表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/98

18話 当たり前なことなんて

ある日の夕方。

フローナがコキアの運転席を見たいと言い出し、コキアと共に中へ入った。

運転席の中はキャンピングカーとは思えないほどゆったりとした作りになっている。


運転席にフローナが座ってみると

ふわりと甘い香りがする。

桃と牛乳の香りだった。


席は一つしかないが、横にテーブルがあり、レン特製桃牛乳が置いてある。


最初は牛乳と桃を別々で食べていたのだが、

メリサのアイデアでフルーツ牛乳のようにしてはどうか?と言ってみたところ、コキアが頷き、レンが試作品を作った。

それが気に入ったらしく、それ以来、フルーツ牛乳ならぬ桃牛乳をよく作ってもらうようになった。


コキア「座ってみますか?」

フローナ「え!いいの?」

コキア「どうぞ」


ぽふっ!

 

フローナ「わっ!フカフカ!それに結構広いね。」

コキア「隊長やレンさんは狭いって言ってましたけど

僕は体が小さいので充分な広さです。」

フローナ「コキア君はここでずっと寝てるんだよね?

体痛くならない?」

コキア「さぁ・・・僕は痛みを感じませんので」

フローナ「あ、そっか・・・じゃあ尚更心配だね」

コキア「?どうしてですか?」

フローナ「だって、痛みを感じなかったら体が悪くなっても気付かないってことでしょう?」

コキア「それはまぁ・・・」

 

フローナ「メリサさんがコキア君の健康診断はしょっちゅうやってるから大丈夫だよって言ってくれたけど・・・やっぱりちょっと心配」

コキア「最初は畳の部屋で雑魚寝をしていたんですが、一人でいる方が寝やすくてここにしてもらったんです」

フローナ「そうなんだ・・・それならいいのかな?

・・・運転かぁ、コキア君ずっとしてくれてるんだもんね。いつもありがとね。」


コキアが首を軽く横に振る。


コキア「僕は車の運転以外、役に立てる事がないですから」

フローナ「え、運転できるの凄くない?」

コキア「運転なんて他の人だってできますよ」


フローナ「そんな事ないよ!だって私はできないもん!」


ドーン!!!


フローナ「なんかね、私が運転したら死んじゃうからって皆んなに止められてたんだよね。」

コキア「それは・・・なんか分かる気がします」

フローナ「そー??まぁ、だから・・・できて当たり前な事なんて一つもないんだよきっと」

 

その言葉にコキアの目が真ん丸くなる。

けれど、目の下まで伸びた髪によってフローナからはその目は見えない。


フローナ「コキア君はちゃんと役に立ってるし私達にとって大切な仲間だよ」

コキア「そう、ですか」


その時、レンの声が聞こえた。


レン「フローナさん、コキアさん、食事の準備できましたよー」


フローナ「はーい!行こうコキア君!」


コキアは小さく頷く。


コキア

(そうか、皆んなが当たり前にできた事が僕にできなかったように

僕が当たり前にできる事も皆んなにとって当たり前じゃないんだ。)


それは、コキアが生まれて初めて何かに対して"腑に落ちた"瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ