ちょ、ちょっとキリュウ君?なに・・・」


キリュウ「今度、泣かせたら許さねぇからな。」


フローナ「・・・っ!?///」


フローナの顔が一気に赤くなる。

シェルは一瞬目を見開き、全てを悟ると力を込めて返事をした。


シェル「ああ」


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