25話 生きて俺の元に
出発前。
ここは戦場だ。
張り詰めた空気の中、シェルはフローナの肩に手を置き、真っ直ぐ目を見た。
シェル「いいかフローナ。この先はな、
老人が倒れていようと、子どもが泣いていようと足を止めずに走れ」
フローナ「助けを求められても?」
シェル「フローナ。俺たちは正義の味方じゃないんだ」
一瞬、沈黙が落ちる。
レン「生きて、必ず俺たちの元に帰って来い・・・ですよね?」
シェル「ああ」
フローナ「うん。分かった」
そう答えるフローナにシェルはいつものようにニコッと笑った。
♦︎
メリサ「・・・ところでコキア君、君は何してんのさ?」
コキア「耳栓です。うるさいので断末魔」
キッパリと言い捨てる。
メリサ「ある意味尊敬するよ・・・」
シェル「まぁ、ここまでなれとは言わんが・・・
俺はとにかくフローナの命を最優先にだな」
メリサ「隊長、いい話してるとこ悪いけど、
フローナちゃんもうあっちだよ」
シェル「え?」
♦︎
フローナ「コキア君は耳栓かー、私もしようかな。
ティッシュでも詰めとこっと。」
フローナがティッシュを取り出す前にコキアが言葉を返す。
コキア「使いますか? 予備の新品がありますよ」
フローナ「え、いいの? 助かるー!」
シェル「心配いらなかったのね・・・って!
じゃなくて!!断末魔はともかく
俺の指示まで聞こえなくなるから二人とも耳栓は禁止!!」
フローナ「えー」
コキア「隊長の指示が聞こえなくても、
特に問題ないのでは?」
シェル「俺、一応お前らの隊長なんだけどな」




