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2話 しゃっくりが止まらない

旅の途中。

仲間たちの“動く家”となっているキャンピングカー。

その中にある小さな和室には

畳の香りと窓から差し込む午後の柔らかな光がのどかな空気を作っていた。


ちゃぶ台の上には地図が広がっており、レンが真剣にルートを確認している。



レン「それで、次はどのルートで行くんです?」


レンが指で街道をなぞっている横で・・・。


フローナ「ひっく」


シェル「んー、こっちの道から行くか」


フローナ「ひっく」


レン「それなら途中で買い出しに出れそうですね」


シェル「そうだな」


フローナ「ひっく」


シェル「メリサ、フローナのしゃっくり止めてあげてくれ・・・」

メリサ「いくら僕でもしゃっくりを止めるなんてできないよ!」

レン「驚かせると止まると言いますがねぇ」


シェル「フローナの場合、心臓止まり兼ねないからそれは待った」


フローナ「ひっく・・・ひっく・・・」



コキア「それなら僕、止められますよ」

メリサ「え、コキア君どうやって??」

フローナ「ひっく・・・お願い・・・」

コキア「フローナさん、お水飲んで下さい」

フローナ「分かった・・・ひっく・・・」


キッチンから水を用意してきてこくこくと水を飲むフローナ。


コキア「じゃあいきますね。

3、2、1」


ピタッ。


和室の空気が止まった。


シェル「お?止まった?」


メリサ「コキア君すごーい!」


レン「見事ですね」


シェル「え、何、今のマジック!?」



コキア「違いますよ、ただの心理トリックです。

疑い深い人には効きませんがフローナさんみたいに素直な人にはすごく効きやすいんです」


レン「なるほど。思い込みを利用したテクニックですね」

コキア「そうです」


フローナ「ほんとに止まった!!ありがとうコキア君、助かったよ!」


コキア「いえいえ、役に立てて何よりです」


その後、フローナはしゃっくりが出るとコキアに止めてもらうようになった。



♦︎

安堵したのも束の間。


レン「ひっく・・・!?」


レンが思わず口を手で押さえ、

バッと皆んなが振り返る。


レン「コキアさん・・・ひっく、すみません・・・ひっく、お願いします」

コキア「分かりました」


しかし・・・。

レンのしゃっくりは止まらない。


メリサ「あれ?止まらないね」

シェル「あー、だめだめ、レンは人を信用してないから効かないよ」

 

レンがシェルをキッと睨む。

それをものともせず、シェルがレンの肩にポンっと手を置く。


シェル「任せておけレン、俺が止めてやる」

レン「はい?隊長何をする・・・ひっく・・・気なんですか」


シェルはメリサから口紅を借りると何やら後ろを向いてゴソゴソとし始めた。そして振り返る。


バアアアン!!!


そこには口の周りを真っ赤に塗ったシェルの姿があった。


!!!???


シェル「今、女の子の幽霊が乗り移った」

レン「は?ひっく、隊長、一体何を・・・」

 

シェル「あらん、いい男ねぇ、お兄さん、あちきといい夢見な〜い!?」


シェルがレンに擦り寄る。

 

レン「うわああ!!!!」


ゴンッ!!!!


鈍い音が和室に響いた。


ぷっしゅ〜と音を立ててシェルが畳にめり込んでいる。


レン「はあ、はあ・・・全く、あなたと言う人は・・・」

メリサ「あれ、でもレン君、しゃっくり止まったんじゃないかい?」

レン「ん?・・・本当だ・・・」


その時、シェルがうつ伏せのまま呟いた。


シェル「さ、作戦大成功・・・」


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